意外と言っては失礼だが、この夏に発売されたフェンダーのBluetoothスピーカー「NEWPORT」が良かった。「小型スピーカーとは本来このようなものです」と言われているようで、新鮮な驚きでもあった。
Bluetoothスピーカーはすでにコモディティー化していて、どこが作っても大きな差は見られない。標準的な設計は、おおむね幅20cm程度の筐体に小径フルレンジユニットをステレオで配置し、不足する低域をパッシブラジエーターとDSPで増強。
結果として「サイズを超えた重低音!」としか表現しようのないキャラクターの製品が横溢することとなり、あとはデザインの好みと値段で選べばOKですね、という世界になっていた。なにしろ価格も数千円からスタートである。ブリスターパックで売られているイヤフォンと同じで、安いものを買っても、あればかならず役に立つ。しかしモノとしてのおもしろみは特になくなっていた。
そこにエレキギターで有名なフェンダーから、Bluetoothスピーカーが登場。バッテリー駆動で小型の「NEWPORT」と、120Wの大パワーを誇る「MONTEREY」の2機種だ。
今回は小さい方のNEWPORTを取り上げるのだが、税込価格で2万6784円。はっきり言って高い。BOSEだって2万円台前半なのに。
つまり、これはFenderのロゴを貼り付けただけのマニア向け製品なのだな。そう高をくくっていたのだが、冒頭で申し述べたとおり、新鮮な小型スピーカーに仕上がっていたのだった。
「シルバーフェイス期」の要素でデザイン
フェンダーと言えばエレキギターやベースが有名だが、実はそれにも増して重要なのはギターアンプだ。なにしろ、あのマーシャルだって最初はフェンダーのアンプをコピーして出発しているくらいだ。フェンダーが楽器用アンプを作っていなかったら、もしかすると現在のロックサウンドは成立していなかった。歴史的にはそれくらい重要なポジションにある。
NEWPORTは、そうしたフェンダーのギターアンプをイメージする要素がつぎ込まれている。ヘアラインシルバーのパネルにブルーのラインが引いてあるのは、TWIN REVERBやDELUXE REVERBのような、いわゆる「シルバーフェイス」期のアンプにならったものだろう。電源を入れるとブルーのインジケーターも点灯するし、ノブの形状はいわゆるハットノブ(正確にはWITCH HATと言うらしい)で、わかる人にはわかるフェンダー要素が詰め込まれている。
でも、小型のスピーカーなら、旅行カバンのようにツイード生地を張り込んた「ツイード・アンプ」の意匠も可愛らしくて良かったのではないかと思う。だが、あちらはカッコよく歪むイメージなので、オーディオ用スピーカーとしては敬遠されたのだろうか。