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最強のウォークマン、ヘッドフォン、アンプを実機レビュー! 第2回

20万円超のソニー極上ヘッドフォン「MDR-Z1R」はもはやスピーカーで聞いているようだ!

2016年09月13日 10時00分更新

文● 鳥居一豊

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密閉型としては異例の音場感は一聴の価値あり
なめらかだが、実体感のあるサウンド

 さっそく試聴の印象をレポートしよう。ここでは、自宅で使用するデスクトップPCとオッポのヘッドフォンアンプ「HA-1」をUSB接続し、ヘッドフォンとはアンバランス接続で聴いている。

 ウォークマンNW-WM1A/WM1Zを使い、バランス、アンバランスも試した試聴レポートは前回紹介しているので、そちらを参考にしてほしい。

 ハイレゾ音源を中心として、クラシックやジャズ、ポップスなど、いつも聴く曲をかたっぱしから聴いてみたが、MDR-Z1Rの音はちょっとユニークだ。

 音の広がり感が極めて優秀で、頭の外側で音が鳴っている感じがする。つまり、ヘッドフォンらしくない音の出方をする。

 こうした音の出方をするヘッドフォンは他にもあるが、多くは開放型と呼ばれるタイプ。密閉型でこんな音の聞こえ方をしたのはほとんど例がない。

 おそらくは、ハウジング関連で解説したように、ハウジング内の共振がほとんどないためだろう。大胆な言い方をしてしまえば、ハウジングがついているという感じがしない。

 スピーカーで聴く音とは感触は違うのだが、音の聴こえ方や広がり感はスピーカーで聴く感じに近い。頭の中で音が鳴っているのではなく、自分が音に包まれているような感じがある。

 そしては、音色はクセっぽさがほとんど感じられず、ニュートラルで色づけのない音だ。だから、音は極めてスムーズで自然な感触。クラシックでは弦楽器の弦を擦ったときの感触や胴が鳴って響きをふくらませている感じまできめ細かく聴き取れるし、オーケストラ全体を見渡せば、各楽器が整然と配列している様子までよくわかる。

 耳当たりが良く、感触がソフトなので華奢なイメージもあるのだが、特に中低音の楽器は芯の通った力強い鳴り方をする。

 ジャズのベースはブリッとした弾力のある鳴りと骨太な音の厚みを兼ね備えているし、ドラムもアタックの鋭さを力強く出しながら、量感やエネルギー感も剛体感がある。強い音はどこまでも強く出るが、それでいて耳当たりが柔らかい。この表現力はまさに生の楽器の感触に近い。

 ボーカルはクリアーで明瞭度の高い再現で、吐息のニュアンスや声を張ったときの微妙な声質の変化まで鮮明に描き分ける。雑味のないストレートな再現で、ありのままの音という印象だ。

ゼンハイザーの「HD800」と聞き比べてみた!

 最後に、手持ちのヘッドフォンであるゼンハイザーの「HD800」との比較試聴した印象についても触れておこう。HD800はすでに後継モデルのHD800Sも登場しているが、長くリファレンス的なヘッドフォンとして多くの人に愛用されているモデルだ。

 価格的にも実売18万円前後なので、ほぼ同クラス。接続は同じくアンバランスで聴いている。

 HD800も開放型のため音場感はよく出るが、MDR-Z1Rの方が音の広がりではやや優位。これには改めて驚かされた。

 音質的には、HD800の方が中高域がブライトでジャズはテンションの高さやピアノの素早いメロディーもキレ味よく再現される。MDR-Z1Rは少し優しい感触でテンションの高さも穏やかになる。

 女性ボーカルはどちらも高音域の伸びも滑らかで透き通った声の伸びを楽しめるが、HD800は色気のある華やかさをわずかに感じさせるのに対し、MDR-Z1Rは芯の通った力強さがある。

 色っぽいHD800か、溌剌としたMDR-Z1Rか、これはどちらが優秀かではなく、どちらが好ましいかでしか判断できない。

 クラシックでは、チェロがソロで主旋律を奏でるときの力強さで大きく差が別れた。MDR-Z1Rは低音弦の力強い鳴り方が印象的で、力強さ、存在感のある音になる。HD800はチェロの鳴り方は比較してしまうとソフトだが、中高音の表現力が豊かで表情豊かな演奏になる。

 聴き慣れている分、HD800の方が好ましいと感じるところもあるが、音に芯の通った存在感のある音、ヘッドフォンらしからぬ音場感の優秀さなどを考えると、ちょっとMDR-Z1Rに軍配を挙げてしまいたくなる気持ちさえある。

 ゼンハイザーのHD800Sなど、最新のハイエンドモデルを集めてガチの比較をしてみたくなってしまった。

自宅でのリスニング用としては
最上級のモデルとして愛用できる

 20万円を超えるような価格になると、ヘッドフォンの音も相当なレベルになってくる。

 ゼンハイザーに限らず、世界のハイエンドモデルにはちょっと聴いただけで感動してしまうようなモデルも多いが、ソニーのMDR-Z1Rはそれらの強豪に対して一歩も引くことなく、堂々と渡り合える実力と他にない独自の魅力が備わっている。

 ただし、難を言うならば、屋外では使いにくい。音漏れの少ない密閉型ではあるが、サイズが大きくハンドリングに困るし、耳から外して首に下げるようなラフな使い方はしたくないし、しようとしてもハウジングが大きいのでアゴが持ち上がってしまって不自由だ。

 屋内向けというのは価格的にも当然と言えるのだが、もう一回りサイズの小さな屋外での使用を意識したモデルがあっても良さそうに感じた。そう思えるくらい、密閉型でのこの音場感は大きな魅力があると思う。

 さて、次回はヘッドフォンアンプの「TA-ZH1ES」を紹介。こちらもなかなかに気合いの入った製品で、多くのヘッドフォンとのバランス接続が楽しめることも特徴だ。

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