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完全ワイヤレスは素晴らしい、が、音像揺れが気になる

完全ケーブルレスBluetoothイヤフォン「EARIN」に見る革新と課題

2016年03月06日 12時00分更新

文● 四本淑三、撮影● 篠原孝志(パシャ)

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 左右ユニット間のケーブルを廃した、完全ワイヤレスなBluetoothイヤフォン「EARIN」が、2015年末より日本国内でも販売されています。価格はヨドバシ.comで3万2140円。

 EARINは、スウェーデンのEpickal AB社がKickstarterを使って開発資金を募り、目標額の17万9000ポンド(約2900万円)を大きく超える97万2594ポンド(約1億5700万円)を集めたことでも話題になった製品です。

 通常のBluetoothイヤフォンは、スマートフォンからイヤフォンまでの間がBluetooth接続。ワイヤレスと言いながら、左右のイヤフォンユニット間は有線接続が普通です。もしワイヤレス原理主義者のような方がいらっしゃるなら、これはもう許しがたい構造なわけです。ワイヤーあるじゃん、と。

 実際、この左右ユニットをつなぐケーブルはうっとうしい。首の後に回しても首に触れる、さりとて前に回せば識別票を付けられた牛のような気分に。EARINには、そうした人としての尊厳を傷付けるケーブルがありません。そこが先進的なポイント。

 しかしながら、人の尊厳は、そのへんに無料で落ちているものではありません。常に我々の努力によって勝ち取る以外にない。当然ながら、EARINにも難しい技術的課題が立ちはだかっているはずです。

 それをどのように解決しているのか、実際に使って確かめることにしました。

積層紙を使ったパッケージで、適当な重さと質感で、シンプルながらも高級感を演出

小型化と同時にバッテリー持続時間も解決

 ハウジングは長さ20mm、直径14.5mmの円筒形で、片側のユニットの重さは3.5g。驚くべきは、まずこのサイズに収まっていることです。

 スマートフォンと接続するのは左ユニットですが、そこから信号を右ユニットへ分配する仕組みのため、左右どちらにもレシーバ、アンプ、バッテリーを内蔵しています。

 次に感心するのが、バッテリー周辺の問題です。ハウジングを小型化すると、バッテリーも小さくせざるを得ず、そのしわ寄せは持続時間の短さとして表れます。実際、EARINのバッテリー容量は60mAhで、3時間も持ちません。ただ、実用上それでも困らない工夫がこの製品の素晴らしいところ。

 まず、EARINの充電は、付属のアルミ製カプセルに装填することで行ないます。EARIN本体側面のロゴマークが接点になっていて、カプセル側の電極に接触すると通電する仕組み。ロゴマークのデザインが実際の機能を持っているという点に、まずグッと来ます。

本体側面には「e」を表す同社のロゴ。これが充電用の電極です

付属のカプセルにEARINを収納した状態。カプセルの重さは42g、サイズは長さ95mm、直径21mm。ポケットに入れておける大きさ

 そして、次にグッと来るのが、このカプセル自体にも、600mAhのリチウムイオンバッテリーを内蔵していることです。いわばEARIN専用のモバイルバッテリーで、バスパワーを確保できない場所でも本体を充電できる。音楽を聴かないときは、必ずこのカプセルに戻すようにすれば、黙っていても充電されているわけです。

 なおフル充電されたカプセルからは、EARIN本体を3回リチャージできます。そして家に帰ったらEARINを収納した状態でカプセルにUSBケーブルを接続すれば、EARIN、カプセルともに充電されていると。

電源供給用のUSB端子はmicroUSB。カプセル、EARIN本体ともに、フルチャージに約75分かかります

 かつてのソニーのカナル型Bluetoothイヤフォン「XBA-BT75」にも、バッテリー内蔵のキャリングケースが付属していて、収納中に充電できる仕組みでした。それよりはるかに使いやすく、コンパクトにまとまっているのは素晴らしいと思いました。

 その代わりEARINは、ほかのBluetoothイヤフォンのようなヘッドセット機能を持ちません。スマートフォンに着信があると、音の再生が止まるだけ。通話をするにはイヤフォンを外す必要があります。これはサイズを考えるとやむを得ないところでしょう。

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