KDDIとKDDI総合研究所、沖縄セルラーは6月26日、次世代通信システム「5G」を利用してプロ野球を好きな角度でライブ観戦するリアルタイム配信の実証実験に成功しました。リアルタイムの映像を5Gで転送する実験の成功は世界初とのこと。
今回の実験は、スタジアムに設置した16台のカメラ映像を有線でサーバーへ転送。転送された複数の映像からサーバーで自由視点の3Dコンテンツを生成し、有線で5G基地局へと送り、基地局から観客のタブレットへ5Gで高速転送を行うというものです。商用化の時期は未定としながらも、新たなスポーツ観戦体験を感じる実験となっていました。
最新技術を体験価値に変換することが責務
KDDIとKDDI総合研究所、沖縄セルラーは、今回の実験と合わせて6月27日にメディア向けの説明会を実施しました。
松永氏は「最新技術を体験価値に変換することが責務」とし、今後もKDDIグループでユーザーにワクワクする体験を届けるため、様々なスポーツやイベントで映像配信を行う予定とのこと。
受信タブレットに「5G」の表示が
映像配信の実証実験は、26日に沖縄セルラースタジアム那覇にて開催された「北海道日本ハム対福岡ソフトバンクホークス」のプロ野球公式戦にて実施されました。
解析された画像は有線でコアネットワークと5G基地局へと送られ、最終的にモバイルネットワークを使って観客席のタブレットに届く仕組みです。
なお、今回の実証実験では4kカメラを使っていたものの、タブレットで受信する映像は2k解像度でした。最終的には8k配信も目指しており、高解像度を生かした高倍率ズームなどでさらに自由度を高めたいとのこと。
複数のカメラ映像を活かしたVR配信も予定しているとのことで、いずれは家庭でもスタジアムの臨場感を味わえるようになるでしょう。
今回の実証実験は未来を感じる取り組みながら、実験段階ということもありさまざまな課題も浮き彫りになっていました。まず、5Gで使用される周波数は直進性の高い28GHz帯のため、アンテナと端末との間に人がいるだけで電波が弱くなるとのこと。そのため、電波が届くエリアはかなり限られてきます。
また、3Dモデルの配信サーバー1台につき処理できるタブレットが1台とのことで、今回のタブレットの上限は10台でした。5G通信だけでなく、映像処理技術の進化も求められます。
商用化に対するさまざまなハードルはありつつも、システムが実用レベルになるとスポーツ観戦が劇的に変わることが予想されます。自由視点に加え、選手データや分析などが細かくタブレット端末に表示されることで、ライト層も取り込めるでしょうし、現地観戦できなくても熱量も共有できます。
今後の提供時期、サービス内容は未定としながらも、こうした実証実験での成功を重ね、1日でも早く利用できる日を楽しみに待ちたいと思います。