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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第464回

あと1年は10nm製品を投入しないと明言 インテル CPUロードマップ

2018年06月25日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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コバルトの採用が10nmを実現すると同時に
配線抵抗が上がり性能が出せない

 さて、コバルトは? というとこの平均自由行程が7.8~11.8nm(垂直軸と水平軸で数値が異なる)と非常に短く、結果として10nm世代の14nmの配線幅であっても、エレクトロマイグレーションが起きにくい。

 実際インテルは、銅に比べて10倍の改善があったとIEDMの論文で説明している。また、そもそも配線幅が狭くなると抵抗値が増えるので、特にContact GateやM0/M1の接続部などでは銅配線でも抵抗が高くなる。

 ところがコバルトではそもそも絶縁層が必要ないため、その分幅が広くなることもあって、むしろ抵抗が減ると報告されている。

 ここまでは論文に書いてある話だが、問題はここからだ。一見すばらしい材料に見えるコバルトだが、これまで採用されてこなかったのは電気抵抗そのものが銅の6倍近く高いためだ。

 それでも狭いところに限って使えば銅よりも良好な結果が得られるとはされているが、配線全体としての抵抗値は銅よりもかなり上がってしまったらしい。

 話は飛ぶが、昨今の先端プロセス(単にプロセッサーのみならず、メモリーにも適用される)で速度を決めている要素はなにか? 以前であればトランジスタのスイッチング速度が決めていたのだが、10nm世代になるとむしろ配線遅延が速度を決めるようになっている。

 これは以前の世代の、配線の引き回しを長く取ることに起因する、信号伝達の遅れという話ではない。連載241回で少し触れたが、すべての配線はそれぞれ配線抵抗と寄生容量を持っており、これによりRC回路(抵抗とコンデンサーで構成される回路)が勝手に構成される。

 このRC回路は時定数(周期とも言うが周波数の逆数)が抵抗と容量から一意に決まり、これより短い周期(より高速な周波数)には絶対にならない。例えばあるトランジスタが1GHzで動作したとしても、その周囲の配線の時定数が2nsだとすると、実際にはトランジスタは500MHz以上で動かすことができない。

 ということでコバルト配線に戻ると、時定数は抵抗値Rと寄生容量Cの積で決まる。寄生容量は配線を囲む誘電体の材質で決まるので、そうそうは変わらない。そしてコバルトを使うことで銅配線よりも抵抗値が増えると、時定数がそれだけ増えることになる。ということは、それだけ動作周波数が落ちることになるわけだ。

 つまり10nm世代にすることで、トランジスタ密度は確かに上がり、消費電力も「ひょっとすると」減る(トランジスタそのものは減るが、トータルでは微妙か、下手をすると配線抵抗が上がった分増える)が、性能が落ちるという話になる。

 ちなみに同じ2017年のIEDMでGlobalfoundriesは、ライナーのみをコバルトとして配線材料は銅のまま据え置くことで良い結果が得られたとしている。

 インテルもそうした手法をとるのか、あるいはLocal Interconnectの配線の仕方を変更して配線距離を短縮するのか、あるいはMetal Pitchそのものに手を入れるのかは不明だが、現在このM0/M1の改良をしている最中らしい。

 こういう基本的な部分に手を入れたら、それは全部作り直し(下手をするとトランジスタの配置から見直し)になるわけで、2019年中にまともに量産製品が出てきたら賞賛すべき、という状況に陥っているようだ。

新しいビデオカードを
2020年に投入

 最後に関係ない話を1つ。6月13日、Twitterのインテル公式アカウントが「2020年にインテル最初のGPUをリリースする」と唐突にツイートした。

 時期的には当然10nmプロセスでの話だろうし、ハイエンドゲーミング向けか? といった観測も多い。実際のところインテルはAMDからRaja KoduriのみならずChris Hookまでスカウトしているので、ゲーミング向けにもなにか出すだろうとは思うのだが、そもそもこの最初のディスクリートGPUのターゲットはゲーミングではないと筆者は予想している。

 ではなにかというと、死んでしまったKnights Hillの代替ではないか? と考えている。そもそもAVX512エンジンを大量に搭載しても、性能はともかく消費電力が絶対にターゲットに合うとは思いがたい、という話は連載435回でもした通り。とはいえXeon Phiの開発チームは事実上消えている状況なので、なにかしら別のアイディアが必要である。

 一方Raja氏はPolarisに続いてVegaをリリースしたが、こちらはゲーミングというよりはHPCにかなり色気を持った構成になっており、(次回説明するが)7nmのVegaはRadeon Instinct向けになる、なんて話になってるあたり、彼自身もHPCマーケットに非常に関心があるのも間違いない。

 そしてインテルはどうしてもAurora改のために、高性能なGPUが必要である。こうした利害の一致がRaja氏の移籍につながった、と考えるのは自然だろう。ただAuroraのためだけにGPUを作ったらコストが高すぎる。当然数がさばける市場にも売り込むことで開発費を回収する必要があり、ハイエンドゲーミングは手ごろな市場になるだろう。

 これは完全に筆者の推測であるが、さて真相はどうだろう?

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