386DX互換CPUを投入
Campbell氏はかなりチャレンジャーであり、ここでさらに一歩ラインナップを先に進める。1992年、同社は386DX互換となるSuper386こと38600DXや、386DX互換となる38600SX、あるいは387互換のSuperMathこと38700DXを投入する。
画像の出典は、“HARDWARE COP CPU MUSEUM”
画像の出典は、“cpu-collection.de”
これらのCPUは、これもまたクリーンルーム技法を利用したリバースエンジニアリングによって開発されたもので、直接的にインテルの特許を侵害したりする心配はなく、さらに完全互換ではなく機能を向上させている部分もあったりした。
しかし、こちらはインテル、AMD、Cyrixといったさらに大きなメーカーが凌ぎを削っている市場でもあり、結局数ヵ月後には互換CPUのマーケットから撤退することになる。
チップセットとビデオチップに専念
互換CPUから撤退したC&Tは原点回帰とばかりに、再びチップセットとビデオチップに専念することになる。1993年、同社は486向けの低価格チップセットを発売する。
これに先立ち1991年頃に投入していたSCAT(Single Chip AT controller)やELEAT(Entry-Level Enhanced AT)といったチップセットはこの時点でも好調であり、こうしたワンチップの低価格向けチップセットの対応を486にまで広げた形だ。
一方ビデオカード向けでは、連載137回でも少し触れたWinGineという独自アクセラレーター機能付ビデオチップを発表する。
ただあまりに独自すぎて、バスからして独自のものが必要になり、ほとんど市場はないに等しかった。皮肉にもNextStepで採用されて成功したので、その意味では無駄にはならなかったのだろうが。
画像の出典は、“Blake Patterson氏のFlickr”
こうしたことと並行して、会社のリストラ(*2)や、いくつかの特許をめぐる訴訟(*3)などを行ないながら財務状況を改善していくことで、1993年末には赤字幅もだいぶ小さくなり、会社が存続する目処が立つようになった。
(*2):1992年11月から開始され、最終的に従業員の20%が削減対象となった。
(*3):OPTi Computer/Eteq Microsystems/Elite Microelectronics/Sun Electronicsの4社を、C&Tが保有している特許の不正利用で訴えた。
ただこのあたりから、チップセットはどんどん難しくなるということで、製品は主にビデオチップ側に傾倒していく。Intel 740に関しての共同開発もその一環だ。
ほかにも、液晶パネルをつなぐPanelLinkコントローラー(*4)や、HiQVideoというMPEG再生チップ、WINGINEとは別系統の65500シリーズと呼ばれる2Dグラフィックアクセラレーターチップなどを1997年頃まで出荷している。
(*4):この技術そのものはSilicon Imageのもので、C&Tはライセンスを受けてを製造していた。
インテルがC&Tを買収
1996年末の売上は1億5079万ドル、営業利益は2575万ドルというところまで立ち直ってきた。ちなみに1995年末はそれぞれ1億473万ドル、939万ドルという数字なので、売上げ規模は1990年頃にはまだ及ばないものの、経営状態は大分改善していることがわかる。
ただこの分野も1996年ともなると競合が激しくなっており、特に3DアクセラレーションではC&Tは遅れを取っていた。最終的に2Dコアと低消費電力のチップセット技術を評価したインテルが、1997年7月にC&Tを買収する。買収金額は一株あたり17.50ドル、総額4億2000万ドルである。
買収にともないCampbell氏はC&Tから離れたわけであるが、そのCampbell氏が次に興したのが3dfxである。その3dfxの後にはCobalt NetworksやHotRail、NetMind、PortalPlayer、Resonateと、わかる人にはわかる会社を次々に興しているあたりが、なんというかバイタリティーを感じさせる。
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