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物販からITストック事業へのシフトを進める

キヤノンMJがデータセンター事業拡大、西東京DC第2棟を2020年夏に稼働

2019年02月21日 13時30分更新

文● 大河原克行

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 キヤノンマーケティングジャパンおよびキヤノンITソリューションズは、西東京データセンターの第2棟の建設を、2019年3月1日から開始し、2020年夏に稼働する計画を発表した。

 新棟は、地下1階から地上3階で構成。延床面積は1万7107平方メートル、2880ラック、CPU質床耐荷重は1.5/m2、電力・通信回線は2系統となっている。

 キヤノンITソリューションズ 取締役常務執行役員 ITインフラサービス事業統括担当の笹部幸博氏は、「新棟は、第1棟と連結する形で効率的に設置。第1棟に比べると、延床面積はほぼ同等であるが、堅牢性を維持しながら、効率を追求したレイアウト設計と、最新設備の採用により、面積あたりの能力を向上。ラック数は1.25倍、受電能力は1.7倍となる25MVA、BCPオフィスフロアは2.3倍となる1500平方メートルになる」という。

 ハイブリッドクラウドやマルチクラウド構成など、顧客のニーズにあわせた最適なインフラ基盤を提供するためのデータセンターと位置づけており、ITアウトソーシングモデルを中堅企業に展開するほか、AI技術の提供を加速する狙いがあるという。

、西東京データセンターの第2棟の概要

 笹部取締役常務執行役員は、「キヤノンマーケティングジャパンのメリットを生かすために、アウトソーシングサービスをセミオーダー型に整えて、効率的に提供。全国をIT専任者がいない中堅企業へのアウトソーシングや、デジタルディスラプターへの対応や新たなビジネスを創出したいと考えている中堅企業に、全国の拠点を通じて、西東京データセンターを活用したサービスを提供したい」としたほか、「当社のR&D部門が開発したAI開発プラットフォームである『LaiGHT(ライト)』をベースにして、顔認証や自動化、需要予測などのソリューション提供に利用したいと考えている。ディープラーニングの仕組みにより、画像認証などの認識率を高めているが、まだ個別対応という段階であり、今後、これを広く展開していきたい。西東京データセンターは、AIから生み出す各種サービスを提供するために、多くのデータを蓄積する場所として、データを演算処理する場所として、そして、SOLTAGEを通じて、サービスを提供する場になる」とした。

キヤノンITソリューションズ 取締役常務執行役員 ITインフラサービス事業統括担当の笹部幸博氏

 なお、2012年から稼働している西東京データセンターは、データセンター運営品質の評価制度であるM&Oの認証を国内のデータセンターとして2社目に取得。ISO/IEC 2000およびISO 22301を取得している。また、同社では、独自のIaaSである「SOLTAGE」を、同データセンターを通じて提供。さらに、キヤノンマーケティングジャパングループの強みを生かした各種SaaSを同データセンターで運用している。「金融、製造、流通領域における一定規模を持つシステムの開発、運用、保守での利用や、海外のクラウドベンダーによる活用も増えている。すでに、1万社以上で利用されている。高セキュリティ、M&O認証による高い運用品質、Tier4準拠のファシリティ、都心から約20kmの立地により通信回線の遅延がないというメリットが理解され、稼働から約6年で満床の目処がついてきた」(笹部氏)。

東京DCと沖縄DCでのDR構成

 同社では、2005年から沖縄データセンターを運用しており、東京から約1600km以上離れた場所で、DRへの対応などを図れるようにしている点も特徴のひとつにあげた。

 「沖縄県では、IT産業振興に積極的であり、高品質のデータセンター設備やネットワーク環境を整備し、ローコストで運用できる体制が整っている。DRの用途だけでなく、堅牢な設備を持つ西東京データセンターとの補完という意味でも用途にあわせて利用されている」(笹部氏)という。

 日本グッドイヤーでは、西東京データセンターと沖縄データセンターを活用し、DRにおいて、事業停止リスクを低減した。さらに、沖縄データセンターには、Javaの技術者が常駐しており、すぐに対応できる体制をとっている点も評価しているという。

西東京DCと沖縄DCでDR構成をとることができる

日本グッドイヤーはキャノンMJの西東京DCと沖縄DCを活用して事業リスクを低減氏

 キヤノンマーケティングジャパンでは、2021年を最終年度とした「2019年~2021年中期経営計画」において、グループITソリューションの売上高は、2018年度の1977億円から年平均成長率5%増を計画。2021年度には、グループ売上高全体の35%を占める、2300億円の売上高を目指している。さらに、「2025年には、3000億円の売上げ規模を目指したい」(キヤノンマーケティングジャパンの坂田正弘社長)とし、成長戦略の軸に、ITソリューション事業を据えている。なかでも、データセンター事業は、ITセキュリティおよびBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)とともに、重点領域のひとつに位置づけている。

DC事業でITソリューション売上3000億円を目指す

キヤノンマーケティングジャパン 取締役常務執行役員 エンタープライズビジネスユニット長兼キヤノンITソリューションズ 代表取締役社長の足立正親氏

 同社はこれまでにも「ITS3000」をキーワードに、ITソリューション事業で3000億円を目指す計画を掲げていた時期もあったが、未達に終わった経緯がある。今回、再び掲げた「ITS3000」は、従来とは、事業体質が異なっており、機器の販売などの売り切りに頼るのではなく、データセンター事業を中心としたITストック比率を高めるという点が特徴だ。

 キヤノンマーケティングジャパン 取締役常務執行役員 エンタープライズビジネスユニット長兼キヤノンITソリューションズ 代表取締役社長の足立正親氏は、「現在、ITストックの比率は30%であるが、2025年度には40%に高め、景気変動に強い体質に転換する。これを実現しないと3000億円は達成できないと考えている」とした。

キヤノンマーケティングジャパンはITソリューション事業で3000億円を目指す

 また、足立氏は、「従来からの守りのITへの投資は減少していくが、攻めのITへの投資は増加するとみており、データセンターに対する需要も増加するとみられている。中期経営計画においては、大手企業向けに、多くの顧客基盤と全国のサポート体制を持つ強みをベースに、デジタルビジネス領域を強化。同時に先進テクノロジーを駆使した業種・業務特化型サービスを充実する。中小企業向けには、我々がITコンシェルジュとなり、IT専任者が不在の状況をカバーするIT活用のパートナーを目指し、そのなかでも、ITインフラビジネスを強化していく。そのためには、高セキュリティ、高品質、高効率なデータセンターインフラ基盤の強化が重要になる」などとした。

 会見では、同社の西東京データセンターを活用した業種特化型サービスの具体例として、投資商品販売支援システム「しんきん預かり資産ナビ」を提供。「もともとは地方銀行と個別開発していたものを、信金中央金庫の協力を得て、2018年7月から、共同型クラウドサービスとして提供を開始していたものである。2019年からビジネスを本格化したい」と語り、「AWSのようなプラットフォーマーにはなれないが、新棟を活用することで、現場に密着した課題解決に取り組み、業種・業務への特化を加速。早期に様々なサービスを提供したい」(足立氏)と述べた。

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