あらゆる製品にWatsonの力を、「InterConnect 2017」現地レポート
IBMの新発表を「クラウド+コグニティブ+データ」戦略で読み解く
2017年03月27日 07時00分更新
データ:ストレージティアの概念をなくし、新たな課金モデルを採用した「Object Storage Flex」
さて、今回のInterConnectにおける発表でも、こうしたIBMの“クラウド+コグニティブ+データ”のビジョンを、さらに具体化していく新製品が多数含まれている。
まず「データ」領域では、オブジェクトストレージサービスの新ラインアップとして「IBM Cloud Object Storage Flex」が発表された。これは、2015年に買収発表したクレバーセーフ(Cleversafe)のオブジェクトストレージ技術をIBMクラウドに統合したもので、大量の非構造化データを長期間、リーズナブルなコストで保存できるサービスだ。IBMによれば「Amazon S3」や「OpenStack Swift」とのAPI互換性を持ち、正式提供は今年第2四半期にスタートする。
Object Storage Flexの大きな特徴は、従来のクラウドストレージサービスにあった“ホット/クール/コールド”という「ストレージティア(Tier、階層)」の概念をなくし、融合させ、新しい利用料金モデルを提供している点だ。
IBM発表および公式ブログでの説明によれば、Object Storage Flexは“pay as you use”(使用分だけ支払い)モデルを取っている。データを保管するだけならば月額料は極めて安く済み、データを使った(読み出しや書き込みなどの操作をした)場合にのみ、そのぶんの追加月額料やアクセス料がかかる仕組みだ。
ストレージティアの概念を持つ他社サービスとの直接比較は難しいが、IBMが発表したモデルケース試算によると、1ペタバイトのデータ量で、競合するAWSの「Amazon S3(低頻度アクセス)」よりも最大で53%、マイクロソフトの「Azure GRS(Cool Tier)」よりも最大で75%も、ストレージコストが安くなるという。
加えてFlexは、IBM BluemixのほかのIaaS/PaaSサービスと同様に、パブリッククラウド環境だけでなくデディケイテッド環境(IBM Cloud上の顧客占有のシングルテナント環境)やローカル環境(顧客データセンター内のマネージド環境)にも配置できるという。
前述したIBMのビジョンどおり、このサービスではIoTデータのようなプライベートデータの保管/蓄積に対する障壁を引き下げ、将来的にコグニティブやアナリティクスの能力を活用して、そうしたデータから新たな洞察とビジネス価値を引き出せる世界の実現を狙っている。ストレージティアの概念を取り去ったことで、顧客企業は「将来的にそのデータを頻繁に活用するかどうか」を気にすることなく、クラウドストレージ上に蓄積していけるからだ。
「たとえば、エクサバイト級に及ぶ大量の医療画像データを保管し、Watsonの画像解析能力を活用して難病治療の方法を見つける。これに似た課題は、どんな業界でもあるはずだ。(Storage Cold Flexならば)こうした取り組みを、99.999%のデータ可用性とセキュリティを保ちつつ、高いコスト負担なく実現できるだろう」(ケリー氏)
またIBM Cloud インフラストラクチャオペレーション担当VPのフランシスコ・ロメロ(Fransisco Romero)氏は、Object Storage Flexは先進的な技術により高い可用性を備えていることもアピールした。「たとえば、3つの異なるグローバルリージョンに対して、データを自動的にパーシング(分散保存)する機能をネイティブに備えている。これは他社にはない技術だ」(ロメロ氏)。