1万円台の11ac無線LAN APに加え「Meraki」や「Spark Board」なども販売開始
中小企業向け「Cisco Start」で新製品投入や値下げ、体制強化
2018年01月18日 07時00分更新
シスコシステムズは1月17日、中小企業向けブランド「Cisco Start」シリーズの製品拡充を発表した。1万円台前半の11ac対応無線LANアクセスポイントを新製品として投入したほか、「Cisco Meraki」「Cisco Spark Room Kit」などの既存製品群もStartの販売ラインアップに追加した。同日の発表会では、Cisco Sparkの業績や戦略、ブランド強化、販売体制強化などの施策も説明している。
製品ラインアップを拡充、既存製品群では10~20%の価格引き下げ
Cisco Startシリーズの新製品として、802.11ac wave 1対応のエントリー無線LANアクセスポイントであるWAP125が追加された。11nに対応した従来モデル「WAP131」の後継機種にあたり、WAP131よりも安い「1万円を少し超えたくらいから」(同社 専務執行役員 パートナー事業統括の高橋慎介氏)の市場想定価格となっている。
WAP125は、複数SSIDやゲストアクセス(ゲストWi-Fi)のキャプティブポータル機能、802.1x認証、QoS、不正アクセスポイント検知など、企業向け無線LAN製品に求められる機能を備えている。設定は日本語GUIから簡単にできるほか、管理ツール「FindITネットワークマネージャ」を通じて、リモート拠点に設置したWAP125なども含め一括管理できる。
さらに、これまでCisco Startのポートフォリオには含まれていなかったMerakiシリーズ製品やクラウドベースのサーバー管理ツール「Cisco Intersight」、Spark Board、Spark Room Kitの各製品も追加し、Start販売パートナーが取り扱えるようにした。
これに加え、既存のCisco Startシリーズネットワーク製品すべて(Merakiシリーズを含む)の卸値を改定する施策も発表した。具体的には、市場想定価格で従来比10~20%程度安くなるよう卸値を引き下げるという。これにより、たとえば発売時点(2016年9月)で「4万円台」だったCatalyst 2960Lスイッチは「3万円台」になるという。
地域別の営業体制を構築、さらに産業別ソリューション提案を強化
同日の発表会では、中小企業市場に向けた「ブランドの強化」、全国各地域と業種を網羅する「販売体制の強化」という2つの戦略についても説明がなされた。
ブランド強化においては、中小企業層にもITの取り組みをわかりやすく、親しみやすく伝えるために、昨年発表したキャラクター「Cisco5(シスコファイブ)」をCisco Startの「コンシェルジュ」として起用する。さらに、アスリートアンバサダー契約を締結した卓球の石川佳純選手、張本智和選手の競技活動をサポートすることで、シスコのブランド価値を高めていくとしている。
また、今年度(2018年度)がスタートした昨年8月から地域別の営業体制も展開し、各地域に強い事業基盤を持つ地場のSIパートナーと協力しながら、各地域の中小企業および公共系顧客に対するCisco Startの浸透を図っている。
さらに「事業推進本部」を新設し、各地域パートナーと共に産業別ソリューションを提案していく取り組みもスタートしている。この取り組みでは、Merakiシリーズと連携できる各産業向けアプリケーションのエコパートナーも拡充している。
同社 常務執行役員 公共・法人事業統括の大中裕士氏は、中小企業市場においては従来の販路とは異なり、IT担当者も存在しないケースが多く、「地場のSIer」が顧客の相談相手になっていることから、こうしたパートナーとの協業強化が案件獲得の鍵を握っていることを説明した。
昨年度の売上は「237%」もの高い伸び、予想外の顧客層拡大も
Cisco Start製品の売上額は、2016年度から2017年度で237%もの急成長を遂げている。高橋氏は、「シスコジャパンは昨年度、2ケタ成長を記録したが、その下支えをしたのがCisco Startシリーズだ」と語る。
こうした急成長の要因としては、「製品ポートフォリオの拡充(特にCatalystスイッチの投入)」「顧客層の拡大」が挙げられるという。2015年の立ち上げ時には「従業員100名以下」規模の企業をメインターゲットとしていたが、実際の売上比率を見ると、100名以下規模の顧客企業は43%にとどまるという。予想に反して、より大きな規模の中小~中堅企業(100~1000名規模が42%、1000名以上規模が15%)のニーズもつかんだかたちだ。
高橋氏は、これまでローエンド領域では競合他社製品を扱っていたパートナーが、Cisco Start製品が出てきたことで、ハイエンドからローエンドまで一気通貫でシスコ製品を扱うようになった結果だと分析した。
さらに今後、中小企業においても「働き方改革」、特に生産性向上に直結するIT投資が必須となるため、Cisco Startのネットワーク、セキュリティ、コラボレーションの各製品群を通じて顧客に解決策を示すことで、「まだまだCisco Startの市場を拡大できる」との考えを示した。
また大中氏は、中小企業層に特有のニーズとして「コンシューマー向けのネットワーク製品を自分たちで入れてみたものの、利用が拡大するにつれて、やはり企業レベルの機能が必要となり、行き詰まった顧客が(Cisco Startに)懐を開いていただいている」と説明した。