「いつまででも待っているから」と言われて
――国内でもeSportsの話題が多くなってきて、今回ルフスがオープンするわけですが、ここにいたるまでの過程を教えてください。
榎本 最初に強調したいのは「eSportsが流行ってきたからうちもやろう」というわけではないことです。サードウェーブは2002年に「うちはハイエンドのゲーミングPCだ」といって、GALLERIAのブランドを立ち上げました。そこからずっとゲームファンに寄り添ったビジネスをしてきており、これに時代がリンクしてきたと思っています。
――最近は初心者でも気軽に使い続けられるブランド「GAMEMASTER」を2016年に立ち上げ、さらに昨年は「GAMEMASTER CUP」も主催していますね。
榎本 GAMEMASTER CUPは今回のルフスと同時進行で企画したものです。まずは大会を開催し、その次にルフスのような施設を提供するという形で進めてきました。この大会には85チームの参加がありましたが、まだまだ伸びしろはあると思っています。
GAMEMASTER CUPはeSportsの中でも頂点に近い層を狙った企画ですが、よりカジュアルにPCゲームをやる人達に対してeSportsをどう広げていくかという第二フェーズが必要です。そのためのルフスだと考えています。
──榎本さんがサードウェーブでeSportsに関わろうと考えたきっかけは何ですか?
榎本 私がサードウェーブに誘われた理由は「eSportsを業界として本格的に取り組んでいきたい」が、「1社でできることは限られている」からです。これまで培ってきたパートナーシップやパートナーイズムの経験を「社内に継承」し、「社外のパートナーと一緒にeSportsを立ち上げたい」と考えています。
パートナーと一緒に市場を立ち上げ、「GALLERIAはいいよね」と言われるようになれば、その利潤をリターンできます。それがゲーマーなのか、コミュニティの仲間なのか、あるいは協会とか、大きく言うと国かもしれない……。いずれにせよ人や組織が一体になって「eSportsは面白い」という環境を作れれば、ユーザーの生活にも潤いがでるし、PCを使って感性も豊かになっていくのではないかと。
――その先にGALLERIAの販売増がある?
榎本 正直な話、慈善事業では成り立たないのでPCは売りたいですが、いちばん大切なことは、PCを使ってゲームをやりたいという「総需要」を増やすことだと考えています。楽しんでいただくユーザーやバックアップする協会がバリューチェーンで繋がって回っていくことが大事だと思います。代表取締役の尾崎はこれをエコシステムと呼んでいますが、eSportsのエコシステムを構築する一翼を担えれば面白い。「ぜひ一緒にやってみないか」と誘われました。
その際に驚いたのは「いつまででも待っているから」と言われたこと。普通エグゼクティブが動くときには年度や四半期などに合わせた回答の期日が設けられます。しかしサードウェーブには、それがなかったんです。さらに営業のトップとして入るのに数字の話がまったく出なかった。それよりも業界をこうしたいというビジョンであるとか、エコシステムを作りたいからそれを広げていって欲しいというような視座の高い話ばかりで……実際はそのほうが難しいです(笑)。本当におもしろいオーナーだなと思いました。
一般的には、オーナーが現場に介入するといろいろと弊害が出てくるのですが、尾崎は重箱の隅をつつくようなことはしない。逆に尾崎が部下をかばったり、部下の頑張りを言い訳したりするんです。そういう会社なので社内も活気がありますし、部下たちも優秀な人達がたくさんいて、いまはちょっとワクワクしています。