現代のAI=宇宙世紀のサイコフレーム
―― 今の世の中をどう変えていくかというお話ですが、『UC』や『NT』では、テクノロジーが進化しすぎたことで人類が争奪戦を繰り返す構図が描かれました。私たちがいる現実となぞらえたことはありますか?
福井 宇宙世紀では、サイコフレームというエネルギーに転換する技術の進歩で、それまでの兵器を無効化するような大変な技術進化が起きてしまいましたが、今だったら、サイコフレーム技術というのは、我々の世界で言うAIですね。AIがこのまま進んだらやばいことになるって誰もが思っているのに、誰も止められないし、止めようとも思わない。
今後、AIのために、もしかしたら我々の給料はなくなってしまうかもしれない。でも、もう経済のコアのところにがっちりビルドインされてしまっているから、もう外せないわけです。
作中でも、サイコフレーム産業が人類社会のコアにビルドインされているから、発展はもう誰にも止められなくなって、もし「命の世界じゃなくてもいいじゃん」って誰かが言い出したら、みんな向こうへ行きましょうみたいな、集団自決みたいなことが起こっちゃうかもしれないわけです。
だから「その手前で踏みとどまる努力」というのをしなきゃいけない。今後のガンダムの物語は、どこかでそこをやらないといけないし、やらないと後につながっていかないと思いますね。
―― でも人間は、すごい技術を持ってしまったら使いたくなってしまう。自分たちの陣営が優位に立てるものがあれば求めて争い合うというのは現実世界でも同じですよね。
福井 それは、付き合っていくしかないと思うんです。
―― 付き合っていく?
福井 「人間はそうしちゃうんだ」という現実と付き合っていく。「いつもここで失敗するんだよな、俺たち」ということが頭にあったら、すごい技術を前にしたときに、もうちょっと自制的になれると思うんです。
『NT』単体で見ても大丈夫! 気合入った音声特典も要チェック
―― では、最後に今後のガンダムについてお伺いしたいと思います。2019年はガンダム40周年にあたり、また『NT』は「UC NexT 0100」プロジェクトの第一弾でもあるとか。今後の展開についてお聞かせ下さい。
福井 いろいろなことを準備しています。今回の『NT』は劇場映画でしたが、次は少し違うやり方をするかもしれません。
プラモデルで(資金回収の)保証はできても、時間をかけて映画を作ったり、テレビシリーズで放送料を支払いながら1年間走るというのは、現場的にも会社的にも高いコストがかかるし、その間にお客さんの受け取り方が変化してしまうかもしれません。
現在はコンテンツとの主な接触手段がスマートフォンになっているので、スマホとの連動も考えたりと、その時々で最適な方法を選び取ってやっていきたいです。
―― 『NT』のBlu-ray&DVDがいよいよ発売されますが、これから観る方に向けてメッセージをいただければと思います。
福井 今回、お客さんの声で一番うれしかったのは、個人的に『NT』を観に行ったときに劇場で聞いた「これだったら『UC』も見てみようかな」という大学生くらいの子の言葉でした。
つまり、彼は何も見たことがないまま『NT』を観に来ていて、面白かったから前の作品も見てみようかと素直に言ってくれている。映画が終わってみんながぞろぞろと劇場から出るときでしたが、僕が真後ろにいるとは夢にも思わずに(笑)
―― (笑)
福井 結構、ガンダムを知っている人から見ると、「『NT』単体でわかるのか!?」と思うじゃないですか。でも、ガンダムを知らない人も、物語のコアの部分であるヨナたち3人が何を考えてどんな人生をたどっていくかだけを追うし、作品としても3人のお話として完結するように作っているので大丈夫らしいんです。
なので、「『NT』がガンダム初体験の人でも大丈夫です!」と力強く言えると思います。
初見の方にも見ていただきたいし、ファンの方、特に劇場でご覧になったという方には、あまり声を大にしては言えないけど、言っちゃうのですが……劇場で見たときよりも、絵が豪華に感じると思います。影も光も満ちあふれています。ぶっちゃけ全体の3分の1ほど手を加えています。
あと、Blu-rayの特装限定版と豪華版にはドラマCDが付いていて、『UC』の主要人物であるリディ・マーセナスの物語になっています。
―― え!
福井 そのドラマCDを聴くと、彼が『UC』の後に何をしているのかがわかります。ドラマCDの手間のかけ方も、アニメのカット割までを想定して音を付けましたので、相当聴き応えのあるものに仕上がりました。カイ・シデンも登場します。
―― それは……私のようなキャラクターファンとしても、大変気になるところです。
福井 カイとリディが会話したりしていますのでぜひ。特装限定版と豪華版はオススメです!
―― ありがとうございました!
(提供:株式会社バンダイナムコアーツ)