ドイツの半導体メーカーInfineonから独立した
DRAM専門会社Qimonda
ということで、やっと今回の本題のQimondaに入ろう。前述のDRAMベンダーランキングで1995年に12位でランクイン、以後だんだん順位を上げて2001年には4位まで達していたInfineonがQimondaの前身である。
実を言えば、Infineonという会社そのものが設立されたのが1999年である。もともとはドイツのSiemens AGの半導体部門で、これがInfineonとして独立した。したがって先のランキングで1995~1998年におけるInfineonという表記は、本来はSiemensなのが正しい。
さてこのInfineonは設立直後に11億ユーロを投資して、ドイツのザクソン州ドレスデンあるにDRAM専用の300mmウェハーを使う工場を建設することを発表した。もともとここには200mmウェハーの工場が存在しており、1999年には世界最初の256Mbit SDRAMを出荷している。
これに併設される形で建設された300mmウェハーの工場は、0.14μm以下のプロセスを利用し、2001年以降には1Gbit以上の容量のDRAMを量産する予定であった。
ただ本来のInfineonは、産業機器や自動車などの、比較的需要が安定した、しかも長期間に渡る半導体ビジネスが主であり、景気の動向に応じて需要が増減し、しかも短期間で製品寿命が切れるDRAMビジネスはあまりそぐわないものであった。
それもあって、DRAM部門を切り離して別会社化するというプランはInfineonの独立直後からあったらしい。とはいえ当初はDRAMそのものが稼ぎ頭だったこともあり、「いずれ時期を見て」という考えだったようだ。
最終的には2006年5月にDRAM部門がQimondaとして切り離された。当時の報道を見ると、若干予定を早めたとしており、最初は2007年頃の新規株式公開を考えていたらしい。
トレンチ技術の微細化が難航
他社に置いていかれる
2006年前後というのは、同社にとっては辛い時期であった。Infineonは長年ファウンダリービジネスも行っており、特にトレンチ(溝)技術にはいろいろ定評があった。古い話だが、BitBoysのGlaze3DにはInfineonの0.22μmプロセスが利用されていた。
これが選ばれた理由は同社の組み込み向けDRAM技術であるが、要するにシリコンウェハーに細長い「溝(トレンチ)」を構成し、この溝を使ってキャパシタ(コンデンサ)を構成することでDRAMを形成するというものである。
このトレンチ技術は当然Qimondaにも引き継がれたのだが、容量を引き上げるためにプロセスを微細化しようとすると、どんどん溝を構築するのが難しくなってきた。構造的には溝というよりは竪穴という感じだが、なにしろ直径の数倍~数十倍の深さの穴を構成しないといけないため、この製造技術を確立するのに時間を要してしまった。
結果、他の競合ベンダーが60~70nm世代での量産製造技術を確立し、50nm台の製造技術を開発していた2007年の時点で、Qimondaはやっと75nmのトレンチタイプの出荷を開始している状況だった。
下の画像は2008年にQimondaが公開していたロードマップであるが、他社が40nm台の開発を始めていた2008年前半に、やっと58nmのトレンチタイプを出荷し始めるという具合に、1世代分の遅れを負っている状況だった。
画像の出典は、2008年7月にDenali Software(2010年にCadenceが買収)が主催したDenali Memcon 07におけるTom Trill氏(Qimonda North AmericaのVP Marketing)のスライド
そこから急速に追い上げたいというのが同社のロードマップ、というより半ば願望である。58nmのトレンチタイプに加え、65nmの埋め込みワード線(Buried Wordline)タイプを2008年中に出荷し、2009年後半には46nmを出荷。これが実現できると競合メーカーとの遅れは半世代ほどになる。

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