日本マイクロソフトが目指す本来のテレワーク
日本マイクロソフトでは、テレワークの基本的な考え方を次のように定義している。
「テレワークといえば、育児や介護、女性の活躍をサポートする在宅勤務といったキーワードが多く使われているが、本来のテレワークは、一部の人や、特定のシーンをサポートするだけの仕組みではない。すべての働く人が、仕事とプライベートのバランスをしっかり確保しながら、その力を充分に発揮し、活躍できることにある。企業にとっても、様々なコストの削減や、営業効率の向上を実現すると同時に、離職の防止、継続雇用によって、優秀な人材が確保できるというメリットがある。結果として、すべての人々が、いつでも、どこでも活躍できる環境を実現するのが、日本マイクロソフトが目指すテレワークである」(日本マイクロソフトの樋口泰行会長)
日本マイクロソフトでは、テレワークを実現するためのツールにも積極的に投資。在宅で勤務をする場合などは、社外から社内へのネットワークのアクセスを簡単にできるように、Skype for Businessを活用。全社員がチャットやオンライン会議などに、リアルタイムに接続。在宅勤務や出張が、コミュニケーションの妨げになることはない環境を実現している。こうしたことも、テレワークへの取り組みを下支えしている。
約4カ月が経過して、どんな成果を生んでいるか
では、新たな制度の開始から約4カ月を経過して、どんな成果を生んでいるのだろうか。
実は、日本マイクロソフトの社員に聞くと、「それほど大きな変化がない」という意外な答えが返ってきた。
というのも、この数年のテレワークへの先進的な取り組みを通じて、そのメリットとデメリットを社員が認識しており、新たな制度を利用する上で、社員の警戒や必要以上の心理的負担、新たな課題のようなものは感じられなかったというのだ。また、むやみなテレワーク取得といったことも起こっていない。新制度において最も懸念されたのは、社員を管理する上長の意識改革ということになるだろうが、これも従来の実績があるため、現時点では重大な課題といえるものは出ていないようだ。
例えば、営業部門においては、当然、営業の締め日がある。特に6月30日は、同社の年度末でもあり、テレワークだけでは対応できない部分があったのも確かだ。
だが、上長が承認して初めてテレワークを行なえる制度にしており、上長の権限によってこれを実行できる。どうしても社員が顔を突き合わせて仕事をしなくてはいけない日は、テレワークを禁止するといったことも制度上は可能だ。
また、テレワークを申請している社員は、その前日までに仕事を終わらせておきたいという意識が働くため、自ずと仕事が効率的に進むメリットも出ているとの指摘が社内から出ている。
さらなる新しい試みと、いくつかの課題
その一方で、いくつかの新たな取り組みを開始しようという動きが出始めているという。
テレワーク週間 2015では、カスタマーサポート部門の8人の社員が、岐阜県飛騨市の築150年の古民家を借りて、5日間に渡ってテレワークを行なったという事例があったが、こうしたテレワーク週間という特別な期間でなければできなかったものが、それを待たずに必要に応じて実施できるようになったともいえる。こうした動きも検討が始まっているようだ。
もちろん、いくつかの小さな課題は出ている。
例えば、在宅で勤務していた社員が急に会社に来るように上長から呼び出されるといった事態は当然想定される。その際に、「今日は在宅での勤務だったのに」というようなネガティブな返事をする社員が存在するという。だが、同社が考えるテレワークの基本的な考え方からすれば、勤務時間内はどこで仕事をしていても認められる反面、会社から呼び出しがあれば、当然、場所を会社に変えて勤務することになる。在宅での勤務は休暇ではなく勤務であり、会社が必要と感じれば、会社やほかの場所に移動してもらうというのは当然のことである。
また、顔を合わせた会議のあとに、エレベータまでの歩く時間でのちょっとした話し合いで、新たなアイデアが生まれることもある。こうしたことが、テレビ会議システムではカバーできないという側面もある。これも課題とはいえるが、こうした新たな働き方が今後の標準になっていくということを考えれば、その中で最善の仕組みは何かということを考えるべきだとの発想が社内にあるという。
新たな働き方での試行錯誤を繰り返す日本マイクロソフトは、それによって、働き方そのものを強みに変えようとしているのは確かだ。
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