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最新パーツ性能チェック 第219回

AMD派待望の「RX Vega」はハイエンドGPUにおける周回後れを取り戻せるか?

2017年08月21日 11時00分更新

文● 加藤勝明 編集●北村/ASCII編集部

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「CU(Compute Unit)」から
「NCU(Next Compute Unit)」へ

 Vegaも系譜的にはGCN世代ではあるが、内部の設計や構造にかなり手が入っている。ストリーミングプロセッサー(SP)16基を4つ束ね、キャッシュなどの回路を付けた「Compute Unit」のスケールでどんな製品になるかが決まる。

 だがVegaは従来のCUを改善した「NCU」を採用することで、従来よりもDirectX12への対応度や16bitのデータの計算処理性能、さらにはパイプライン深度を抑制することで高クロック動作への適応度を高めている。GCNの正統進化系とは言うが、Vegaの進化は従来のGCNよりも皮のムケ方が激しい進化といえるだろう。

Polaris世代のGPUと比較すると、VegaはDX12への互換性がさらに高くなった、という意味の表。今まで非対応だった機能にも対応した……というのが売り

GPU内の処理は32bitデータで扱われることが多いが、精度的に16bitで十分なことも多々ある。Vegaが持つRapid Packed Mathという仕組みを利用すれば、16bit演算を2倍の効率で行うことが可能になる

Packed Mathや高クロック対応などがVega世代のGPUの売り。特にRapid Packed Mathを上手く使えば、最大15%程度の処理性能向上が見込める……とAMDは力説する

HBM2とメインメモリーが合体する
「HBCC(High Bandwidth Cache Controller)」

 Vega 56/64はコンシューマー用GPUとしては始めてHBM2メモリーを採用しているが、このメモリーは(AMDによれば)VRAMではなく“広帯域キャッシュ(High Bandwidth Cache)となる。とはいえゲームなどの処理から見れば、VRAMと扱いは変わらないので実質的にVegaのVRAM搭載量は8GBである、といえる。

 Fury X世代のHBM1と比べ、メモリーバス幅は半分になったものの、2チップで8GB(Fury Xは4チップで4GB)という大容量なものになっている。しかし、現在のGeForce系ハイエンドでは11GBや12GB搭載されている製品がある点からすると、Vegaの8GBというのはなんとも心細い気もする。

 だがここで“広帯域キャッシュ”という言葉が活きてくる。Vegaではシステムのメインメモリーの一部領域をVRAMに組み込めるのだ。多用するデータのみHBM2側に置いておき、不要なデータはマザー側のメインメモリー側に置く。これならVRAM多量使用時に速度のペナルティーを受けにくくなる。

メインメモリー中に、GPUを使う処理が6つあった時(上)、HBM2+HBCCなら6つの処理に必要なデータを全て置くことができる(右下)が、従来型のGPUではデータの塊をまるっとVRAMに置くことができないため、4種類のデータしか置けないのだ

 この“どの程度メインメモリーを割り当てるか”については「Radeon設定」内で指定できる。割り当て量を設定してもシステムから見える空きメモリーに変化がないことから、設定を有効にした瞬間メモリー領域が分断されるのではなく、広帯域キャッシュが溢れはじめた段階で確保される設計であると推測できる。

 HBCCのメモリー空間は最大512TBまで確保できるので、VegaのVRAM搭載量は“実質無限”といったところだが、現実問題としてゲーミング用途ではよほど厳しい設定をしない限りは8GBを使い切るケースはレアだ。ゲーマーではなくGPUで汎用計算をさせたい人のための機能といってよい。

Radeon設定で「HBCC Memory Segment」をオンにすることでHBCCは本来の挙動となる(オフなら普通のVRAMとして動作)

メインメモリー16GB搭載マシンでは最大15.9GBまで割り当てを指定できたが、最大値まで指定したからといって、すぐにメインメモリーの空きが減るわけではない

 また、ハードウェア的にはHBM2を制御するコントローラー「HBCC」はZenアーキテクチャーで採用されたInfinity Fablicを用いてGPUコア部分と連結される点も設計的に注目すべき点だろう。HBCCやPCI Express、ディスプレー出力エンジンなどとGPUコアが結びついているが、これを拡張してCPUコアと連結すれば……Zen+Vegaな第8世代APU“Raven Ridge”のできあがりだ。

Vegaのブロック図。HBM2周りの回路は図中下に飛び出している部分となる。GPUのメインブロックとは別になっており、Ryzenなどにも使われているInfinity Fablicで接続されている。PCI ExpressのコントローラーもInfinity Fablic経由で接続されている(らしいが、図の描き方が間違っていると思われる)

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