氷河のように遅い米西海岸でのレジ対応
日米の両方で生活した経験から感じるのは、日本はあらゆるインフラが精巧に作られていて、きちんと動作しているという点です。
だからこそ、スタートアップがチャレンジしにくかったり、開発に多大な時間とコストがかかってしまったりしているわけですが、それでも生活者の視点から見れば、日本の方が充実度が高いと思います。
たとえば、Suicaをはじめとする非接触ICカードによる決済は朝夕混雑する改札において、1秒以内にで1人が通過できる「スピード」を要件としていて、世界からは変態的な扱いを受けています。
スピードと言えば、日本のレジなどの人が介在するサービスの速さも「逆カルチャーショック」を受けたポイントでした。日本でもレジなどでイライラしている人を見つけますが、米国での感覚からするととんでもない……。
カリフォルニア州みたいな米国の西の最果ての地方都市にやってくると、正直なところ「氷河のように遅い」という冷たい感想を持ちたくなるほど、ゆっくりのんびりと店員は対応します。それでいてとりたてて丁寧でもないのです。
レジの対応が遅いのはスタバでも同じだが
それがスマホによって変わろうとしている
日本でも人気のコーヒーチェーン、スターバックス。
米国シアトルで創業し、瞬く間に全米に拡がりましたが、日本のスタバに行き慣れていると、米国のスタバはどこかおしゃれ感も特別感もないことも「逆カルチャーショック」のポイントでしょう。そして前述の氷河のような遅い対応にやきもきすることになります。
しかし最近、そのスタバの景色が変わりつつあります。遅いレジ対応ゆえにどんな時間もレジ待ち行列はあるのですが、キッチンというかコーヒーバーはフル回転でドリンクを作っていて、レジを通過した人の分以上のドリンクが、ランプの下のカウンターから次々に出てきています。
そして、レジを通らずにそのままカウンターへ進み、自分のドリンクを持って店を出て行く新しい流れができました。店によっては「Mobile Order Here」と黒板に書いてあって、ドリンクが並んでいたりします。
その光景から、いくつものことを読み取ることができるのです。
米国版スタバアプリの超重要機能「モバイルオーダー」
スターバックスは独自のプリペイドカード「Starbucks Card」を用意しており、アプリにチャージしておけば店頭でバーコードから支払うことができる仕組みを実現しています。
日本よりも明らかに便利なのは、米国版のスタバアプリがiOS標準の「Wallet」アプリに対応している点です。
日本のスタバアプリは、毎回店舗でアプリを開いてバーコードを表示させなければ支払いができませんが、米国のアプリはWalletに対応しているおかげで、スターバックスの店舗に近づけば自動的にロック画面にバーコードへのショートカットが表示されるし、Apple Watch単体でもバーコードが表示できます。これはぜひ日本でも実現してほしい点です。
米スターバックスアプリはモバイル決済のトップランナーで、猛烈に追い上げるApple Payに対しても少なくとも2021年までは追いつかれないと予測されています。単一チェーンのモバイル決済がプラットホームに追いつかれない規模を誇っている点は驚きです。
さらにユーザーに対して、アプリを通じた各種サービスを展開できる点も、米国スターバックスの強みになっています。その1つが「モバイルオーダー」というわけです。

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