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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情第522回

プリンターでも大成功を収めたHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2019年08月05日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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ドットインパクトに比べ圧倒的に静かな
インクジェットプリンターが支持される

 1984年には、前回紹介したHP-110やHP Integral PC以外にも、いくつか重要な製品が発表されている。1つはインクジェットプリンターのThinkJetである(正式な型番はHP 2225)。

ぱっと見、EPSONのMX-80とよく似た形状であるが、サイズは一回り小さい

 この当時プリンターといえば(XYプロッターの類を別にすれば)熱転写プリンターかドットインパクトプリンターが主流であり、特にパソコン向けにはEPSONのMP-80(海外向けはMX-80)が大きなシェアを持っていたが、ドットインパクト式は「騒音が多い」「振動が多い」という2大欠点があった。

 「スピードが遅い」という点もなくはないが、高速なプリンターもあった。たださらに騒音と振動が酷くなったので、欠点としてはやはり騒音と振動ということになる。

 ThinkJetはこの問題を解決しており、しかもサイズも小さく、省電力だった。ThinkJetにはHP-IB接続のHP-2225AとHP-IL接続のHP-2225B、セントロニクスI/F搭載のHP-2225Cがまずリリースされ、このHP-2225CはMX-80の有力な競合製品になったが、この3製品はAC電源駆動である。

 続いてリリースされたHP-2225Dは、シリアルI/Fと9VのACアダプターで駆動可能となっており、このあたりはインパクト機構のために電磁石を駆動する必要のないインクジェットならでは、となっている。

 HPの公式ムービーではないが、ThinkJetをインパクトプリンター(それもJUKI製、というところがまた泣かせる)と並べて印字テストした動画が公開されている。圧倒的に静かで、しかも印字品質はThinkJetの方がずっと上である。

 問題がなかったわけではない、というかやはり大問題だったのはインクノズルの詰まりであり、またインクとの相性もあってか用紙は専用のものが必要だった。とくにノズルの詰まりが発生した場合はプリンターヘッドの交換を余儀なくされたが、このヘッドがまた高価だったらしい。

 広範に利用されるようになるまでにはまだまだ時間がかかるという状態ではあったが、とにかくドットインパクトプリンターの騒音と振動に困っていたユーザーには熱狂的に受け入れられた。

 このThinkJet、開発はHP LabsとCorvallis部門で製造はVancouver部門が担った。ちなみにこのVancouver部門、連載520回ではカナダに置かれた海外拠点と紹介したが、実はVancouverといっても米ワシントン州のVancouver(ポートランドの北4kmほどのところ)であったことが判明した。お詫びして訂正する。

 Vancouver部門は1979年に立ち上げられており、Computer System Groupの一部としてPrinting Terminalの生産に携わることになっていた。Vancouver部門の最初の製品はHP-2675Aという、キーボードに熱転写プリンターとモデムがくっついた製品である。

 その後は293xシリーズと呼ばれる一連のドットインパクトプリンターの開発や製造に加えて、他社の製品(たとえばオリベッティーのディジーホイールプリンター)の供給を受けて販売したりしていたが、ThinkJetの後はインクジェットプリンターに方向性を見出す。

 実際Vancouver部門の1984年の売上は1億2000万ドルで前年比65%アップなのでこれは間違っていない。ただ後継製品はしばらく恵まれず、ベストセラーとなるDeskJetシリーズを1990年に発表するまでは売上は1984年から微減または微増という感じになっていた。

※お詫びと訂正:本文中にインクノイズとありましたが、正しくはインクノズルとなります。記事を訂正してお詫びします。(2019年8月6日)

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