四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第151回
Bluetoothの限界と将来にイヤフォンの未来はある?
尻にスマホはダメ、完全ケーブルレスイヤフォン「EARIN」開発者語る
2016年03月13日 12時00分更新
「EARIN」を開発したスウェーデンのEpickal ABの創業者の一人、ペア・ゼンストローム(Per Sennström)氏が来日し、3月9日にプレス向けのプレゼンテーションが行なわれた。その際に短時間ながら単独取材の許可を得たので、実際の製品で気になっていた点を聞いてみた。
EARINは左右ユニット間のケーブルをなくした、完全ワイヤレスのBluetoothイヤフォンで、開発にあたってはKickstarterで資金調達を行ない、目標額の5倍を超える97万2594ポンド(約1億5700万円)を集めたことでも話題になった。
昨年末から日本国内でも市販が始まり、価格は3万2140円と決して安くはない。にも関わらず、価格.comの「ヘッドホン・イヤホン人気売れ筋ランキング」で、現在(集計期間は2016/03/04 ~ 2016/03/10)2位につけている。国内代理店のモダニティ・岡村 健治氏によれば「かなりのバックオーダーを抱えている状態」であるという。
人気の理由は、モバイル用イヤフォンの未来像を端的に形にしながら、十分実用に耐えるデザインが与えられていることだろう。
まず驚くべきは、まずバッテリーやレシーバーなどの基板を収めながら、片側3.5g、直径14.5mm、長さ20mmというサイズにまとまっている点。これは通常のハイブリッド型イヤフォンと同程度のサイズだ。
そして小型化によるバッテリー容量の制約を回避するデザインもそうだ。EARINにはバッテリー内蔵の収納カプセルが同梱され、非着用時にイヤフォンを収納しておけば、カプセル内蔵のバッテリーから充電し続ける。そのため、ユーザーはバッテリー切れを意識しなくて済む。
しかし、技術的に避けられない課題も残る。通常のBluetoothイヤフォンでは、左右を接続するケーブルがアンテナの役割を果たしているが、小さなハウジングにアンテナを収めなければならないEARINは、この点でまず再生機器との接続にハンデを負っている。
さらに一対一でしかデバイスとの接続ができないBluetoothを使いながら、左右のイヤフォンへ信号を分配しているために、左右ユニット間の接続にも問題を抱えている。
この日のプレゼンテーションでも、筐体の小型化とアンテナの受信感度については、かなりの試行錯誤があったことが明かされたが、実際の製品で気になった点も、まさにそこだった。

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