今回のお題は、ジサトライッペイ氏が帰省の折にご母堂より御下問され、答えられなかった用語その1ということで、IoTである。
インターネットにつなげることで
機能が拡大するデジタル機器の総称
IoTは「Internet of Things」の略である。直訳すれば“インターネットにつながるモノ”ということになる。要するにいろいろな機器が、最終的にみんなインターネットにつながっていく、という様相を表した用語というのがオリジナルの意味合いである。
ちなみに“Internet of Things”という言葉を発明したのは、P&G(国内では洗剤やファブリーズなどを扱っている、あのP&Gである)のKevin Ashton氏で、氏が1999年に行なった講演でこの言葉が出てきた。
ちなみになぜP&Gかというと、同社は在庫管理のためにRFIDタグを利用することを当時真剣に検討しており、Ashton氏はこのRFIDに絡んでマサチューセッツ工科大学に出向き、さまざまな研究を行なっていた。
講演はこの研究に絡んだものであり、リップスティックの在庫管理(在庫追跡)をするために、RAIN RFIDと呼ばれるものを利用しようというものである。
リップスティックはともかくとして、この概念は当初は無視されていた。1999年といえばWindows 2000が出た頃で、PCあるいはワークステーションクラスのマシンであればインターネットへのアクセスには問題はなかったが、これより小さな機器ではまだまだ難しかった。
インターネットアクセスが可能な小型機といえばまずはBlackberryが浮かぶわけだが、2002年あたりから登場した第二世代の所謂“Quark”シリーズ以降ではないかと思う。
日本ならi-modeでもいいのだが、投入時期はそれほど変わらない。いずれにせよこの時点では(Blackberryもi-modeも)機器そのものが高価であり、しかもランニングコストも馬鹿にならない(なにしろパケット通信のみである)こともあって、IoTには程遠い状況だった。
このあたりが劇的に変わっていくのは2008~2009年頃からである。実はこれに先んじて、海外で言えばM2M(Machine to Machine) Network、日本ではユビキタスという名前で当時東大の坂村健教授が盛んにさまざまな機器やセンサーをインターネットに直接つなげようとしていた。
問題は、この際に安価で適切なネットワークがなかったことだ。家庭にしてもオフィスにしても製造工場にしてもそうだが、この頃になるとインターネットへのアクセスポイントそのものはなにかしら用意することは可能だった。ただし有線(イーサネット)でつなぐのは、特に小さな機器では難しく、設置や配線の制約がある。無線は普及を始めていたものの、まだ価格が高かった。
こうした理由で、ある程度大型の機器はともかくとして、「あらゆるものを」つなぐのは結構難しかったのだが、これを打ち破ったのがWi-Fiの急速な普及である。これは言うまでもなくインテルのCentrinoのおかげで、これにより急速にノートPCへのWi-Fiの搭載が始まり、さらに公衆無線LANの設置も始まった。
これに輪をかけたのが、2006年のiPhoneと翌年以降のさまざまなスマートフォンの登場である。外出時はともかく、自宅にいるときには定額制で高速に通信したいというのはごく普通の欲求である。すでにCentrinoの登場で無線LANのアクセスポイントの価格はだいぶ安くなってきており、さらにスマートフォンの登場で、これまでノートPCを持っていなかったユーザーもアクセスポイントを用意するようになった。
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