事業が急成長
医療業界に参入
1959年には海外進出も果たし、ジュネーブにマーケティング本部を、製造拠点をドイツ(当時はまだ西ドイツ)のベーブリンゲンに開設している。売上も好調だった。
1951年からの財務状況をまとめたのが下表であるが、1958年あたりから毎年1000万ドルずつ売上が増えているのがわかる。
HPの1950年代の財務状況 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
年度 | 売上 | 粗利率 | 純利益 | |||
1951年 | 701万351ドル | 20.3% | 52万5529ドル | |||
1952年 | 1348万1165ドル | 21.5% | 90万7023ドル | |||
1953年 | 1569万506ドル | 19.6% | 97万371ドル | |||
1954年 | 1495万7561ドル | 11.0% | 72万7031ドル | |||
1955年 | 1762万9327ドル | 18.4% | 148万7981ドル | |||
1956年 | 2308万8443ドル | 18.1% | 202万334ドル | |||
1957年 | 3277万3066ドル | 15.2% | 239万1782ドル | |||
1958年 | 3585万6737ドル | 14.8% | 257万1952ドル | |||
1959年 | 4804万267ドル | 17.0% | 389万9941ドル | |||
1960年 | 6020万6918ドル | 14.1% | 422万6645ドル |
1950年代は、まさしく同社が急成長した時期としていいだろう。1960年の時点で従業員数はおおよそ3500人(うち2600人が本社、900人が子会社)とされている。
では1960年代は? というと、「急拡大」した時期ということになる。1961年にはニューヨーク証券取引所に上場し、またSanborn Companyを買収する。
1917年に創業されたSanborn Companyはもともと血圧計や体脂肪計などの医療機器を手掛けていた会社で、1924年に心電図計の製造で電子業界に参入することになった。1935年には電池駆動型の小型機器なども手掛け始め、1949年には産業機器向けにも参入する。
一見関係なさそうであるが、たとえばSanbornの病院向けソリューションでは、手術室や回復室、集中治療室などに置かれたさまざまな医療機器をまとめてモニタリング、記録などを行なうソリューションなどがあり、これはそのまま産業機器のモニタリングや記録に利用できたわけで、まるっきり無縁というわけではない。
このSanbornを買収したことで、HPは医療業界に参入することになった(産業機器の業界にはそれ以前から参入していた)。
1962年には業界としては初めて、Fortune 500リストに名を連ねる(460位)ことになり、またNeely Enterprisesという代理店を買収している。Neely Enterprisesは中小の音響/ラジオメーカーの代理店事業を行なっていた。
当時HPは米国内に直販の部隊を保有しておらず、まさにNeely Enterpriseのような代理店を経由して販売していた(1939年に同社がHPの最初の代理店になった)。
1962年当時、HPは14の代理店を抱えており、その最大のものがNeely Enterpriseであったが、これを買収して本社のNeely販売部門にしている。これによってHPは直販部隊を手にしたわけだ。
この連載の記事
-
第802回
PC
16年間に渡り不可欠な存在であったISA Bus 消え去ったI/F史 -
第801回
PC
光インターコネクトで信号伝送の高速化を狙うインテル Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第800回
PC
プロセッサーから直接イーサネット信号を出せるBroadcomのCPO Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第799回
PC
世界最速に躍り出たスパコンEl Capitanはどうやって性能を改善したのか? 周波数は変えずにあるものを落とす -
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第792回
PC
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ