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業務を変えるkintoneユーザー事例 ― 第51回

「kintone化する」という業務改善マインドに行き着いた老舗製造業

バラバラの組織を一枚岩にできるか?バンドー化学によるkintoneのPDCA

2019年06月24日 11時00分更新

文● 大谷イビサ/Team Leaders

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 kintone hive Osakaの2番手に登壇したのは、伝動ベルトメーカーである神戸のバンドー化学。営業支援システムとして導入したkintoneの導入により、元々別組織だった販売拠点コミュニケーションを促進し、ベテランに使ってもらうまでのPDCAを披露した。

バラバラの組織をいかに統合するか? PDCAの“P”とは?

 創業113年を誇る神戸のバンドー化学は、自動車や二輪車、工作機械などで用いられる伝動・搬送ベルトを中心に、広告用のフィルム、ロボットの手先、ストレッチャブルセンサーなどを手がけるメーカーで、商品数は十万におよぶ。当然、営業に大きな負荷がかかっており、IT化も必要だったため、2004年に営業支援ツール(SFA)を導入したものの、結局失敗したという苦い経験を持つ。

 経営企画部の小林 義正氏が語った今回の事例は、2018年にkintoneで作ったSFA(Sales Force Automation)を浸透させるまでの「PDCA」が大きなテーマだ。「バラバラの組織をkintoneプラットフォームで一枚岩にできるか、挑戦し続けているという話」と小林氏は語る。

バンドー化学 経営企画部 主事 小林 義正氏

 バラバラの組織とは、バンドー化学が地域ごとに異なる販売会社を持っていたことに端を発する。10社あった販売会社は2017年にバンドー・I・C・Sとして統合されたが、仕事のやり方やフォーマットは昔と変わらず、唯一営業週報だけがFileMakerで共有されていたという。しかし、統合後の中期経営計画で、売上と利益の大幅な成長が必要になったため、社内プロジェクトで具体的な営業戦略を半年かけて練った。これがPDCAのPにあたる。

 もともとバンドー化学の製品は海外からの輸入品より安価であり、安定供給ができるという差別化ポイントがあり、売りたいという会社も多かった。そのため、早期に販売ネットワークを構築することができ、バンドー化学自体は「待ちの営業スタイル」が定着していたという。しかし、今後は顧客の課題や関心事を理解し、適切なタイミングで営業とプロモーションをかけていく攻めの営業が必要になる。こうした流れからSFAの導入を検討することになる。

従来より安価なだったため、待ちの営業スタイルになっていた

 kintoneはベトナム工場で利用しており、支店長からも強いプッシュがあったが、小林氏自体は台湾で使っていたセールスフォースを念頭にしていたという。しかし、見積もりをとってみたら、両者の価格の差は大きく、kintoneの場合、足りない機能をプラグインで補えることがわかった。「われわれはIT初心者が多いので、初心者にレクサスはいらない。軽自動車でいい。でも、ゴツゴツしたところでも、ガンガン進めるスズキのジムニーのようにものにしていこうということで今回の開発を進めていこう」という意思で、kintoneの導入を決めたという。

トップダウンの熱意、スキルを上げる営業週報

 次にどうやって導入していくのかというDoの部分。実は2004年にSFA導入に失敗したときの担当者が今の販売会社の社長なので、2回目の失敗にならないよう、社長が自ら説明会に登壇して、SFAの必要性を熱く語った。また、デジタルネイティブな若手を巻き込むために、iPadを配布して、どこでも利用できる環境を整えた。さらに、神戸本社にヘルプデスクを設置し、ユーザーを常時サポートできるようにした。

トップの熱意ある布教活動とヘルプデスクの設立

 小林氏は打ち合わせのログを集めたアプリの画面を披露する。案件ごとに上司や先輩、前任者からのコメントが入るほか、Sansanと連携させることで、会社名や部署名などを正確に登録することができた。「これから訪問しようとしているお客様に対して、ほかの営業マンがどのようなアプローチをしているか、どんな資料を使ったのかなどを知ることができ、営業マンのスキルが上がった」と語る。

 また、月間で1000件近く集まる営業週報を楽にするため、3つのアプリを作った。営業が作成した「顧客レポート」が、1週間溜まるとワンクリックで週報にでき、さらに各支店長は「週報ビューワ」で内容をチェックできる。また、各支店長はこの中から重要なレポートだけをピックアップすると、経営層は「経営層ビューワ」から確認することが可能になる。支店長は現場と経営層の仲介役となり、現場からの声も吸い上げつつ、経営者向けにスクリーニングするという役割を持つことになったという。

支店長が中継役となり、現場の意見を集約し、経営者に情報をスクリーニングする

 Checkとして、導入後1年間での効果を調べてみたところ、おもにベテランから「楽になった」「便利になった」という声が出て、若手からは仕事が増えたという意見もあったという。一番、ヘビーに使っているのは女性の内勤者で、普段使いの見積書作成アプリだった。「うれしかったのは、堺の営業所で50代のおばちゃんからkintoneの見積書の一覧を見やすくしてくれという声が出たこと。当初想定をしてなかったベテランからも、kintoneで業務を改善したいという意識が見えてよかった」と小林氏は語る。

普段使いの「見積書」が一番利用されるという結果に

kintone化するという動詞が社員で使われるようになった

 最後に紹介されたのはCheckを受けた後のAct。まずは見積アプリの印刷パターンが足りなくなっているため、これを改善を進める。また、郵送ベースで時間がかかっていた見積書の発送も、kintoneでワークフロー化。上限金額の条件で見積作成の依頼をかけ、決済を受けた見積もりだけPDFでダウンロードできるようにした。

 さらに紙とFAXで提出しなければならなかった工場への依頼書もkintone化を進めている。今までは「営業は書類がどこまで行ったかわからず、設計部門は不要な書類作業に追われていた」(小林氏)という課題があった。しかし、5種類の依頼書をアプリ化し、ワークフローで関係者に回すことで、必要な項目だけ記入すれば、必要な人に情報伝達される仕組みを構築しているという。

必要な項目を入れると、必要な人に伝達される仕組み

 今回のkintone開発を担当したパートナーとして小林氏はエムザスを紹介。「顧客レポートも単純そうに見えて、裏でプラグインが14個も動いています。現場からの要求に対して、エムザスさんがフレキシブルに対応してくれた。情報システム部の厳しいIT統制に対してもドキュメントやスケジュールなど細かく調整してくれた」と高く評価した。

 最後、小林氏は「kintoneを使うことで、共有+コメント+ワークフローによって、会社組織を超えた一体感出てきた。最近では社員の間で『kintone化する』という動詞が使われるようになった」とまとめる。営業レポートから顧客課題の解決に結びつく情報が見えるようになり、ビジネスチャンスも増え、普段使いのフォーマットをkintone化することで仕事も楽になると見込んでいる。「kintone使い始めてまだ1年ですし、まだまだイケてるシステムだとは思っておりません。まだまだ改善を進めていきたいので、会場の中でヒントを与えてくれるような方いましたら、ぜひお声がけください。いっしょに発展していきましょう」(小林氏)。

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