春と秋のバージョンアップのプレビュー時間に
格差ができた理由を推測する
つまり、春のバージョンアップは、プレビュー期間を長く設定する必要がある“大きな”バージョンアップであり、秋のバージョンアップは、プレビュー期間を短縮できる“小さな”バージョンアップと位置づけられていると考えられる。これは、これまで春と秋のバージョンアップを同等に実施してきた方向性からの転換を意味する。
オープンソース系のソフトウェアでは、「開発版」「安定版」の2つのバージョンを交互に公開する手法を採るものがある。開発版では、新機能など仕様の変更や内部的な大きな改良が実施される。これに対して安定版は原則仕様を変更しないが、バグフィックスに関しては開発を継続する。
Windows 10もこれに似た体制に移行するのではないかと考えられる。すでに広く使われているWindows 10の場合は、「開発版」というよりは「通常版」なのかもしれないが、春に公開されるのは比較的大きな改良が入るバージョンとなる。
これに対して秋は、安定性を追求したバージョンだ。ただし、マイクロソフトは、いまのところ年2回の「機能アップデート」(機能が追加される)と、「品質アップデート」(新機能の追加はない)について何か変更するとは発表していないため、秋のアップデートでも機能が追加される可能性は残っている。
ただし、春のアップデートに比べるとおとなしいものになることは予想できる。イメージ的には、春は「メジャーバージョンアップ」、秋は「マイナーバージョンアップ」と言えるようになるのかもしれない。ある程度の安定性があり、変更点も大きくないため、プレビューを短縮してもかまわないということなのだと考えられる。
安定性を重視する企業ユーザーに対しては
1年の1回のバージョンアップで済むようにする!?
筆者がこうした予想をするのは、それ以外にもいくつかの判断材料があったからだ。1つは、Enterprise/Educationエディションにおいて、秋のバージョンアップのサポート期間が18ヵ月から30ヵ月に延長されたことだ。もう1つは、Windows 10 RS5からWindows Update for Businessが終了し、SAC-T/SACが中止されたことだ。
これらについては、本連載でも以前詳しく解説しているので、そちらも参照して欲しい(「半期チャンネル(対象指定)」が無くなり、Windows 10の機能アップデートはいつ実施すればいい?)。
そもそも、SAC-T/SACとは、企業ユーザーなどに、Windows 10をバージョンアップしたあと、品質アップデートを繰り返したのち、ある程度安全と思われるバージョンを利用させるものだった。
つまりマイクロソフトが、「そろそろ良いですよ」とタイミングを通知し、自動的にそれをインストールするようになっていたわけだ。しかし、SAC-T/SACが廃止されたことで、現時点では、バージョンアップの可否は、ユーザーに委ねられた状態になっている。
2019年の秋のアップデートは、このSACの代わりに、提供するものになるのではないだろうかと考えている。だとすると、30ヵ月という長いサポート期間も理解できる。逆に言えば、30ヵ月サポートするための安定性を目的にして開発するのが秋のバージョンアップなのだと考えられる。
このようにすることで、企業向けユーザーは、春のアップデートをスキップして、秋のアップデートのみをインストールすれば、自然とある程度の安定性を得られる。
現状のWindows Updateでは、Homeユーザー以外は、機能アップデートを最大1年間遅延させることができる。つまり半年、遅延させておけば、秋のアップデートのみを利用できるようになる。
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