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夢の技術! 自動運転の世界 第9回

自動運転の基礎 その7

自動運転で必須のセンサーとなるLiDAR(ライダー)を知ろう

2019年07月16日 09時00分更新

文● 鈴木ケンイチ 編集●ASCII編集部

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 自動運転技術の開発に使われる車両を見ると、誰もが搭載しているセンサーの多さに驚くことだろう。クルマの屋根にやぐらのようなバーを巡らせて、数多くの機器類を搭載しているものもあれば、クルマの左右に触手のようにセンサーが飛び出ているものもある。さらには、屋根の上で、クルクル回転するものまで。そこで今回は、自動運転技術に使われるセンサーの種類や役割を説明しよう。

レーザーを使って空間を精密に精査するLiDAR

 運転支援ではなく、その先の自動運転を実現するために必須と見なされているセンサーがLiDAR(ライダー)だ。「Light Detection And Ranging」の略で、ライダー以外にも「レーザー」や「赤外線レーザースキャナー」とも呼ばれる。

 自動運転技術の開発車の屋根の上でクルクルと回転しているセンサーがLiDARそのものだ。原理はシンプルで、強い光(レーザー)を小さな点で周囲に投げかけ、返ってくるまでの時間を計測して、その先にあるモノまでの距離を割り出す。最近のLiDARであれば1分間に100万以上の光のポイントを計測できるという。光の点を数多くすれは、モノの形が浮き上がってくるようにわかるわけだ。

 このLiDARを使うことで、クルマの周囲にあるものを立体的に把握することが可能となる。自車の周りを走るクルマや歩行者、ガードレールや壁などもわかるため、自動運転を実現ために非常に有効なセンサーとして位置付けられている。

 ただし、道路標識に記載された文字や路上の白線までがわかるわけではない。また設置される場所によって死角もできる。さらに大問題は、物理的に回転するようなものは、耐久性という点でも量販車には相応しくない。また、LiDARの代表的なメーカーであるベロダインの製品は、ひとつのセンサーだけで数百万円もする。そのため、現在は世界中のサプライヤーが、低価格化と非回転化に必死に取り組んでいるという状況だ。

人とクルマ、標識や信号を読み解くカメラ

 自動運転の実現だけでなく、すでに実用化されている運転支援にも欠かせないセンサーがカメラだ。カメラの果たす役割は非常に大きい。物体が人なのかクルマなのかを見分けるのは、カメラの役割だ。また、交通標識や信号、路面の白線などもカメラがなければ認識できない。

 ただし、カメラも万能ではない。単体での使用だと、物体までの距離がわかりづらい。監視できる視野がレンズによって定まるため、前方だけでなく、頭上に近い信号やクルマに近い左右を監視するために複数のカメラが必要になる。さらにカメラは人間の目と同じで、逆光や暗くなると見えなくなるし、雨や雪にも弱いという弱点を持つ。

遠くの物体を検知するのが得意なミリ波レーダー

 自動ブレーキなどの運転支援システムにも採用されているセンサーがミリ波レーダーだ。電波を飛ばして、その先にある物体までの距離を測定する。電波を使っているため、雨や暗さにも強く、さらに数百メートル単位の遠い場所までを検知することができる。

※写真はイメージです

 ただし、検知できるのは金属などの硬いモノが基本であり、さらに物体の形も詳しく知ることはできない。そのためカメラと併用することが必須となっている。

近距離が得意で低コストが魅力なレーザーレーダー

 すでに実用化されている運転支援システムに採用されているのがレーザーレーダーだ。「赤外線レーザーレーダー」と呼ぶこともある。LiDARと同じように、強い光(レーザー)を照射して、障害物を検知するのは同じだが、精度がまったく違う。実用化されているレーザーレーダーが飛ばすレーザーは、ほんの数点というレベル。何かがあるというのは検知できるが、その形まではわからない。

※写真はイメージです

 家電のリモコンも同じように赤外線を使っているように、非常に低コストで作れるのが最大のメリットだ。その安さは、日本における運転支援システム普及の大きな推進力となっている。

クルマの現在の位置を測定するGPS

 自動運転の実現に欠かせないのが、自車位置の正確な把握だ。そのために自動運転技術の開発車両にはGPSのセンサーが必ず搭載されている。これらのGPSシステムは非常に高性能で誤差は、数センチ単位だという。誤差数メートル単位のスマートフォンとは別次元のものが使われているのだ。

※写真はイメージです

いかにセンサーを簡易化し
コストを減らすかが実用化への課題

 自動運転技術の開発車両には、これほどたくさんのセンサーが搭載されている。しかし、センサー数が多いのは、開発のためという側面がある。まずは、可能なかぎりデータを集めるという考えだ。そのため、開発車両のような数を搭載しての実用化はないだろう。

 実用化するには、なんといっても販売価格が重要になるからだ。自動運転の安全性と確実性を確保しながら、どれだけセンサー類を簡易化してコストを下げられるか。それが実用化に向けた課題となる。

筆者紹介:鈴木ケンイチ


 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。



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