想像を超える低域の重心の低さ
ダイナミック型とはいえ、まず中高域の解像感はバランスド・アーマチュア型のドライバーに負けていません。このへんはサイズから想像できる点で、このモデルの美点でもあります。ダイナミックレンジの広い音源では、ピアニシモのパートでは、もうちょっとハイエンドが伸びるとエア感が出ていいかな、と思える場面もありますが、それは5000円台のイヤフォンに求めることではありません。
と同時に、低域の重心点がかなり低く、バランスド・アーマチュアのような線の細さを感じないのが、恐るべきところ。小口径で中高域の解像感を狙っただけのものではないということ。もちろん、無理やり低域のレゾナンスを膨らませたような、この価格帯のカナル型にありがちなバランスの悪さはありません。
無論、空気が揺れ動くようなローエンドの余裕は、大口径のダイナミック型には敵いません。しかし、追従性が良くタイトなところは、むしろ口径の大きなダイナミック型より好みという方も、おそらくいらっしゃるでしょう。実際テンポの速い、ビートのアタックがはっきりした音楽との相性は、かなり良いと思います。
ちなみに、フェンダーに買収される以前のオーリソニックスに「ROCKETS」という口径5.1mmのダイナミック型を使ったカナル型イヤフォンがありました。小型のハウジングと、中高域の高い解像感と低域の量感が両立している点でも、S500のイメージに近い。ただ、ROCLETSには、2万円台半ばという相応の価格が付いていました。