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1万円で高音質、特殊防水の完全ワイヤレスイヤフォンが面白い

2017年05月06日 12時00分更新

文● 四本淑三

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高音質コーデック対応で音質は格段に向上

 少し前までのトゥルーワイヤレス機には、左右チャンネル間の位相のずれから音像が動いて定位が安定しないという問題がありました。また伝送経路の複雑化で、トゥルーワイヤレス機は通常のBluetoothよりも信号の遅延が大きくなりがちなため、動画再生時に映像と音声が大きくズレるという現象もありました。

 こうした問題も、最近の低価格なトゥルーワイヤレス機では解消されています。もちろんVA-BH001も、この点は問題ないです。絶対的な信号の遅延は存在するので、ゲームや音楽の打ち込みには向きませんが、こと動画再生に限れば映像と音声は揃って再生されるので、視聴にストレスを感じるようなことはありません。

 さて、こうしてやっとオーディオ機器として評価できる土台に立ったわけですが、当然のことながら5000円台のトゥルーワイヤレス機に比べると、音質は格段に向上しています。

 低域に寄った特性なのは確かですが、ちょっと迫力があっていいね程度の音圧で、ほかの帯域を邪魔するほど強調されてはいません。適当な解像感は確保されているので、複雑で速いベースラインや、素早いキックのアタックとリリースなども、ほかの音に埋もれず聴き取れます。

 なによりいいなと思えるのは、高域の特性です。その理由はBluetoothのオーディオコーデックにもあるはず。従来製品のほとんどが標準的なSBCだったのに対し、先にも述べましたがVA-BH001は高音質コーデックのAACやaptXに対応しているからです。ハイエンドが足りずにカサついた印象になってしまうボーカルの帯域も、十分な情報量で再生できます。

 全体的な帯域のバランスもよく、ステレオで音がうまく鳴ればよしとしてきた従来のトゥルーワイヤレスの基準から一歩踏み出した感があります。もはや左右独立というだけではウリにならないので、この先、どうやって差別化するかと言えば、やはり音質でしょう。この点はほかのメーカーにも期待したいところです。

問題はバッテリーの持ち時間

 VA-BH001で問題かなと思うのは、バッテリーの持続時間が短いこと。これはスペックから想像できていたことですが、耳から外して放っておくと、知らない間にバッテリーが切れていてガッカリする程度に短い。

 というのも、音楽を聴いているつもりはなくても、スマホを操作するたびになにかしら音が鳴っているわけです。たとえば、Facebookで「いいね!」を押すたびに「コポッ」と音が鳴り、そのたびにイヤフォンのオーディオ再生機能が起動してバッテリーを消耗させている。

 防ぐにはスマホ側で音が出ない設定にするか、イヤフォンをオフにすればいいわけですが、ヘッドセットとして使うのであれば電源を切るわけにもいきません。そもそも待機時間が50時間しかないので、スマートフォンとペアリングして2日経つとバッテリーは切れている。待機時間はせめて100時間を超えてほしいものです。代わりに、充電しやすいデザインになっていると考えればいいわけですが。

 もうひとつ難を言うと、使用中はハウジング外側のLEDインジケーターが青く点滅します。安いトゥルーワイヤレス機はどれもそういう仕様なので、VAVAだけが悪いわけではないのですが、満員電車に揺られて移動する我々シャイな日本人には、結構恥ずかしく思うヤツもいるんだぞ。そう申し上げておきたい。

 しかしながら新しいカテゴリーゆえ、製品デザインという点ではまだ各メーカーとも手探りの状態です。そこにEARINからAirPodsまでの流れとはちょっと違う、新しいアイデアを持ち込んだところに、VA-BH001のおもしろさを感じています。

 ギリギリ1万円を切る価格、カバーなしでも防滴を実現した充電ポートや、スタビライザーなしで装着安定性を確保する斬しい手法、そしてAAC/aptX対応で高音質を実現しているという点で、ワンランク上の納得感は十分以上に感じられる製品です。



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

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