麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負 第3回
いしだあゆみ ゴールデン☆ベストやポール・サイモンソロアルバムも!
麻倉特薦:いしだあゆみやポールサイモンをハイレゾで聴く
2016年07月19日 18時30分更新
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番、第8番&第9番、他
Boston Symphony Orchestra,Andris Nelsons,ボストン交響楽団,アンドリス・ネルソンス
アンドリス・ネルソンスは、音楽に全身を捧げている、その指揮姿(ぜひYouTubeなとでご覧ください)が素晴らしい。もちろん音楽も聴いたこともないほどのヴィヴットさ。ネルソンスの音楽は、聴き手も奏者も幸せにする。聴き慣れた名曲から新しい姿が立ち現れるのである。
近年、メジャーレーベルは大規模オーケストラ作の制作から遠ざかり、ソロや室内楽をもっぱら作品化しているが、大手ユニバーサル・ミュージックは、ネルソンスのボストン交響楽団の首席指揮者に就任を祝い、「スターリンの影の下でのショスタコーヴィチ」シリーズの作品化に踏み切った。本ファイルはグラミー賞を受賞した前作に次ぐ第2弾。
交響曲第9番変ホ長調。弦のヴィヴットな愉しさ、ピッコロのコケティッシな表情、ファゴットやオーボエの懐かしさ、そしてトゥッティの見渡しのクリヤーさ、解像度の高さ……など、さすがは大レーベルの録音力は素晴らしい。ボストンシンフォニーホールのソノリティの暖かさ、響きの豊かさ、ディテールまで磨き込みの麗しさ……は音場再現の幸せだ。
交響曲第5番ニ短調第1楽章の悲劇的な序章でも、透明感の高さと潤いを忘れない。第4楽章は、たくさんの楽器が重なっているのに、これほどにもクリヤーな音調が得られるのか、驚くほどだ。この曲にありがちな、いかにも鉄のカーテン的な重々しさや悲劇性とは無縁の透徹感と、いまにも踊り出したくなるようなリズムのヴィヴットな弾みこそ、さすがはのネルソンスだ。2015年10月から2016年3月の間に、ボストンはシンフォニー・ホールでライブ録音。
FLAC:96kHz/24bit
Deutsche Grammophon GmbH, Berlin、e-onkyo music
Blues and Ballads
Brad Mehldau Trio
1曲目Since I Fell for You。重い足取りでベースが離散的に音を取り、ドラムスが重たくリズムを刻み、ピアノがけだるいような、しかし、確実に輪郭の立った鍵盤感でブルースを奏す。左のベース、中央のピアノ、右のドラムスのポジション感は確実で、音像はしっかりとした隈取りが与えられ、明確で明瞭な音調だ。ピアノが鍵盤上をところ狭しと行き交う躍動感、曲が進むと共に音価(音符の長さ)が短く、打鍵感が強くなり、メッセージ伝達がより強靭になるクレッシェンド感にはワクワクする。ニューヨーク Avatar Studiosで、2012年12月、2014年5月録音。
FLAC:88.2kHz/24bit
Nonesuch Records、e-onkyo music
最新録音だけあり、ひじょうに透明感が高く、繊細でクリヤーだ。解像度も格段に高い。ピアノ協奏曲第21番第1楽章。ヴァイオリンはふくよかで、木管や金管のリズムの足取りも軽い。響きも滞空が長すぎず、明瞭度とソノリティがいい感じで両立している。ピアノの指の訓練のような冒頭からして、可憐だ。センターに位置するピアノは、音符のひとつひとつの蠢きまで明瞭に分かるダイレクトな音調。バックのオーケストラはソノリティがリッチで、ホール感も豊潤だが、ピアノは遠くで聴いているような距離感ではなく、適切に近接して聴いている雰囲気だ。ニ短調の20番でも悲劇的なトーンはそれほど表に出ず、快活にアグレッシブに進行する。
FLAC:96kHz/24bit
Universal Music、e-onkyo music
Stranger To Stranger[Deluxe Edition]
Paul Simon
ポール・サイモンの5年ぶり、13作目のオリジナル・ソロ・アルバム。1曲目のThe Werewolf。最新録音だけあって、目が覚めるような鮮烈な音。ヴォーカルがひじょうに勁く、バックの楽団、コーラスの音の立ち方も尖鋭だ。波立つようなリズムの波形が、スピーカーから勢いよく飛び出す。途中にオルガンが偉容に被さって、終わる。2曲目のWristband。ベースのスケールの大きさと、弾み感に驚く。曲の進行と共に新規の楽器が加わっていくが、混濁せずに透明感の高さを保ったままなのである。ひじょうに解像度が高く。音の立ち上がり下がりが鮮明で、ハイレゾならではの優れた表現性を獲得している。
FLAC:96kHz/24bit
Concord、e-onkyo music
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