本体外周にあるボタンは耳に負担をかけない
小型イヤフォンとしては、操作が楽な点もいい。写真の黒い突起部分がマルチファンクションボタンで、ハウジング外周部に付いているので「つまんで」操作できる。このため耳に不自然な負担をかけることがない。操作はワンクリック、ダブルクリック、2秒長押し、5秒長押しの4種。これで音量や選曲操作、通話など操作する。
大抵のトゥルーワイヤレスイヤフォンは、このボタンがハウジング側面に付いているおかげで、ボタンを押す度にイヤフォン全体を耳に押し込む形になる。あれは耳を圧迫するようで、あまり気持ちのいいものではない。
本体が軽いこと、そして先細りのハウジングの形状もあってフィット感は上々。装着安定性を上げるためのスタビライザーも付属するが、よほど激しい運動をするのでもなければ、必要ないように思えた。シリコン製イヤーピースとスタビライザーがSMLそれぞれ各1ペアずつ付属するほか、COMPLY社製のフォームチップ(600シリーズ)もSMLサイズ各1ペアずつ付いている。
見た目を上回る低域と音場感の良さ
再生能力については、まず左右信号の位相差からくるフェージングが感じられないのは立派。ここがダメだとステレオ再生装置として評価しづらい。惜しいのは、動画再生時の映像と音声のズレ。MVをストレスなく鑑賞できるレベルまでには、あともう一歩というところ。
APOLLO 7sで追加された3Dサラウンド機能は、同ブランドのMUSE 5に搭載されたものと同等のようだ。効果は「3Dノーマル」と「3Dワイド」の2種類。これをマルチファンクションボタンの4連打で、3Dノーマル→3Dワイド→サラウンドオフを循環的に切り替える。
効果の程はと言えば、あってもいいけどなくても全然構わない程度のものでしかない。トゥルーワイヤレスとしては解像感が高く、DSPがなくても立体的な音場感が楽しめるところに、このモデルの良さがある。小型軽量の本体から想像するよりは、はるかに低域のレスポンスは豊富で、音場感のリアリティーを増す方向に働いている。
ハイエンドモデルを求めるようなユーザーは、おそらく3Dサラウンドをオフで使いたがるのではないか。
同じ5.8mm径のドライバーを使っている同ブランドのMUSE 5と比べてみると、低域がややタイトなので、相対的に中高域の成分が気になる場合もある。が、イヤーピースを付属のコンプライに交換すると解決する。フォームチップが高域の成分を吸収し、低域の音圧感を補強してくれるので、うまくバランスが取れる。付属品として3サイズも付いてくるということは、メーカー側でもこれを試してくれということだろう。
旧モデルも含め、APOLLO 7sがハイエンドたる所以は、もちろん価格だけではない。Bluetoothデバイスとして基本性能が高く、音質も犠牲にしないイヤフォンが、このサイズと質量で成立しているところ。その点で同価格帯にライバルが存在しなかった。いち消費者としては、そろそろライバルも現れて欲しいところだが、果たして?
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著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ