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新生SAPの幕開けを告げる「SAPPHIRE NOW 2015」第1回

「HANA Cloud Platform for IoT」も発表

製品より成果を!SAPの技術トップがS/4 HANAで変革を呼びかけ

2015年05月11日 07時00分更新

文● 末岡洋子

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SAPが”ゲームチェンジャー”としてインメモリとカラム型技術を用いた「SAP HANA」を発表して5年、2月にはついにHANAをERPの土台にした「S/4 HANA」が登場した。5月5日から3日間、米フロリダ州オーランドで開催された年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW 2015」でSAPは、HANAがすべての基盤となった新しいSAPの幕開けを印象付けた。主な発表が行なわれた2日目の基調講演の内容をまとめる。

HANAはパラダイムシフトを支えるプラットフォーム

 基調講演を行なったのはSAP エグゼクティブボードメンバーでプロダクトとイノベーションを担当するバーンド・ロイケ(Bernd Leukurt)氏、2014年にHANAの基盤作りを手がけたヴィシャル・シッカ(Vishal Sikka)氏が去った後に大役を任されたドイツ人だ。SAPPHIRE NOWは2回目の登壇となる。

プロダクトとイノベーションを担当するバーンド・ロイケ氏

 創業43年、多数の既存顧客をかかえるSAPにとって、顧客の進化は重要だ。同社はHANAを打ち出して以来、デジタル時代に向けた変化を呼びかけるメッセージを発しており、今回のSAPPHIRE NOWでも初日にCEOのビル・マクデモット(Bill McDermott)氏が”顧客中心のビジネス”を表現した「CtoB」への転身が必要だと説いた。その翌日、ステージに立ったロイケ氏は「製品を売るのではなく、成果を売る」ビジネスモデルへの変革という視点でスピーチを進めた。

 ビジネスモデルの変化の背景には、「価値を創出するソフトウェアが変化の推進役になる」「顧客とのやりとりが根本的に変わる」というデジタル経済の2つの特徴がある。そして、これを実現するための技術的制約が取り払われつつある。

 「製品よりも成果(効果)を」といっても難しいことではない。すべての企業がなんらかの目的やミッションを掲げて設立されたはずだ。原点に立ち返れば、自社にとって成果を売るとはなにかはわかりやすいだろう。それを実現するために現在のバリューチェーン全体を見直し、顧客との接点を再考する必要がある、とロイケ氏は続ける。

 その答えを握るのが、S/4 HANAだ。HANAでは価値をもたらさない作業に割く時間を削減。また、センサーからのデータを含む大量の情報収集と活用などデジタル経済の受け入れに必要な技術を備える。これに加えて、Ariba、Concur、Fieldglassの買収を通じて強化しているビジネスネットワークに参加することで、さらなるメリットを得られるという。HANAはこれら全ての土台だ。「HANAは、パラダイムシフトを支える共通のプラットフォームになる」とロイケ氏は語る。

 HANAの優位性がスピードであることは間違いないが、「それだけではない」とロイケ氏。「地理空間情報をビジネスプロセスに追加でき、構造化・非構造化の両方のデータをサポートし、予測分析機能を利用して自動化をさらに高めることができる」と特徴の一部を紹介する。これらは引いて複雑性の排除につながる。ロイケ氏は「HANAは十年に一度登場するような革新的な製品だ」と述べた後、「オラクルはスピードでわれわれと競争するのに新しいレイヤーを追加しているようだが、これでは複雑性が増すばかりだ」と競合との対比も忘れなかった。

S/4 HANAは先回りして問題を解決できる

 HANAがビジネススイートの土台となることで、「記録のためのシステムだったERPが、よりインテリジェントになり、問題を解決できるシステムになる」という。それを示すデモとして、ナビ製品のメーカーがS/4 HANA Cloud Editionを利用して、物流と財務のデータを組みわせて分析やシュミレーションを行なう様子を見せた。

 優先度の高い顧客から大量の注文が入ったが、コンファームされていない。問題は在庫不足。S/4 HANAが提案する解決策をクリックすると、別の工場から調達するなどといった選択肢がスター評価付きで示されている。この中から、別の顧客の分を優先顧客に回すという策をみてみることにする。この顧客の優先度がなぜ低いのかを調べるために財務データを見たり、もしこの案を実行したらどうなるのかをシュミレーションして、この策を実行すると優先顧客に期日までに納品できそうだとわかった。

Fioriを用いたスタート画面解決策を提案してくれる
解決策で実行可能かのシュミレーションを行なう

「既存の部門の壁を取り除くことで、データの活用を最大化し、部門の枠をこえて解決策を提案できる。事後対応ではなく、先回りして問題を解決できる。S/4 HANAは企業のMRI(磁気共鳴画像)だ」とロイケ氏はその威力を説明する。

 このほかにも、データ容量の削減、データモデルの簡素化によるスループット改善、HTML5ベースのユーザーインターフェイス「Fiori」などのメリットを並べた。データ容量は、米西海岸のヘルスケア顧客の場合で54TBから5TB以下に削減されたとのこと。これらは総じてコスト削減につながる。ルーカート氏によると、Forrester ResearchはS/4 HANAでのTCO削減率を30%以上と報告していると胸を張った。

 S/4 HANAは2月に発表以来、すでに400社以上の顧客が導入を決定しているという。その1社としてロイケ氏に招かれたインドの塗料メーカーAsian PaintsのCIO、マニシュ・チョクシ(Manish Choksi)氏は、S/4 HANAと「Simple Finance」を6月に稼働開始すると発表した。

 SAPは同日、オンプレミス版で25業界すべてが利用できること、クラウド版「S/4 HANA Cloud Edition」の提供を発表した。Cloud EditionではHANA上のクラウドで利用できる範囲を財務、製造、サプライチェーンなど9種の業務にも広げたとのことだ。

 S/4 HANAは既存のデータベースをサポートしていない。ロイケ氏はマイグレーションのステップとして、①HANAにマイグレーションする、②S/4 HANAにアップグレードする、③実装オプションを選択する(クラウドかオンプレミスか)と示しながら、修正を加えている場合も動くが、S/4 HANAへのマイグレーションではカスタマイズをできるだけ排除するようアドバイスした。なお、Asian Paintsのチョクシ氏に基調講演後、話を聞いたところ、将来的には現在のデータベースをHANAに移行し、S/4 HANAをオンプレミスとクラウドのハイブリッドで運用していくと述べていた。

(次ページ、HANA Cloud PlatformをIoTに)


 

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