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逃げるは恥だが一膳炊きたい

アナログ技術の金字塔、パナソニックの一膳炊き鍋が最高だった

2017年01月12日 12時00分更新

文● 四本淑三

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散らかり放題の机の上に現れた救世主、美味しく一膳炊ける炊飯器「SR-03GP」

 世の中、一人暮らしの結婚しない男女が増えています。かく言う私もその一人であり、正確に言えばあんな面倒なもの二度とやるか、そんな気分であります。もちろん戸籍がクリーンなみなさんの中にも、似たような方は世代性別を問わず大勢いらっしゃる、はず。

 しかしながら、現在未婚で一人暮らしの若い方々も含め、このまま結婚しない人生を選択し続けるとその先に待ち受けているのは、独居老人としての未来であります。そこで暗澹たる気分になる。これは無理もない。

 ですがみなさん、そんな我々の選択は世間的にも堅いトレンドのようです。この先、独居老人は増え続ける一方。なにしろ核家族化が進むだけ進んで、婚姻率が下がり続けているのだから当たり前です。ここで内閣府発表の資料をごらんください。

平成26年版高齢社会白書(概要版)より。画像をクリックすると内閣府のページが閲覧できます

 単独世帯、つまり一人暮らしが全体に占める割合は、1980年は10.7%だったのに対し、2013年では25.6%(図1-2-1)。高齢者に限って言っても、一人暮らしはこの先もますます増え続けると推計されています(図1-2-2)。

 これでVRが普及したりなんかしたら、ますます人々は結婚から遠ざかるでしょう。その先にはハクスリーの「すばらしい新世界」のような未来が待ち受けているのかもしれません。ですが、あれだって必ずしもディストピアとは言い切れない、悪いような悪くないような、来てもいいけど来なくてもいいような、なんとも言いがたい未来だったはず。まあ、それまで国が存続していればの話ですが。

 さて、一人暮らしで大丈夫、と開き直っても明言はできない未来の話はさておき、私にはひとつ解決して欲しい問題があります。独居老人、およびその予備軍にとっての炊飯器事情であります。

 なぜ一膳だけ炊ける炊飯器はこうも選択肢が少ないのか。これだけ一人暮らしが増え続けているというのに。

 はい、前フリが面倒で申し訳ありませんでした。そこで登場するのが、パナソニックのミニクッカー「SR-03GP」というわけです。これを購入して早4ヵ月。私はもうこれなしの生活は考えられません。

一人暮らしに厳しい炊飯器事情

 我々が独居老人への道をひた走り続ける背景には、なにより一人暮らしが楽という事情があります。リスクもコストも最小限。なんでもお一人様向けに細かくパッケージされ、Amazonもあればヨドバシもあり、家に居ながら大抵のものは手に入る。そのせいでゴミは余計に出るし、エネルギーも余計に使うのかもしれませんが、なにより他人に気を使う必要がない。

 ご飯だってそうです。レンチンで一膳分がすぐ食べられる。便利ですよ。だけど、ご飯はやっぱり炊きたてが食べたい。しかも昔ながらの「はじめチョロチョロ、なかパッパ」で炊いた美味しいご飯が。

 だから、各社工夫をこらした炊飯器を作っているわけです。美味しければいくらでも出すというので、10万円を超えるような製品まである。家電をやるにあたって学ぶべきはまず炊飯機。中国の新興家電メーカーがそう言うくらいで、これにはさまざまな技術がつまっているのでしょう。

 ですが、主流は5.5合炊きか3合炊き。家族向けです。もちろん、それらの中には0.5合まで炊けると謳われている機種もあります。が、ちょっと物理的に無理がある。径の大きな鍋に、わずかな量の米と水を入れるものだから、フライパンで炊いているような状態。加熱しても対流が起きないものだから、結果としてムラムラのビチョビチョということになりがちです。

 2合くらい炊いて保温して小分けで食べればいいのでしょうが、2合も炊いたら確実に余るし、無理して食べたら一日の消費カロリーを上回る。だって我々は年寄りなんだから。

 これだけさまざまな技術力があるのに、なぜ一膳だけポンと炊ける炊飯器は登場しないのか。マーケティングは一体なにをやっておるのか。キミたち中国メーカーにやられるだけやられて平気なのか。衰退のフェーズに入った先進国には、それなりの市場があるかもしれないというのに。

 と、文句を言い続ける私に、一膳だけでも炊ける炊飯器として友人が勧めてくれたのが、このパナソニックの「SR-03GP」でした。IHでもマイコンでもなんでもないが、値段は5000円もしない。それで試しに買ってみたわけです。

 箱から取り出してみると、まず小さい。机の上に置いてみると、昭和の炊飯器のミニチュアのよう。内容物は本体、薄いアルミの内鍋、そしてガラス製のフタ。それに90mlの計量カップが付いてくる。どれも小さくてママゴトに使うおもちゃのよう。なんだかかわいい。えー、いいじゃないか。

普通に言って昭和、おしゃれに言うとミッドセンチュリー感漂う風情

付属する90ml(0.5合/一膳分)計量カップのこの小ささ

思い切りメカニカルな押し下げレバー式炊飯スイッチ

 鍋の容積は0.27L。炊飯できるのは最大1.5合まで。十分です。円筒状の本体は高さ21cm、直径16cm。散らかった机の上にも、マウスを動かす程度のスペースがあれば難なく置けます。

 でもフタはただ内鍋に乗っけるだけの、普通の鍋のガラスフタ。圧力もなにもかからない。パワーはたったの200W。1000Wを超えるIH炊飯器の最大消費電力に比べると、アンダーパワーもいいところ。マイコン制御もなにもない。

 本当にこれで大丈夫なのか。単純すぎてかえって使い方がわからず、薄っぺらい取扱説明書を何度も読み直したほどです。でも、使ってみればわかる。そうした原始的な構造が、まさにこの製品の素晴らしい点であるわけです。

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