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kintoneな人 第1回

キーマンが語る「現場ユーザー」「コミュニティ」「受託開発」「グローバル」

日本発グローバルの業務改善クラウド「kintone」の5年を伊佐PMに聞く

2017年02月16日 15時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

提供: サイボウズ

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サイボウズの「kintone(キントーン)」は、「現場リーダーによる業務改善」「受託開発からの脱却」「グローバルを狙うチームプラットフォーム」といった、きわめて明確な意思に基づいて作られた志の高いプロダクトである。kintoneが生まれてから今に至るまでの5年を、kintoneのプロダクトマネージャーである伊佐政隆氏に聞いた。(インタビュアーTECH.ASCII.jp 大谷イビサ)

グローバルのチームワークプラットフォームを目指すkintoneの登場

 kintoneの発表は、サイボウズがクラウドサービス「cybozu.com」を開始した2011年11月にさかのぼる。サイボウズ OfficeやGaroonのクラウドサービス化とともに、青野社長から「残りの生涯をこのプロダクトに賭ける」と紹介された鳴り物入りのサービスがkintoneになる。

 kintoneは、青野慶久社長発案のプロダクトとしてスタートしている。2005年、青野氏が社長になって、グローバルに向けてはグループウェア1本で戦おうという方向性が定まった。しかし、著書にも述べられているように、現在のプロダクトラインナップでは、『世界で一番使われるグループウェアのベンダーになる』という夢が達成できないんじゃないかという懸念が青野氏の中にはあった。いろいろ悶々と考えた結果、文化依存しないチームプラットフォームを新たに作ろうということで生まれたのがkintoneだった。当時、サイボウズ Garoonのプロダクトマネージャーを担当していた伊佐政隆氏も、まったく同じ懸念を持っていたという。

「グローバル市場にはもちろんチャレンジはしていましたが、米国やアジアの日系企業に使ってもらうというのが基本的な活動でした。でも、僕らが長年培ってきたグループウェアのアプリケーションは、あくまで日本企業のコラボレーションが前提。それをそのまま世界に展開できるとは考えていませんでした」(伊佐氏)

サイボウズ kintoneプロダクトマネージャー 伊佐政隆氏

 こうした危機感から生まれたクラウド型の新プロダクトは、データを入れるフォームをドラッグ&ドロップで作り、入力したデータに関してコミュニケーションができるという、これまでにないユニークなものだった。ExcelやAccessのような手軽さで、迅速にWebデータベースアプリが作れる「ファストシステム」を実現するそのクラウドサービスは「kintone(キントーン)」と名付けられた。

「世界一速い雲なら、やはり「金斗運(きんとうん)」だろうということで、kintoneになりました(笑)。2011年当時は、H&MやForever21などファストファッションの全盛期。こうしたファストファッションやファストフードと同じように、業務システムも、もっと手軽でいいのではないかと考えました。一部の人にしか作れない業務システムでは業務改善もできないし、時間もかかってしまう。こうした現状を抜本的に変えていくというのが、kintoneの狙いでした」(伊佐氏)

「現場でシステムが作れるわけない」というギャップ

 現場の課題感にマッチしたシステムを、とにかく速く、簡単に作れる。「メール+Excelでやっている業務を置き換えよう」がkintoneの大きなコンセプトだった。実際に、リリース直前に出展したITpro EXPO(日経BP)のサイボウズブースでは「kintone 3分間クッキング」と題して、業務アプリを3分で作るデモを披露した。結果として、ITpro EXPOでは大賞を受賞し、青野社長が「残りの人生をkintoneに賭ける!」とアピールしたことで、kintoneの登場はメディアに大きく報道されることになる。

 しかし、製品のコンセプトがユーザー自身に伝わるにはとても長い時間が必要だったという。そもそもkintoneが対象としているのは、事業部門の業務リーダー。今までITをになっていた情報システム部やSIerではない。事業部門によるクラウド導入が認知されてきた昨今と異なり、現場でのクラウド導入が「シャドーIT」と揶揄されていた時期だ。

「『業務リーダーが自分でシステム作れる』って、実は今のkintoneに一番近い説明なんですよ。でも、当時はそれを担保する背景情報が少なかった。サイボウズも、kintone登場の前に『デヂエ』というWebDB製品があり、エンドユーザーがアプリを作るという実績も少なからず重ねてきました。ただ、kintoneはユーザーがいなかったし、業務リーダーを誰がサポートするんだというところも含めて、バックボーンがなかったんです。だから、多くのユーザーから『どうやって作るの?』と聞かれたし、SIerからは『開発経験ない事業部門が業務システム作るなんて無理でしょ』とも言われました。そもそも『要件定義が必要ない』みたいな話が通じなかったし、市場とのギャップがすごかったですね」(伊佐氏)

 こうしたギャップを抱えつつ、kintoneは発表から1年半が経ち、ようやく軌道に乗ってきた段階で、これまでGaroon担当だった伊佐氏がプロダクトマネージャーとしてkintoneを担当することになる。エンタープライズを担当していた伊佐氏がまず手がけたのは、Garoonを利用していた情シスとの意見交換だった。製品情報の提供やコンセプトの説明とともに、現場部門のIT活用について意見を聞いたのだ。

「現場部門のIT活用について大企業CIO(情報システム責任者)の方々からいろいろ意見をいただいたのですが、少なくとも当時は情シスの方々に短期的に共感をもらえるのは難しいという結論になりました。ただ、情シスを『敵に回さない』ということは重要だと。kintoneの話が行ったときに、反応してくれる感度の高い情シスじゃなくても、『kintoneだったら安全だからいいよ』というレベルにまでは持って行こうという話になったんです」

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