松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第221回
スマートスピーカーブームの中で成長するSONOSに、Apple MusicのSpotify超え、米国の音楽再生事情
2018年07月11日 12時00分更新
スマホに通知が来ても音楽が途切れない
SONOSのスピーカー
自分が好んで使っていた製品の企業が上場を果たす機会は、そうたくさんはありません。筆者は以前から「SONOS」というブランドのスピーカー製品を自宅で使ってきましたが、そのSONOSがNASDAQに上場申請を出しました(https://www.cnbc.com/2018/07/06/sonos-files-to-go-public-in-100-million-ipo.html)。
SONOSは高品質なスピーカーにWi-Fiを搭載させ、各種ストリーミング音楽を単体で再生できる機能や、複数のスピーカーをペアリングさせ、ステレオやサラウンドのシステムを構築できる機能性を早期から実現してきました。
BluetoothだけではなくWi-Fiを搭載していることは、iPhoneユーザーである筆者に非常に大きなメリットがあります。iPhoneからApple Musicの音楽をBluetooth経由で再生していると、手元の端末の状況で音楽が止まってしまいます。
たとえば、電話がかかってきたり、iPhoneでYouTubeを再生すると、せっかく心地よく流れていた部屋の音楽も中断されてしまうのです。これは、HomePodでiPhone経由の音楽再生をしても同じことです。
しかしSONOSは、スピーカー自体がWi-Fi経由でストリーミング音楽を再生し、iPhoneのアプリはそれをコントロールするリモコンに徹しているだけです。そのためiPhoneがどういう状況であれ、スピーカーはキチンと部屋の音楽を奏で続けるわけです。
SONOSにとって、時が来た
SONOSのIPOは、一見荒波の中の船出に見えます。というのも、強大な力を誇るAmazonやGoogle、そしてAppleまでもがスマートスピーカーに参入し、AIを武器に、部屋のスピーカーの陣地の奪い合いを展開しているからです。
しかし音質で競合するのはAppleのHomePodぐらいで、しかも前述のようにスマートフォンと組み合わせる機能性はSONOSが依然として勝っています。個人的には、AmazonやGoogleが高音質モデルを無料でばらまくような荒技に出ない限り、SONOSの成長の余地はありそうだと思っています。
ただ、テクノロジーの巨人たちのスピーカー争いは、SONOSにとっても追い風となっているようです。
IPO書類によると、2017年は9億9200万ドルを売上、2016年から10%成長しています。また2016年に3800万ドル出していた赤字は、2017年に1400万ドルの赤字まで圧縮されました。2018年の前半は、1300万ドルの黒字を報告しており、その収益性は急速に向上している様子が分かります。
2017年末にスマートスピーカー競争が激化するまでに、SONOSはAmazon Alexaに対応するモデル「SONOS ONE」を投入。2台組み合わせてもHomePodと同じような値段で、ステレオシステムが作れます。
またこのSONOS ONEは、AppleがiOS 11.3でサポートを開始したAirPlay 2に対応し、HomeKitから操作できるようになりました。加えてGoogleアシスタント対応なども見据えています。
時流に乗りつつ、自らの価値を光らせる、そんな取り組みは、今のところ成功しているように見えます。ただ、Amazonは、音声アシスタントのAlexa、そしてAmazon.comの販売チャネルの両方を、いつでもSONOSから奪うことができるとも言えます。
その点では、独自の価値の充実とメッセージ作りがより重要、と言えそうです。たとえばホームスピーカーは音質が命という路線を示すと、Appleと、とまでは明言しないまでも、共闘戦線を張ることもできるかもしれませんし。
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