出荷が絶望的になった
デスクトップ向けのIce Lake
さて、最後にその10nmプロセスの話である。今回一番ショッキングであり、かつ筆者の過去の記事の訂正をしないといけない話である。
先ほどIce Lake-Hへの言及で反語表現を使ったが、Ice Lake-HやIce Lake-SはSKU自体が消滅したたようで、おそらく出荷されない。
今回、台湾で複数のルートからTweakers.netが掲載したのとまったく同じロードマップを「入手できて」しまった。最初に見た時はフェイクだろうと判断したのだが、複数のOEMがこのロードマップに基づいて製品計画を立てている以上、かなり信憑性が高いと判断せざるを得なくなってしまった。この結果として以下のことになるらしい。
- Ice Lakeは現在のY/U SKUは出荷されるが、出荷数量は非常に限られる。そして引き続きWhiskey LakeがU SKUに供給され続け、Y SKUはAmber Lakeが供給される。H SKUはCoffee Lake Refreshが継続(いずれも2020年第3四半期まで)
- 2020年第2四半期からComet Lakeが投入される。以前のストーリーではComet Lakeは10nmプロセスの製品の予定だったはずだが、これが14nmになり、しかも前倒し投入となる。この世代は最大10コアになるが、その代わりハイパースレッディングが無効化される。これは現在のハイパースレッディングにはさまざまな脆弱性が内包されており、後付けで対策を施すのが難しいかららしい。このComet Lakeはデスクトップ向けのSシリーズを含む全SKUで一斉に投入される。
- 2021年第2四半期には、同じく14nmのままのRocket LakeがS/H/U SKUに、また10nmを使うTiger LakeがU/Y SKUに投入される予定(こちらはまだ変わる可能性はあり)。
- Xeon向けにはIce Lake-SPは予定通り出荷される。ただこちら、コア数は増えるが動作周波数は大幅に落ちる模様。
少なくとも連載511回を書いたときに想定していた、2019年末にはデスクトップ向けにも10nmプロセス製品が来るだろうという予想は完全に外れたことになる。おそらく2020年までデスクトップ向けのメジャーアップデートはない。
「ならばせめてSunny Coveアーキテクチャーを14nm++で」というのも、不可能ではないが難しいだろう(まだComet Lakeのアーキテクチャーがどんなものになるのかが判明していないから断言はできないが)。
というのは、インテルがIce Lakeのウェハーを公開してくれたおかげでダイサイズが判明したのだが、おおよそ11.1×11.8mm程度で131mm2ほどとなる。
なにしろ内部アーキテクチャーがだいぶ拡張されたので1:1で比較はできないのだが、以前の2.7倍は無茶だとして2倍程度と推定すると、14nmでこれを作ったら260mm2にも達する。今のCoffee Lake 8コアより大きいのに、わずか4コアしかない計算になる。
ダイサイズが肥大化している理由は、GPU(24EU→64EUに増加)とThunderbolt 3(これだけで1コア分より大きい)、Imaging(画像処理エンジンでこれも1コア分くらいある)あたりで、Thunderbolt 3のコントローラーやImagingを抜いて、なんならグラフィックスも全部省くと4コア+メモリーコントローラー+Uncoreで50mm2程度、14nmに移植して100mm2程度だろうか。
8コアにすればだいたい170~180mm2程度になり、今のCoffee Lake並に抑えられるかもしれないが、さんざんGPUを強化しただのThunderbolt 3を内蔵しただのアピールしておいて、いまさら全部ナシというわけにはいかないだろう。現実問題としてそういう選択肢も無いように見える。
とりあえずどんなものになるかはまだ不明なComet Lakeが投入されるまで、現状のCoffee Lake-Refreshで耐えしのぐしかないというのがインテルの現状という、少し悲しい報告で記事を締めたいと思う。

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