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定型/非定型帳票を一括スキャン、OCRをコアとした業務の“半自動化”で時間短縮

朝日生命とキヤノンMJ、非定型帳票対応OCRで保険業務効率化

2017年03月08日 15時30分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 朝日生命保険(朝日生命)とキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は3月8日、生命保険加入時に必要な医務査定にかかる業務を効率化する「定型・非定型帳票OCRエントリーシステム」を構築したことを発表した。キヤノンMJの日本語OCRエンジンを中核として、これまで人手に頼っていた非定型帳票の正確なデータ化をサポートするソリューションで、保険契約成立までの所要時間を「2割削減」できたとしている。

従来の保険契約業務では、加入者の提出した健康診断書を人海戦術でデータ化していた(上段)。今回、非定型帳票にも対応するOCRソリューションを構築したことで、作業効率を大幅に高めた

 保険業界では近年、契約成立までの時間短縮や業務効率化などを目的に、業務全体の電子化が推進されている。たとえば、新規加入者に対する提案書の提示、加入者の申込書記入やサインといった場面では、すでにタブレット端末の導入が進んでいる。

 しかしその一方で、加入者から健康診断書を預かり、その内容に基づいて行う「査定」の業務においては、預かった書類のデータを複数のスタッフがすべて手入力/ダブルチェックせざるを得ず、大きな業務負担が生じていた。

朝日生命では、これまで健康診断書のデータ入力が大きな業務課題だった

 その背景には、これまでのOCRソリューションが「非定型帳票」の扱いを苦手としており、非定型帳票のデータ化が人手に頼らざるを得なかったという事情がある。自社で作成/提供した申込書などの帳票(定型帳票)とは異なり、加入者が提出する健康診断書の帳票レイアウトは統一されておらず、どの項目がどこに書かれているかは分からない。そのため、従来のOCRでデータ化作業を自動化することは難しく、さらに手入力作業をする場合も、何ページもある健康診断書から該当項目を探す手間がかかっていた。

定型帳票ならば記入位置が特定できるためOCRによる自動データ入力も容易にできるが、非定型帳票ではそれが困難だった

 今回キヤノンMJでは、朝日生命の業務フローや作業手順、負荷の高い作業、さらにデータ化対象である健康診断書を詳細に分析したうえで、自動データ化ではなく、現場でのデータ入力をサポートする“半自動化”のOCRソリューションを完成させた。

 具体的には、キヤノン製のOCRエンジン「RosettaStone-Components」を中核として、スキャンした健康診断書の「項目名(年齢、体重、白血球数など)」とその「値」を、行から判断して一対のデータとして取り込む。業務アプリケーション上では各項目にその値が自動入力され、さらに各入力項目をクリックすると、実際の書類(スキャン画像)上での位置や内容が拡大表示される。こうした仕組みにより、入力担当スタッフは自動入力された値が正しいかどうかを容易に確認/修正しながら作業が進められる。

今回のOCRソリューションでは、健康診断書のスキャン画像から項目名に対応する値を自動で抽出する

 なお健康診断書では、最新のデータと合わせて過去(前回)のデータや標準値などが併記されているケースも多いが、同ソリューションでは「行」だけでなく「列」でもデータを把握するロジックを持っており、データの誤入力を抑止しているという。そのほかにも、導入先の業務に応じたロジックのチューニングがなされる。

 同ソリューションの導入によって、朝日生命では業務の手間が削減され、保険契約成立までの所要時間が2割削減されたとしている。

 またキヤノンMJでは、保険金支払業務における健康診断書や医療明細書、また住民票などのデータ化についても、同ソリューションを活用していく方針。事業目標として、今回のソリューションも含むエンタープライズ向けドキュメントソリューション事業で、2020年に70億円の売上を目指すとしている。

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