スピードだけではないHANAの魅力とは、マーケティング担当幹部に聞く
「SAP HANA 2」発表、創業時からの目標を実現しつつあるSAP
2016年11月29日 07時00分更新
2010年にインメモリ技術「HANA」を発表し、業界を驚かせたSAPが今月、最新世代となる「SAP HANA 2」を発表した。発表の場となった「SAP TechEd Bracelona 2016」では、HANA 2だけでなく、HANA活用の裾野を広げる無料版の「Express Edition」も発表している。
今回、TechEd会場で、HANAマーケティングのシニアディレクターを務めるマリー・グッデル氏に、HANA 2を中心に話を聞いた。
SPSの更新ではなく新バージョン「HANA 2」をリリースした背景
SAPがHANAを発表したのは2010年のことだ。「ディスクではなくメモリにすべてのデータを置く」というアイディアに掛けた共同創業者のハッソ・プラットナー氏(スーパーアドバイザリーボード会長)自身が、HANAをお披露目した。プラットナー氏がかねてから思い描いてきた“リアルタイムエンタープライズ”を実現するうえで、データベースがボトルネックになっていることが、HANAの開発にいたったきっかけだと説明していた。
そして、2015年に発表した最新のERP「S/4 HANA」において、SAPはついに「サポートするデータベースはHANAのみ」という大きな戦略変換を行った。SAPによると、S/4 HANAの顧客数は現在、4100社に達しているという。
HANAはこれまで、「SPS(Service Pack Stacks)」というアップデートパッケージを年に2回リリースし、技術的なエンハンスメント(新機能追加など)を行ってきた。しかし、今回は新たなSPSではなく「バージョン2」のリリースとなる。このバージョンアップの理由について、グッデル氏は「純粋に顧客の要望だ」と説明する。
「顧客の中には、HANAのアップデートについていけないという声があった。顧客はHANAプラットフォーム上で大規模なビジネスを動かしているので、マラソン走者のように自分のペースで(バージョンアップなどを)やりたいというニーズがある」(グッデル氏)
そこで初代HANAは、5月にリリースしたSPS 12をもって技術エンハンスメントをストップすることにした(以後の新機能追加などは行わない)。一方で、HANAプラットフォームそのものは、HANA 2のほうで技術エンハンスメントを進めていく。初代HANAと同様に、HANA 2も年に2回、技術エンハンスメントを行い、ゆくゆくはどこかのタイミングで技術進化を止め、HANA 3に橋渡しされる見込みだ。
初代HANAは2019年5月までサポートされるので、顧客は好きなタイミングでHANA 2にアップグレードすればよい。このアップグレードは無償だ。
バージョンアップとなると、気になるのは互換性だ。グッデル氏は、「カスタムアプリケーションに影響を与えることはない」と約束する。バージョンアップにおいてもデータベースには何も変更を加えないためで、すでにSAPアプリケーションについては検証済みだという。