真ちゅう製定規に温かさ
竹尺へのオマージュを感じる
今回筆者が衝動買いした真ちゅうの竹尺は、同社がICHIREIブランドで製造しているものだが、「Cohana」というライフスタイル系ショップが自社のブランド商品の1つとして販売している製品だ。
中高年の人なら一度は見たことがあるであろう伝統的な30cm竹尺を彷彿とさせるデザインを採用し、定規という精密な製品に向き合う真摯な姿勢と少しの遊び心が同居したなかなか楽しい定規だ。
筆者のコレクションにある文具メーカー「ミドリ」の真ちゅう製15cm定規と比較すると、目指すところが大きく異なるのが分かる。
あくまで真ちゅうを使ったレトロ感覚の工業製品イメージの強いミドリの15cm定規に対して、真ちゅうの竹尺は過去の竹製のクラシカルな定規に対するオマージュと、金属を使用しながらも、人が使う道具としての暖かさを表現しようとしている風に見える。
定規中央の「星」の規則性が気になる
筆者の愛用しているかなり日焼けした竹製の古い30cm定規と真ちゅうの竹尺の2つを並べてみると、その類似性と差異がよく分かる。
多くの場合、30cm竹尺という定規は全長が確実に30cmで、目盛りの横に併記される数字の「0」の前や「30」の後に余分なスペースがないのが一般的だ。
竹尺以外の多くの30cm定規には、0の前や30の後に数mm程度の目盛りのない余白部分が存在する。
一方、竹尺は目盛りを読む基準として数字ではなく「星」と呼ばれる1つの赤い点や4個や5個の赤い点、それらの点や点を繋ぐ半円弧や円系のアイコンが5cmや10cm間隔で配置されているのが特徴的。
伝統的な竹尺ではなく、昨今の定規は長さに関わらず、当然のように数字を目盛りの付近に記載することが多く、どうしても目盛り位置に合わせて等間隔に寸法数字を配置しようとすると、最後の30cmの目盛り位置では、30の「0」の表記が目盛りより外側にあふれてしまう。
このため、大抵の寸法数字を目盛りに沿って表記している定規では、実際の長さより全長は長くなってしまう傾向がある。
それゆえ、定規の先を奥に差し込んで、深さや奥行きを測る際には、ゼロ位置より前にある数mm前後の余白による誤差を差し引かなければならない不便さを常に持っている。
真ちゅうの竹尺は、この目盛りを読む代わりに従来の30㎝竹尺とほぼ同じ星を定規の表面に等間隔に配置している。
一般的な30cm竹尺は、小さな赤い1つ星を3ヵ所(5cmを表示)、赤い4つ星を2ヵ所(10cmを表示)計5ヵ所配置している。
普通、両側に目盛りがある竹尺では、赤い4つ星が5つ星に増やされるのが一般的な法則のようだ。
真ちゅうの竹尺は両側に目盛りのあるタイプなので、赤い5つ星の表示形式を採用しているようだが、その1つがブランド名である「ICHIREI」の配置とカブり、本来5つ星であるべきところが1つ星になっているなど、1つ星と5つ星の順番や配置に明確な規則性がなさそうで少し残念だ。
筆者がタブレットPCの背面に貼り付けている竹尺イメージのマスキングテープも、そのあたりの伝統的な規則性は踏襲しているようなので、真ちゅうの竹尺もここのところはやはりオリジナルの竹尺のイメージを確実に採用して欲しいところだ。
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