クアルコムはMWC 2018に出展し、同社の5Gへの取り組みなどを展示。2019年の商用サービスに向けて、クアルコムの5G関連技術がすでに準備万端であることをアピールしていた。
クアルコムがMWC 2018で特に力を入れていたのが、ブース中央に展示した「IODT」に関するコーナー。IODTはInteroperability Development Testの略で、スマートフォンメーカーとキャリアが相互接続テストを行なう「IOT(Interoperability Test)」に似ているが、こちらは基地局とチップセットの相互接続テストのこと。基地局に用いられるインフラ機器メーカーは、ファーウェイやエリクソン、ノキアなど数社あり、各メーカーの機器とクアルコム製のモデム・チップが5Gでの接続に問題が無いか確認しているわけだ。
ブースでの説明によると、大手基地局メーカーのほぼすべてと5Gでの「IODT」が完了しているとのこと。つまりスマートフォンメーカーは、クアルコム製のチップセットを採用すれば、どの基地局とも安定して5Gで通信できるの安心して採用できる。こういった取り組みは2016年ごろから行なわれており、2017年にはスマートフォンタイプの5G対応リファレンスモデルを作成し、テストを続けてきたとのこと。
また、5Gは28GHzなどミリ波、もしくはそれに近い周波数帯を利用するため、エリアが狭くなり実用的ではないのではという懸念もある。クアルコムはミリ波採用に積極的なメーカーで、その懸念を払拭するための展示も用意。既存の4G基地局に5Gの基地局を設置した場合のフィールドテストで、フランクフルトやサンフランシスコの街中で行なったテストでは、既存エリアの65%をカバーできていた。
しかしながら、いわゆるプラチナバンドなどを利用する4Gと比べると、建物の中や大きなビルの影などはエリアから外れてしまい、エリアの展開という点では基地局の設置に工夫が必要なようだ。そこで重要になってくるのが、4Gとの共存だ。
クアルコムの説明によると、5Gのエリアが65%でも、そこにユーザーの通信が集まれば、4Gの混雑が緩和されるため通信状況は改善される。5Gは4Gの置き換えではなく、並立してどちらのサービスも活用していくことになる。
そこで重要となるのが4Gでの通信だ。5Gで数百Mbpsでの通信ができていたのに、4Gに切り替わった際に数Mbpsにスピードが落ちてしまうのでは使い勝手が悪い。クアルコムは5Gと4Gの通信品質に大差がないよう、4Gの通信技術も強化している。
ブースでは「Snapdragon X24 LTE Modem」を使った4Gのデモも展示。ここでは5波をまとめたCA(キャリアアグリゲーション)での実験を行なっており、最大2Gbpsでの通信が可能となっている。5Gと強化された4Gと両方とも活用することで、より高速で快適なモバイル通信が実現できるわけだ。
そのほか5Gをモバイル通信だけでなく、低遅延という特性を生かして工場などのインフラ用ネットワークに利用するデモも展示。従来工場などの通信インフラは精密な動作が必要なため、遅延の少ない有線を使うのが一般的だ。ただし、有線の場合は工場内にケーブルを数多く配線する必要があるためコストがかかり、工場内のレイアウト変更も容易ではない。その点5Gなら最大で1ミリ秒という低遅延なため、有線接続と置き換えても問題ないレベルを実現している。
クアルコムは「来年のMWCでは、すでに5Gをスタートしているキャリアも出てきているでしょう」と語っており、2019年の商用化スタートに向け準備万端といった様子。MWCではファーウェイが5G対応のルーターを発表。今後はどのスマートフォンメーカーが世界初の5G対応端末を発表するかなど、興味は尽きない。まさに5G夜明け前といった状況だ。
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