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最新パーツ性能チェック 第226回

ZenとVegaが合体した「Ryzen G」は低予算自作における革命だった!

2018年02月12日 23時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラ ハッチ

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 それでは今回の検証環境を紹介しよう。Ryzen Gシリーズの検証環境はAMDから送付された検証キットをそのまま使用している。そして比較用に前世代のAPUからA12-9800E、そしてインテル製CPUはCore i3-8100およびCore i5-8400、GeForce GT 1030搭載カードを用意した。

 また、Ryzen GシリーズとCore i3/i5のメモリーは検証キットに入っていたDDR4-3200をそのまま使用しているが、メモリークロックは基本的に各CPUがサポートする上限とした。即ちRyzen GシリーズはDDR4-2933、Core i5-8400はDDR4-2666、Core i3-8100はDDR4-2400となる。

 さらに、検証キットに含まれていたAM4マザーでは開発版BIOSの関係か、A12-9800Eをブートさせることはできなかったため、別途マザーボードとメモリーを用意している。ストレージ、電源、OS、電力計はRyzen G環境と同じモノを流用。

【Ryzen G環境】
CPUAMD「Ryzen 3 2200G」(3.5GHz、最大3.7GHz)、AMD「Ryzen 5 2400G」(3.6GHz、最大3.9GHz)
マザーボードGIGABYTE「GA-AB350N-Gaming WIFI」(AMD B350)
メモリーG.Skill「F4-3200C14D-16GFX」(DDR4-3200 8GB×2、DDR4-2933として使用)
ストレージIntel「SSDPEKKW512G7X1」(NVMe M.2 SSD、512GB)
電撃SilverStone「SST-ST85F-PT」(850W、80PLUS Platinum)
OSWindows 10 Pro 64bit版(Fall Creators Update)
電力計ラトックシステム「REX-BTWATTCH1」
【AMD Aシリーズ環境】
CPUAMD「A12-9800E」(3.1GHz、最大3.8GHz)
マザーボードMSI「X370 GAMING PRO CARBON」(AMD X370)
メモリーCrucial「W4N2400BMS-8G」(DDR4-2400 8GB×2)
【インテル環境】
CPUIntel「Core i5-8400」(2.8GHz、最大4GHz)、Intel「Core i3-8100」(3.6GHz)
マザーボードGIGABYTE「Z370 AORUS Gaming 7」(Intel Z370)
グラフィックスASUS「GT1030-SL-2G-BRK」

 それでは定番ベンチマークから見ていこう。まずはCPUの力比べでは定番の「CINEBENCH R15」だ。

「CINEBENCH R15」のスコアー

 マルチは速いがシングルは遅め、というのはRyzen 1000シリーズで明らかになった弱点だが、残念ながらRyzen Gでもその傾向は同じだ。4コア8スレッドのRyzen 5 2400Gは6コア6スレッドのCore i5-8400よりCPUのパフォーマンスは下だ。

 だがRyzen 3 2200GのマルチコアテストのスコアーとCore i3-8100のそれはかなり良い勝負をしている。だがA12-9800Eのスコアーの低さを考えると、Ryzen GでAPUは爆発的に進化したといえるだろう。

 続いては総合性能をチェックする「PCMark10」を利用する。テストは全ワークロードを実行する“Extended”テストを実施した。総合スコアーのほかに、テストグループごとのスコアーも比較しよう。このテストではGPUも使われるため、インテル環境ではGT 1030カードを装着した状態(“w/GT 1030”表記)と、内蔵GPUのみで使用した状態(“w/iGPU”表記)も計測している。

「PCMark10」Extendedテストのスコアー

「PCMark10」Extendedテスト内のテストグループ別スコアー

 GT 1030を使用した場合はGPUの性能よりもCPUの力比べの側面が出てくる。即ちCINEBENCH同様、CPUのパフォーマンスの良いCore i5-8400がトップだが、Ryzen Gシリーズも大差ないスコアーを出せている。一方Core i5/i3で内蔵GPUだけを使った場合は、Ryzen Gシリーズは圧倒的優位に立つ。

 さらにテストグループ別スコアーを眺めてみると、オフィス系アプリでのパフォーマンスを見るProductivity、写真編集やCGレンダリングといった性能をみるDigital Contents Creationテストで良いスコアーを出している。Core i5/i3の内蔵GPU環境で総合スコアーが低いのは、Gamingのスコアーが足を引っ張っているからだ、という点も2番めのグラフから確認できたはずだ。

 それでは本命のグラフィック周りのパフォーマンスをチェックしてみよう。まずは定番「3DMark」を使用する。

「3DMark」のスコアー

 今回は内蔵GPUがメインなので、テストは軽めの“Sky Diver”と“Fire Strike”を中心に攻めてみた。どのテストにおいてもCore i5-8400とGT 1030の組み合わせがトップであることは間違いないが、Ryzen 5 2400Gは「CPU内蔵GPUだけで」この組み合わせに肉薄している点に注目。

 勝つことはできなかったが、数千円安い予算でほぼ同等の性能を、よりシンプルなパーツ構成で得ることができるというのは、非常に注目すべき点であろう。さらに言えば、Ryzen 5 2400GならばCore i3-8100とGT 1030の組み合わせを超えることができる。

 残念ながらRyzen 3 2200GはGPUのスペックが低いぶんスコアーも低いとしか言いようがないが、それでもA12-9800Eに比べると格段にパフォーマンスが高い。

 続いては「VRMark」のスコアーも比べてみよう。スペック的にVRに適した製品ではないことは明らかだが、一応確認しておきたい。

「VRMark」のスコアー

 今回用意したどの構成であっても、一番軽いOrange Roomの平均fpsは41fps未満であった。よってVR不適であるのは言うまでもないが、注目して頂きたいのは各テストごとのスコア傾向の違い。OrangeおよびBlue Roomは概ね3DMarkと同傾向だが、唯一DirectX12ベースであるCyan RoomだけはRyzen 5 2400Gが首位に立ち、Ryzen 3 2200GもCore i5-8400とGT 1030の組み合わせに匹敵するスコアーを出している。GPUのベースがVegaだけに、よくチューニングされたDirectX12での描画性能はかなり良好なようだ。

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