第11世代GPUはメモリークロックを
猛烈に引き上げる力技で性能向上を図る
3月20日~22日に開催されたGDC 2019において、インテルは9つほどTech Sessionを実施しているが、この中に“The Architecture of Intel Processor Graphics:Gen11”というものがあった。Gen11はIce Lakeに搭載されるGPUである。
CES2019レポートでも触れているが、第11世代ではEUが64基で、1TFLOPS以上の性能という話になっている。
もっとも、1TFLOPSの性能そのものは実は珍しくない。というのは、「Core i7-6970HQ」に搭載されているIris Pro Graphics 580(GT4e)は、最大動作周波数(1050MHz)の状態で1209.6GFlops(FP32)/2419.2GFLOPS(FP16)と1TFLOPS超えを果たしているからだ。
ただメインストリーム向けのGT2では、1150MHz駆動でも441.6GFlops(FP32)/883.2GFlops(FP16)でしかなく、これを1TFLOPSまで引き上げたという話と考えられる。
第9世代(つまりCoffee Lake)のGT2と、第11世代(Ice Lake)のGT2の仕様を比較したのが下の画像だ。
基本的にはEUの数が24→64に増えており、これにともないほとんどの性能が3分の8倍に増加しているのが特徴である。ただFP32やFP16については順当に3分の8倍なのに対し、Int 8の演算については3分の4倍(1サイクルあたり1024演算:本来なら2048演算になるはず)に留まっている理由はここでは説明がなかった。
またGPU自身の3次キャッシュも3MBまで増強され、さらにDRAMコントローラーの帯域を見ると、“Up to 2ch 3733”とおそろしいことがすらっと書いてあるのが気になる。
要するに第11世代のDRAMコントローラーはDDR4-3733まで対応するものになっており、これをフルに使うとメモリー帯域は60GB/秒に達するため、EUの数を増やしても描画性能がスケールしやすいとされているようだ。
実はインテルの第11世代で一番問題だったのがここである。先にCore i7-6970HQを引き合いに出したが、これは128MBのeDRAMをパッケージ上に搭載し、これがGPU用のフレームバッファとしても使えるため性能がフルに発揮できたのだが、GT2のグレードではeDRAMの搭載はまずありえない。こうなるとEUの数を増やしてもメモリーがボトルネックになって性能が上がりにくい。
これはインテルだけの話ではない。メモリークロックの違いでどう変化する?の記事にもあるが、AMDのRyzen Gもやはり同じで、メモリークロックを引き上げると、自動的に描画性能も上がるという、要するにボトルネックがメモリーになっているという状況なわけだ。
これはGPU統合型製品の宿命であって、これがいやだとそれこそKaby Lake-Gのように、GPU専用のメモリーをHBMなどで搭載するしかない。
このあたりを第11世代でどうするのか不思議だったのだが、メモリークロックを猛烈に引き上げるという技で対応してきたのはなんかもうやけくそな感じすらする。
今回はGPU周りで話が終わってしまったので、次週はCPU周りの話をしたい。
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