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私たちの働き方カタログ 第38回

人材こそが最大の資源であるゆめみが考える

全員CEOに有給取り放題…大胆な福利厚生制度の裏にある生存戦略

2019年07月18日 09時00分更新

文● 萩原愛梨 写真●曽根田元

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 その会社にはその会社ならではの働き方がある。みんなの働き方改革・業務改善を追う連載「私たちの働き方カタログ」の第38回は、O2Oアプリや、デジタル新規事業の企画開発に強みをもつ開発会社ゆめみ。「有給取り放題」など多くの大胆な福利厚生制度の裏には、長期的な経営戦略が隠されていた。

ゆめみ 代表取締役 片岡 俊行氏

介護社会では従業員自身が健康でも働けなくなってしまう

 ユニークな社内制度を持つIT企業は多い。中でも、ゆめみは、現代表取締役から裁量権「代表取締役権限」をすべてのメンバーに移譲する“全員CEO制度”など革新的な制度を多く発表してきた。

 全員CEO制度の他にも、ゆめみの中には珍しい社内制度が多くある。一つが「有給取り放題制度」。この制度が生まれたきっかけは、介護によって働き方を変えざるを得なくなったフリーランスエンジニアの契約終了だ。彼は配偶者の家族の介護を理由に引越しをするためこれまで通りの仕事が難しいと申告した。ゆめみは、長くプロジェクトに携わった彼に可能な限り環境を用意したが、介護は想定した以上に過酷な状況だったらしく、結局彼は契約を終了することになった。

 ゆめみ 代表取締役 片岡 俊行氏は、「フルリモートで、稼働時間もかなり短縮しましたが、最後は彼から『継続は難しい』と言われました。彼自身は健康であるにも関わらず働くことができないという状況を目の当たりして、会社としても来たる介護社会に備えなければと危機感を覚えました」と、当時を振り返る。

 「有給取り放題制度」では、自身の事故や病気による通院、家族の介護・看護などの理由により、通常の週5日出勤ができなくなってしまった従業員に対し、上限なく有給を付与される。 あまりの太っ腹ぶりに制度としての継続性が気になるが、「赤字にならないのであれば、その社員はいてもいいという考え方だ」と片岡氏は語る。仮に週3日勤務の働き方になると時間としては通常の60%だが、生産性をあげて70%のパフォーマンスを発揮できれば赤字にはならないという。

 将来の漠然とした不安に対する制度として「高額給付金の補助」もある。これは、ゆめみが加入している健康保険組合の高額療養費の給付制度を利用しているため、実は会社としての負担は大きくない。こうした補助があること自体が社員の安心につながるため、認知の目的もあり社内制度化したという。

 ゆめみの手厚い制度は、安心した環境作りだけに止まらない。社員が自己学習のためにかかった費用を全額負担する「勉強し放題制度」も革新的な取り組みの一つだ。対象は、書籍や動画学習コンテンツから美術館などの体験も含まれ、学ぶ内容も英語やコーチング、マーケティングまで何でもありだ。さらに、一人あたりの研修費の上限も撤廃した。

従業員の自己学習支援と「破れるルール作り」で、流動性の高い組織を作る

 ゆめみがここまで社員の教育に投資するには、同社のビジネスモデルに理由がある。「開発会社であるわれわれがクライアントへ提供するのは技術力。技術力の根元は人材ですから、人材教育に投資するのは当たり前だと感じています」と片岡氏は語る。また採用の面でも、学習欲の強い人材へリーチするために、成長できる環境を打ち出しているようだ。この学習支援制度は、書籍購入費の補助として以前から運用していたようだが、昨年2018年10月に大胆に制限なしの制度改正へ踏み切った。ここ数年でゆめみ社の目指す組織像に変化があったようだ。

 「以前はフルスタックなエンジニアが100人いればいいと思っていたんですが、技術の細分化や陳腐化する速度がどんどん進む中で、専門性のある人々が集まったネットワーク組織を作るべきだと考えるようになりました。プロジェクトによって必要なナレッジを持っている人が集まり、終了すると解散するような組織を作ろうと考えると、集団教育は合わないわけです」

 自らの専門性を高めた人材が集まった、流動性のある組織作りこそ、ゆめみ社の生存戦略だ。社内制度もなんと1週間に1度見直されるタイミングがあると言う。まるで不具合があるアプリがアップデートされるように、制度もアップデートして良いという考えだ。ここで大切にしていることが「原理原則」だと言う。

 「“ルールでルールを破れる”ように原理原則を取り決めています。もし不十分なルールが決められてしまっても、ただそのルールを違反すれば『わがまま』だと思われてしまいます。しかし、不具合のあるルールは改定されるべきです。それを可能にするのが原理原則を定めること。また、エンジニアは原理原則となるルールがあった方が、ゲームのようにハックし始めるので活性化するんです」と、片岡氏は硬直化しない仕組みづくりの秘訣を語る。

 一見カジュアルに組織運営を行なっているような印象を受ける同社だが、一つひとつの制度に弁護士や専門家のレビューを通し、厳密にチェックを行なっているという。このバランス感覚も重要なのかもしれない。


会社概要

ゆめみは、スマートデバイスに特化したアプリケーションの企画・開発・運用実績を強みに、最新アーキテクチャを採用した大規模開発を得意としています。創業からユニークな人事制度を取り入れ続け、【エンジニアが成長できる会社No.1】を目標に歩み続けています。

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