ライフサイクルマネジメントから考える医薬品特許戦略の重要性
再生医療促進イベント「RINK FESTIVAL 2019」で、バイオ系スタートアップのための知財セミナーも実施
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2月8日に開催された再生・細胞医療産業化ネットワーク(RINK)による初の大型イベント「RINK FESTIVAL 2019」では、再生医療の実用化・産業化促進のためのセミナーやベンチャー企業のピッチイベントが実施された。イベントの最後に行なわれたのが「バイオ系スタートアップのための知財セミナー」だ。
このセミナーでは特許庁 企画調査課の貝沼憲司氏と弁理士の大門良仁氏が登壇し、特許庁によるスタートアップ支援の現状や、医薬品ビジネスにおける特許戦略についてのレクチャーが行なわれ、知財特許の重要性やその活用について解説された。
医薬品のライフサイクルマネジメントから考える特許戦略
弁理士の大門氏のレクチャーでは、医薬品ビジネスにおける特許戦略の解説が行なわれた。もっとも重要なことは添付文書であり、製品の延命や特許の価値を高めることができるという。
医薬品の添付文書には「効能効果」「用法」「用量」「併用薬/使用上の注意」「コンパニオン診断」が記載されており、これらは特許の出願まで公知にしないことが重要だと語る大門氏。また製薬会社に話を持ち込む前に、自社で基礎出願を完了しておくことも必要だという。後々ジェネリック薬が出てきても、「既存の製品と同一の添付文書の記載が求められる」ため、そこに先行企業は「地雷」を埋めておくことで製品の延命を図ることができる。
たとえば医薬品のデータ保護期間は、日米欧でその期間が異なるが、延長期間は5年が限度。その独占期間を過ぎた後は後発品であるジェネリックとの争いとなるが、特許戦略によってその独占期間を長くすることができる。大門氏は本セミナーで、その例としていくつかを明示したが、その中からオプジーボとシアリスの特許戦略を紹介しよう。
オプジーボはノーベル賞を受賞した京都大学の本庶 佑氏の業績としても話題となった画期的なガンの治療薬だ。その用途特許としては、「PD-1抗体を有効成分として含むガンの治療用途の薬」とされている。しかし用途特許の後に、「CDRに限定した抗体であるニボルマブを有効成分とする」物質特許を取得したことで、製品の独占期間を6年半延長することに成功している。
またシアリスは元々狭心症の薬として物質特許を取得していたが、ED治療への効能が発見されたことによって用途特許を新たに取得。さらに用法用量に特徴のある用途特許として3年9ヵ月、独占期間を延長することができた。製品の世界売上を1000億円超と仮定すれば、延長によって年間売上1000億円超×3年9ヵ月に近い収益を確保できたことになる。
ほかにも、もともと注射していた薬剤を点眼薬にすることで、投与部位における特許を取得し、独占期間が延長された例なども示された。
特許の有効期間が長ければ長いほど、スタートアップが作った新薬などは製薬会社への売価が高くなる。だが大門氏は、こうした新たな特許を得るには社内に意欲のある人がいないと厳しいと語り、そもそも社内でコントロールができるかどうかも含めて特許戦略を立てるかが重要とコメントした。
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