ハンデを感じさせない音質
左側がプライマリー側。右側の電源を入れなければ左側単独でも使える。側面のロゴマーク面がマルチファンクションボタンで、再生、停止、着信などの操作ができる。
先にも触れたがドライバーは直径5.8mmと小型。だがうまくチューニングされているようで低域の再生能力は侮りがたい。それも無理にブーストしたウソっぽさや、平板な感じを与えず、ダイナミックレンジの広さを感じられる。
カナル型にありがちな中高域のピークやディップもよく抑えられている。全体の帯域特性も、底づき感のない低域から再生限界の上限までスムースにつながって、耳障りなところがない。オーディオ的な再生能力は、トゥルーワイヤレスのハンデを感じさせない。
ただ、3Dサラウンドの効果だけは大したことがない。イヤフォン独特の頭内定位をある程度緩和できるので、それが嫌な人には試してみるべきと思うが、3Dサラウンドをオフにしたほうが解像感があって好ましい。
ちなみにこの3Dサラウンド機能、デフォルトでオンになっている。切る場合は、短いタイミングで4回マルチファンクションボタンをプッシュし続けなければならない。
AirPods対抗の本命か?
惜しいのは動画再生時の音ズレだ。MVなどの視聴ではプレイヤーの手さばきと音が合わないことにストレスを感じる。が、欠点らしいものはそれだけで、電波に関わる部分で不満を感じる場面はなかった。
電波状況が変わる場面ではドロップは起こるが、ほかの機種に比べれば頻度は少ない。ステレオ音像が揺れ動くイヤなフェージングも気にならなかった。このあたりの性能で満足できるものは、まだそれほど多くない。
価格もなかなかいいところを突いている。発売当初の今年2月は2万円前半だったが、いまは税込で2万円を切る。国内代理店のバリュートレードによれば、円高差益還元による値下げとのことだが、これでAirPodsと同価格帯となり比較しやすくなった。
AirPodsも扱いやすく優れた製品だが、もしMUSE 5と比べて悩んでいるなら、カナル型ならではの遮音性、そして低域の再生能力で、MUSE 5は圧倒的に優れている。この2点が最優先なら、迷う必要はないのではないか。
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ERATO MUSE5 [Black]ERATO
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ
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