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荻窪圭の“這いつくばって猫に近づけ” 第559回

撤退が決まったカシオのデジカメを猫写真で振り返る

2018年05月12日 10時00分更新

文● 荻窪圭/猫写真家

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薄くて軽い「EXILIM」が登場

 そして2002年、カシオが動いた。

 デジカメが高性能化高倍率ズーム化高画素化するにしたがって大きく重くなり、使われ方もカシオが当初描いていた「ビジュアルコミュニケーション」というよりは、昔ながらのカメラの延長線上で落ち着こうとしていたのである。

 いやそこで落ち着くのはまだ早いと、一度原点に戻るべく投入したのが「EXILIM」。

「EX-S1」

「EX-S1」

 初代EXILIMは100g以下で厚みは11.3mmの超薄型カードサイズカメラ。毎日携帯して気軽に撮るという新コンセプトのカメラだった。

画質よりも性能よりも薄くて軽くてポケットで持ち歩けるというコンセプトで登場した初代EXILIMでうちの猫(2002年6月 カシオ EXILIM EX-S1)

画質よりも性能よりも薄くて軽くてポケットで持ち歩けるというコンセプトで登場した初代EXILIMでうちの猫(2002年6月 カシオ EXILIM EX-S1)

 その分、ズームもないしフォーカスも固定式だったが、まだスマホのない時代、ポケットに入れて持ち歩くビジュアルメモには最適だったのだ。ある意味、今のスマートフォンのカメラに近づいた逸品だった。

当時、カシオの限らず薄型コンパクトなズームコンデジが主流に。これはとある公園で捨てられていた猫の親子。このあと、猫ボランティアさんの手によって去勢され、世話されることに(2003年5月 カシオ EXILIM EX-S100)

当時、カシオの限らず薄型コンパクトなズームコンデジが主流に。これはとある公園で捨てられていた猫の親子。このあと、猫ボランティアさんの手によって去勢され、世話されることに(2003年5月 カシオ EXILIM EX-S100)

 とはいえ、EXILIMもなんだかんだいって薄型は維持したものの、ズームレンズを搭載した普通のコンデジになっていくことになる。

この頃、画素数が600万画素に達する。ここに写っている3匹は実は兄弟。向かって左にいる「にーに」は里親が見つかってよい暮らしをしているが、そろそろ老猫になっているそうです(2006年1月 カシオ EXILIM EX-Z600)

この頃、画素数が600万画素に達する。ここに写っている3匹は実は兄弟。向かって左にいる「にーに」は里親が見つかってよい暮らしをしているが、そろそろ老猫になっているそうです(2006年1月 カシオ EXILIM EX-Z600)

 その後、薄型ズーム路線を維持しつつ、高性能モデルや高倍率モデルも投入し、画素数も600万画素になって写真として十分なクオリティーを実現。コンパクトデジカメ界はピークを迎えるのだった。

今のデジカメの機能を先取りした製品が続々登場

「EX-F1」

「EX-F1」

「EX-FC100」

「EX-FC100」

 2008年(10年前だ)、カシオは新しいコンセプトを打ち出す。超高速カメラだ。ソニーが新開発した高速イメージセンサーをいち早く採用。秒60コマの連写やハイスピード動画を実現した「ハイスピードEXILIM EX-F1」の誕生である。

 2009年にはよりコンパクトで安くなった「EX-FC100」が登場。猫おもちゃを持って猫と遊びつつ高速連写したものである。

超高速連写が楽しくて、連写しまくって遊んでた頃の1枚。猫おもちゃに飛びつく瞬間を撮ろうと構えていたのである。で、飛びついた瞬間はというと……左下に見えてる猫が横取りしたおかげで撮れてないのだった(2009年2月 カシオ EXILIM EX-FC100)

超高速連写が楽しくて、連写しまくって遊んでた頃の1枚。猫おもちゃに飛びつく瞬間を撮ろうと構えていたのである。で、飛びついた瞬間はというと……左下に見えてる猫が横取りしたおかげで撮れてないのだった(2009年2月 カシオ EXILIM EX-FC100)

 あれは面白かったなあ。今は高速連写も珍しくないけれどもあの頃は画期的だったのだ。

上部にGPSアンテナを内蔵した「EX-H20G」

上部にGPSアンテナを内蔵した「EX-H20G」

 もう1つ、個人的に忘れられないカメラがある。「EX-H20G」である。1代だけで終わってしまったカシオで唯一のGPS搭載コンデジ。

冬。塀で道路側から見えないので、のんびりと日差しを浴びているチャシロのハチワレ。冬の日差しが気持ちよさそう。暗所には弱かったが晴れていればきれいに撮れる上に、位置情報が優秀なカメラだった(2010年 カシオ EXILIM EX-20G)

冬。塀で道路側から見えないので、のんびりと日差しを浴びているチャシロのハチワレ。冬の日差しが気持ちよさそう。暗所には弱かったが晴れていればきれいに撮れる上に、位置情報が優秀なカメラだった(2010年 カシオ EXILIM EX-20G)

 これがすごかったのは、おおまかな地図を内蔵していたことと、GPS+内蔵のジャイロセンサーの組み合わせで屋内でもある程度位置情報をとれたこと。私の知る限り、GPS搭載カメラではこれが一番優秀だった。

「EX-TR100」

「EX-TR100」

 2011年、カシオはさらに意欲的でヘンなコンデジを投入する。「EX-TR100」である。

 なんといったらいいのかわからないが、薄くて単焦点で見た目はゴツいスマホみたいで、広角レンズを搭載して、カメラ部とディスプレー部がぐりぐりと回転して、簡単に言えば「自撮りメインのコンデジ」だ。

 これ、日本では全然売れなかったのだけど、ちょっとしたことで東アジア方面で火が付き「自撮り用カメラ」として大ヒット。「自拍神機」とまでいわれた。品不足となり、在庫があった秋葉原まで買いに来たという逸話があるくらい。

 その後、このシリーズは日本ではほとんど発売されなかったので(厳密にいえば一度だけ発売されたけど、海外からの観光客に買いあさられたという噂だ)見たことない人も多いだろうが、そういう製品があったのである。

公園にやたら膝に乗る猫がいたので、TR100で猫自撮り。「自撮り」がはやる前の話だ(2011年7月 カシオ EXILIM TR-100)

公園にやたら膝に乗る猫がいたので、TR100で猫自撮り。「自撮り」がはやる前の話だ(2011年7月 カシオ EXILIM TR-100)

 これがAndroidを搭載してスマホになったら面白いのに、と思った記憶がある。その後、中国や韓国製のAndroid機は自撮り機能に力を入れ、美肌処理も大きく進化している。

 普通のEXILIMシリーズは回転するディスプレーや持ちのいいバッテリー、自撮りデジカメで鍛えられたであろう「優秀な美肌処理」などを背景に通常進化。

 このシリーズは実にサクサク動いて使いやすくてよくできてはいたのだが、いかんせん、iPhoneを筆頭とするスマホの台頭、高級コンデジやデジタル一眼の間にはさまれ、通常進化ではつらくなる。

「EX-FR100」

「EX-FR100」

 そしてカメラ部とディスプレー部が分離してフリーアングルで撮れる「FR」シリーズを2014年に投入するなど挑戦は続けたものの、そのユニークさが受けいれられる前に、コンデジ市場の急激な縮小に耐えられなくなったという感じだろうか。

カメラ部が分離してワイヤレスで撮れる自由なカメラFR100のカメラ部を自撮り棒につけ、上に伸ばしてトタン屋根のあばらやの上で遊んでる猫たちを撮ってみた。まさか3匹もいたとは、の図(2015年11月 EXILIM EX-FR100)

カメラ部が分離してワイヤレスで撮れる自由なカメラFR100のカメラ部を自撮り棒につけ、上に伸ばしてトタン屋根のあばらやの上で遊んでる猫たちを撮ってみた。まさか3匹もいたとは、の図(2015年11月 EXILIM EX-FR100)

 かくして、ビジュアルコミュニケーションという新しい概念で「世界ではじめて液晶モニターを搭載してなおかつカメラ部が回転して自撮りもできる」デジカメを送り出したカシオのカメラ史を猫写真で振り返ってみるという考えてみたらよくわからん企画だったのだけど、ああカシオがデジカメという市場を開拓し切り開いたのだなあと思っていただければ幸いである。

「EX-ZR4000」

「EX-ZR4000」

 さて前ページの冒頭写真は、今一番気に入っているカシオのコンデジで撮ったもの。「EX-ZR4000」という超広角ズームを搭載したカメラである。これ、19mm相当からの超広角で、適当に持ち歩いて日常を記録するのにすごくいいのだ。しかも撮った写真をスマホに自動転送してくれる。

 現行機は「ZR4100」だけど、後継機はたぶん発売されないので、買うなら今のうちかも。

■Amazon.co.jpで購入


筆者紹介─荻窪圭


著者近影 荻窪圭

老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/


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