このページの本文へ

業務を変えるkintoneユーザー事例 第49回

作業量が5倍でもkintoneアプリでさばけるようにしたグラウド

管理職と総務の事務処理をkintoneアソシエイトと見直したら?

2019年06月10日 10時00分更新

文● 柳谷智宣

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 2019年4月18日に開催されたkintone hive fukuoka vol.4でのプレゼンで、3番手はグラウドの星野真己氏。お題は「餅は餅屋のすゝめ」で、グラウドが外部のプロの力を借りながら、業務改善を実現した事例を紹介してくれた。

グラウドの星野真己氏

新拠点の管理職が事務作業に追われて赤字が続いていた

 グラウドは、情報通信サービス事業を中心に営業戦略支援を行なうと共に、事業の課題を解決することに特化した営業受託会社だ。取引先にはNTT西日本やドコモといった超大企業が名を連ねている。設立は2013年8月で、事業エリアは九州が起点だが、関西、関東、東北にも広がっており、従業員数は現在129名となる。プレゼンターの星野氏は福岡県の朝倉市出身で、趣味は「なんでもクラウド化」、好きなものは「クラウドサービス」という変わり者。WordやExcelを使うことはほとんどなく、Googleドキュメントやスプレッドシートを活用しているほどだという。

 2015年にグラウドは東北に事業を拡大した。当時、30名ほどだったのに、東北にさらに30名増えたのだ。星野氏は、面接もしていないし、会ったこともない人たちを管理していかなければならないという課題に直面。そんな時に、出会ったのが「kintone」だった。

 「ここで質問させていただきます。『その作業、量が5倍になってもできますか?』 これが重要な改善ポイントです」と星野氏が問いかけた。

 当時、30名増えたのに東北の管理者はわずか3名。星野氏には、管理する方法もわからないし、管理しているのかどうかもわからなかった。そのうえ、進出から1年くらいは赤字が続いてしまった。管理職が事務作業に追われて、管理機能が完全に麻痺していたのだ。そこで始まったのが、スタッフをケアできないことによるスタッフ離れ。そして、スタッフ離れからの人手不足。人手不足からの時間外労働の増大と悪循環のドミノが進んでいく。ついには「私たち何のために働いているんだろう」「グラウドってどの方向に向かってるんですか?」とスタッフから不満が上がってきたという。

管理職が事務作業に追われることで、トラブルが続出

 業務改善が急務だと判断した星野氏は、外部のkintone認定アソシエイトに依頼する。餅屋の登場だ。

 管理職が追われていた事務作業は、恐ろしくアナログでムダなものだった。東北の30名は全員異なる店舗に直行直帰で仕事をしていた。つまり、30カ所違うところに出勤していたのだ。勤務が終わると、報告をするのだが、これがメール。テキストをベタ打ちで送り、3名の管理者がそれぞれExcelのブックを作って転記。それを3名のうち誰かがまた集計していたのだ。星野氏は「これが赤字の原因だったと思います」と考えた。

「管理職が管理職の仕事をしていない。管理職には高い給料を払っているのにも関わらず、そういう事務的な作業をやっている。すごく時間もお金ももったいないということで、ショックを受けました。そこで導入したのが、kintoneアプリです」(星野氏)

 店舗での勤務が終わったら、従業員にはkintoneのアプリに入力してもらうそう。まずは自分の名前を入れるのだが、ここにも工夫している。名前に半角スペースを入れたり、名字だけにするというスタッフがどうしても出てくるので、ルックアップで入力させているそう。同様に、店舗名や部門名、営業所名なども、一覧のデータベースを用意し、そこから必ず呼び出すようにしている。これで、データがきれいになり、きちんと検索したり集計できるようになる。これぞ、餅屋の腕の見せ所というもの。通常は、まずは運用して試行錯誤しながら、気がつくポイントを先に潰しておけるのがメリットと言える。

「スタッフは数値を入力するだけで、すぐにグラフで実績比較表を作成できるようになりました。可視化することで視覚的に伝えることができ、成果の向上が見られました。これが導入効果その1です」(星野氏)

 仕組み化することで、量が倍になっても5倍になっても、作業者が変わっても同じ工程でできる仕事を増やすというところを意識しているそう。実際、東北の人数は30名から60名に増えており、勤務場所も15店舗増えて45店舗になっている。もちろん、問題なく運用できている。

 kintoneアプリを導入することによって、管理職3名の稼働から、事務員1名とkintoneアソシエイト1名の稼働で済むようになったのだ。この両者の給料を足しても、管理職1名より安いようで、仕組み化による脱属人化計画は成功したといってよいだろう。

kintoneアプリを入れることで、作業人員の減少と、管理職の稼働を確保できた

総務事務を3人から1人へ 人材を有効活用し、管理職の稼働時間も確保

 2つ目の業務改善で導入したのが「報告書アプリ」だ。以前は、月初に必ず発生する作業で、管理職と事務員が一緒に4~5日かけて行なっていた。クライアントに提出するため、Wordのテキストに表を挿入して、日数などを全部手打ちで入れていたのだ。前述の通りクライアントは超大手なので、必ず紙で郵送する必要がある。

「報告書を出すのは本当に大変で、勤務シフトを見ながら作成するんですが、やってられない仕事でした。ノイローゼになりそうな仕事だったと思います」と星野氏。

 これもkintoneアプリ化した。勤務日を選択するだけで、時間数が自動的に計算されるようになった。さらには、依頼しているkintoneアソシエイトが印刷機能も搭載したので、勤務完了報告書をすぐに作成できるようになった。以前は30人いれば30枚手作業で作っていて4~5日かかっていた作業が、なんと1時間で終わるようになったという。

報告書アプリでは4~5日の作業を1時間に短縮できた

 kintoneを導入することで、総務事務の稼働時間も激減したそう。2016年以前は総務事務は3人おり、以前は月に547時間だったところ、kintone導入後は143時間となり、404時間もの削減となったそう。「作業的総務から戦略的総務にシフトするために、kintoneアプリが一役買ってくれました」と星野氏。

 結果、3人の総務は1人に削減。総務事務から外すことができた1人は、大阪の営業部へ異動し、管理職へ昇進。もう1人は、東京事務所新設の立ち上げメンバーとして即戦力として活動中で、売り上げに大きく貢献しているという。

kintoneアプリで仕組み化することで、総務事務を3人から一人に削減できた

 管理職の稼働時間の確保という課題も解決できた。スタッフケアも充実でき、離職率の低下も実現。主婦が働く場合は子どものお迎えがあったり、急に休むこともある。しかし、kintoneで誰でもわかるように仕組み化することで、短時間正社員の雇用促進や有給の継続的消化を計画的に実行できるようになるという効果も出ているという。

管理職の稼働時間を確保したことで、働き方を見直し、さまざまなメリットを実現できた

 依頼しているkintone認定アソシエイトが作成したアプリは50個を超えている。従業員それぞれがkintoneを利用することによって、効率化や能率化を意識しはじめるなど、自発的・能動的・主体的な写真がかなり増えたそう。社員が育てば、業務改善がルーチン化し、社員の生産性向上と育成、企業の成長が見えてきたと星野氏は語る。

kintone認定アソシエイトが作成したアプリは50以上。その数だけ課題が解消されてきた

「現在の課題は、スタッフへkintoneを浸透させることです。やりたくないとかエクセルの方が早い、と言うスタッフがいるのです。今後は、kintoneで出したこのような実績をみんなに伝えていき、それを自分のものにしてくれる社員がどれだけ増えるかというところを課題にして取り組んでいこうと思います」と星野氏は締めた。

■関連サイト

カテゴリートップへ

この連載の記事