1981年に初のパソコンが発売
歴史に残る大ヒットに
12ヵ月というのは、通常新製品を開発するには猛烈に短すぎる時間であり、しかも1981年1月に試作機を使ってデモを行なうという話もあったそうで、Project Chessのメンバーと、これに巻き込まれたマイクロソフトを初めとする多くの企業は、猛烈なスピードで仕事をしなければならなかった。
通常IBMは製品を自前で製造するが、それでは時間とコストがかかりすぎるとEstridge氏は判断、かなりの部分を外部企業の標準品に頼った。
例えばプリンタはエプソン、モニターは日本IBMの標準品、電源はZenith、FDDはTandonという具合だ。こうしたメーカーはProject Chessと協力して製品開発に携わることになる。
最終的に1981年4月にすべての設計が終わり、そこから量産に入ったが、その量産すらIBMの社内の製造施設と外部の製造企業による競合となった。マザーボードはIBMのEndicott工場が応札したが、最終的に外部のSCIに委託が決まっている。
実のところIBM社内で製造されたものは、North Carolina工場で製造されたキーボードくらいというほど、徹底したアウトソース化が行なわれることになり、結果最低価格で1565ドル(ただし家庭用TVとカセットテープレコーダーを利用する構成)、一般的な構成(64KB RAMとFDDが1台、それとIBM-DOSのセット)で2665ドルという、これまでのIBMからすれば驚異的ともいえる低価格での製品提供が可能になった。
画像の出典は、IBM Archives
最終的にIBM 5150という名前がつけられたこの製品は1981年8月12日に発売される。この発売にあたってのコマーシャルも、またこれまでのIBMからは考えられないものだった。
チャーリー・チャップリンの“The Little Tramp”をキャラクターに据えた(当然だが当人はもう逝去されているため、Billy Scudder氏が演じている)コマーシャルは評判になった。あまりに評判が良かったためか、その後も続編がいろいろ作られている。
さて、結果は? というとご存知の通り、最初の1年だけで10万台を売り上げる大ヒットとなった。この続きは次回に。
この連載の記事
-
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第792回
PC
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第791回
PC
妙に性能のバランスが悪いマイクロソフトのAI特化型チップMaia 100 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第790回
PC
AI推論用アクセラレーターを搭載するIBMのTelum II Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第789回
PC
切り捨てられた部門が再始動して作り上げたAmpereOne Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第788回
PC
Meteor Lakeを凌駕する性能のQualcomm「Oryon」 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第787回
PC
いまだに解決しないRaptor Lake故障問題の現状 インテル CPUロードマップ - この連載の一覧へ