せっかく書類を作ったのに、多忙で提出をうっかり忘れた……! 書類は提出したものの、記載ミスに気がついた……! そんなときにどんなペナルティがあるのか、どうすればリカバリーできるのかを、税理士の宮原裕一先生に聞きました。ちょっとくらい遅れても、間違えてもいいや……とノンビリしていると、場合によってはイタい思いをすることも!?
期限までに申告をしないと課される「無申告加算税」
所得税を納める必要がある人が特に注意すべきは、「無申告加算税」です。これは、確定申告期間内に所得税の申告をしなかった人に適用される罰則のこと。税率は以下のようになっています。
無申告加算税の税率とは……?
①本来納めるべき所得税額が50万円未満の場合
→税額の15%を加算
②本来納めるべき所得税額が50万円を超える場合
→①の15%に加え、50万円を超えた部分に対して20%を加算
計算例:70万円の所得税がある人なら……?
①50万×15%=7万5000円
②70万円ー50万円=20万円
20万円×20%=4万円
→①+②=11万5000円(上乗せされる無申告加算税額)
実際計算してみると結構な額……。見るだけでドキドキしてしまいますが、無申告加算税は、期限後の申告だからといって必ずしも課されるわけではありません。
「過去5年間で期限後申告をしていない限り、3月15日の申告期限から1ヵ月以内に自主的に申告・納付を行えば、無申告加算税はかかりません。1ヵ月を過ぎてしまったとしても、税務調査の通知がくる前に自主的に申告すれば、税率が一律で5%に軽減される措置などもあります。いずれにしても、気付いたら早めに対処するに越したことはないでしょう」
ちなみに還付申告の場合、特に追加徴税の罰則はありません。ただし、5年内に申告しないと還付金は受け取れません。また、青色申告で複式簿記の人は65万円控除が10万円どまりになるなど、損をしてしまう結果になります。
所得税を少なく申告すると「過少申告加算税」が課される
一方、納税のために申告する人も、還付申告をする人も必ず気をつけなければならないのが、納税額を過少に記載するというミス。申告期限内に提出した申告書に記載された納税額が、本来の額より少なかった場合は「過少申告加算税」が課されるケースがあります。
税率の計算方法は、ちょっと複雑ですが以下の通り。
過少申告加算税の税率とは……?
①追加で納める分の税額が、当初申告額or50万円のいずれか多い方の金額まで
→追加で納める本税の10%を加算
②追加で納める分の税額が、当初申告額or50万円のいずれか多い方の金額を超える場合
→追加で納める本税で当初申告額または50万円の、いずれか多いほうの金額までは10%、それを超える部分は15%
計算例:100万円の所得税を40万円と過少申告していたら……
(イ)当初申告額40万円<50万円……50万円
(ロ)追加で納める60万円>(イ)50万円……上記②のケース
(ハ)(イ)50万円×10%=5万円
(ニ)(追加で納める60万円-(イ)50万円)×15%=15000円
(ホ)(ハ)5万円+(ニ)15000円=65000円
ちなみに過少申告加算税は、税務調査の通知がくる前に自主的に申告すれば免除されます。間違いに気付いた時点で、ごまかさず早めに修正申告を行えばOKなのです。
「無申告加算税、過少申告加算税ともに、平成28年度の税制改正によって、税務調査の事前通知を受けてから申告をした場合の罰則が重くなりました。こちらも無申告と同じで、平成29年1月1日以降の取り扱いのうち、事前通知後で調査前に提出した場合、50万円までは5%、超えると10%となります。間違いに気付いても、それを放置しないことが大切です」と宮原先生。
ほかにもあるある、税金が割増しになる罰則あれこれ
重加算税……税務調査の結果、申告内容に「仮装・隠蔽」があった場合に課される税金。本税の35~40%の割合でかかる、最も重い罰則。
不納付加算税…… 従業員の給与や外注先の報酬から源泉徴収したとき、 この源泉所得税を納め忘れた場合に課される税金。
延滞税…… 法定納期限を過ぎてから納めた税金がある場合、 遅れて納めた税金に対して課される。 平成29年の場合、法定納期限の翌日から2ヵ月以内は年2.7%。 2ヵ月を超えた期間は年9.0%の割合で日割り計算される。
過怠税…… 印紙税の対象となる領収書などに、 収入印紙を貼り忘れていた場合にかかる税金。 貼り忘れが相手の発行した領収書だった場合、 過怠税の対象は相手先となる。
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