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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第515回

詳細が判明したRDNAの内部構造 AMD GPUロードマップ

2019年06月17日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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レイトレーシングは未対応
次世代RDNAで対応

 話を戻すと、NAVI世代ではレイトレーシングが可能になるのでは? という観測があった。PlayStation 5でレイトレーシングが可能になるから、というのがその根拠であるが、その回答がこちら。

これが“Roadmap”ではなく“Vision”というところがまたなんとも

 現行世代のRDNAではリアルタイムは未対応(Radeon ProRenderを使ってのオフライン処理は可能)で、対応は次世代ということになる。

 ただこの“Next Gen RDNA”が、下の画像で言う“RDNA 2”と同じものなのか、それともその先なのかは不明である。

こちらはれっきとした“Roadmap”

 正直言えば、7nmのRDNA→7nm+のRDNA 2で、トランジスタ密度はそう大きく上がらないはずであり、その先の5nm世代まで待たないと厳しいのではないか?というのが筆者の観測ではあるが、このあたりは微妙なところである。

 今回、NAVI 10のダイサイズが251mm2と発表された。(連載513回で示した推定はやや大きめだったようだ)が、これは14nm換算だとほぼ500mm2で、Vega 64と同規模であり、おそらく製造原価もVega 64のものと大差ないと考えられる。

 システム全体のコストという意味では、HBM2を搭載しない分NAVIの方が廉価ではあると思うが、逆に言えばこのあたりがコスト的に実現できる上限ということになる。

 ただこれは現在の7nmがトリプルパターニング露光の関係で生産コストが非常に高い(14/12nm世代のほぼ2倍)ことが理由であり、EUV露光を利用した7nm+ではシングルパターニングで済む分、コストがだいぶ下がる。

14nmと比較して、動作周波数を14%引き上げながら消費電力を23%削減できたとする

 おそらく300mm2を超えるようなダイであっても、NAVIと同程度かやや安いかもしれない。こうなると、レイトレーシングのためのロジック(NVIDIAで言うところのRTCoreにあたるもの)を追加する余地が生まれるとも考えられるからだ。

 ただこれはレイトレーシングを「どこまで」やるかで追加するロジックの規模が大きく変わる(現に現在のゲームのレイトレーシング対応にしても、ゲームシーンすべてにレイトレーシングを適用しているわけではなく、部分的な対応に留まっている)からで、2つ前の画像でも“Select Lighting Effects”とあるあたり、どの程度までやるか次第で規模が変わってくる。

 仮に7nm+で追加したとすると、NVIDIAのRTCoreよりもさらに厳しいことになりかねない気がするので、筆者的には5nm世代あたりになるのではないかと思っている。

素の性能はGCNとあまり変わらないが
CU数を増やせば高い性能が期待できる

 最後にパフォーマンスについて。下の画像はRadeon RX Vega 56との比較である。

Radeon RX Vega 56との比較

 構成を比較すると以下のようになる。

Radeon RX Vega 56:56CU(3584SP)×1471MHz(Boost)=10.54TFlops
Radeon RX 5700 XT:40CU(2560SP)×1905MHz(Boost)=9.75TFlops

 Radeon RX 5700 XTの方が性能が高いのは、ここまで説明してきたCUの効率化や1次キャッシュの搭載などが効いてきていると思うのだが、素の性能としてはGCNから大きくは改善されていないということになる。

 逆に言えばRDNAは40CUで、GCNの56CUよりも高いゲーム性能を実現できているわけで、今後CU数をさらに増やせば、より高い性能が期待できると考えて間違いではないだろう。

 その際に必要なエリアサイズは、GCNよりも小さく抑えられる、つまり単に7nmを使っているからというだけではなく、0次キャッシュなどを実質半減化したことが効いているという点で、今後の展開には期待できると思う。

※お詫びと訂正:太字の計算式に、一部誤った型番を記載しておりました。記事を訂正してお詫びします。(2019年6月29日)

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