筆者は昔から、自分が直接、商品企画に関わったモノを自腹で買ってしまうことがめちゃくちゃ多い。
一番最初の商品は、日本IBMが「JX」以来、再びパソコン市場に挑戦した時の最初の個人用パソコンである「IBM PS/55-5530Z」というデスクトップPCだった。
忘れてしまいたいほど高い値段だったが、自分が関わった製品だったので、即自腹購入した。
そしてその次の自腹購入は「PS/55note」、そして「ThinkPad 220」「同 230Cs」「Ultraman PC」「ChipCard」「Butterfly」「Chandra」などと、自ら関わった商品は、際限なくすべて買い続けてきた。
他社に移ってからもその悪癖はごく一部の例外を除いて今も続いている。
そんな筆者が、ここ数年以上ハマっているのは文具やカバン、ガジェットの世界だ。実は約10年ほど前から友人数名で「Thinking Power Project」という長い名前のモノつくりグループを結成している。
その中で、一番古くからやっているのは、下町のツバメノートとコラボしてやってるオリジナルデザインの大学ノート「Thinking Power Notebook」(以降TPN)だ。
さらにここ数年はその同じグループで、デュポンの「TYVEK」(タイベック)という不織布素材で全重量たったの200gのブリーフケースやトートバッグ、旅行カバンなども作っている。
10年前にはじめたTPNは、毎年売り上げの5%を、視覚障碍者の支援グループにモバイルPCのThinkPadとして寄贈してきた。
2017年末でちょうどその累計寄贈台数が100台を超えた。仲間内でそれを祝おうということで、この際、何か楽しい商品を作ろうということになり、3年ほど前から進めていた「Reboot Anytime」(開発コードネーム)という製品を記念プロダクトにあてようということになった。
Ctrl+Alt+Delキーを独立させて
持ち歩けるようにした「Reboot Anytime」
あくまで構想はペン回しや、スピナー、フィジットキューブと同じような手遊びの玩具の仲間内商品だった。
そう言われてしまうと読者諸兄には何のことかさっぱり理解不能だと思うが、Reboot Anytimeは1981年に「The PC」(IBMパーソナルコンピュータ)が発売された時から採用されていたReboot(Ctrl+Alt+Delのキーの同時押しで再起動)の仕組みをいつでも、どこでも、手のひらの中でも、簡単に実現できるジョークアイテムとして企画したモノだ(実際にCtrl+Del+Altキーを押して何かを再起動させる周辺機器ではない)。
どんなに精巧に作られたPCでもハードウェアやソフトウェアなど、何らかの理由でどうにもならないフリーズした状況は時と場所、場合に関わりなく発生する。
Rebootはこの最悪の環境を一気に解決してくれる、今なおを続くICT業界最強最大の“オマジナイ”のキーコンビネーションなのだ。
1981年にRebootの仕組みが標準的に採用されたIBM PCが登場するまでは、フリーズしたときには、すべての人がパソコンの電源プラグを抜いてまた差して対応していた。
机の下にもぐったり、机の上のディスプレーの奥のコンセントまで手を伸ばして……その面倒な作業を何度も何度もやっていたのだ。
Rebootキーが仕様として決められた後は、パソコンを操作するすべての人が、この複雑なキー操作を覚えて実行しなければパソコンは使えなかった。
今まで出荷されたIBM PCとその互換機、昨今のWindows PCやゲームPC、サーバーまでがまったく同じ仕組みでフリーズの泥沼から簡単に脱出できているのはこのRebootのおかげなのだ。
仲間内での冗談話だが、1981年以来出荷された互換機を含むIBM PC系のパソコンはきっと累積では数十億台以上、押されたRebootキーはきっと軽く500億回は超えるだろう。
そんな子供からノーベル賞学者、ハリウッドの大女優から大統領までが例外なく絶対に押したCtrl+Alt+Delキーのコンビネーションである“Reboot”を、ポケットに入るコンパクトな形にしたのがReboot Anytimeだ。
ストレスが多く、時には凹むことの多い、現代のビジネスシーンや生活シーンにおいて、フリーズしてしまったかたくなな心を一気にリブートするためのオマジナイとして考えたのがReboot Anytimeだ。
そして3年前に始めた構想をもう一度見直して、まずは身近にあるモノを使って手作りプロトモデルをこしらえてみた。
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