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VRおじさんの「週刊VRかわら版」第13回

実はVRおじさんは「360度撮影」もしております

結婚式場をバーチャル下見! 業務向けでも生きるVRの可能性

2016年06月27日 08時30分更新

文● 広田 稔 編集●飯島恵里子/ASCII.jp

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VR業界の動向に日本一詳しいと自負するエヴァンジェリスト「VRおじさん」が、今週のVR界の出来事をお知らせします!

360度見渡せるVRヘッドマウントディスプレーは、ブライダル業界にも多くの可能性をもたらしてくれます

 どもども! VRおじさんことPANORAの広田です! 先週のVR業界のニュースといえば、先々週米国ロサンゼルスで実施されたゲームの祭典「E3 2016」と週末の予約祭りで大いに話題になったPlaySation 4向けVRシステム「PlayStation VR」が引き続き話題を集めておりました。

 ……が、PS VRについては、先週語ってしまったので、別ネタについて取り上げようと思います。というわけで、今回のテーマは「ブライダルVR」。実はPANORAでもウェブメディアに加えて、360度撮影も手がけていてブライダルVRにも関わっております。そんなプレイヤーから見た話もできればと〜。

時間と空間をVRで超えられる

 昨今のVRムーブメントといえば、ゲームが中心になって牽引しているのは紛れもない事実です。ヘッドマウントディスプレーをかぶるだけで、ここではない別世界にワープして、実世界では味わえないような体験ができる──。もう少し広い範囲でいうと、以前取り上げたVRアトラクションが体験できる店舗なども含めて、エンターテインメントとして盛り上がっています。

 そのエンタメと並んで、競争が過熱してきているのが業務向けの用途です。VRというとなんだか小難しい感じがしますが、紙媒体やテレビ、インターネットといったメディアの進化系ととらえるとわかりやすいかも? 今まで「四角い枠」の中に文字や写真、映像を詰めていたわけですが、VRヘッドマウントディスプレーを使うことで、頭の周囲360×180度のすべてがスクリーンとして活用できるようになったわけです。

 例えば、不動産や旅行の分野では、バーチャル下見などの用途で次々と新サービスが登場しております。「四角い枠」のメディアに比べると、周囲を丸ごと見渡せて、近さや高さ、広さを直感してもらえるのがVRならではのよさです。

 そんな流れにもブライダル業界は含まれていて、PANORAも映像・照明・音響の演出プロデュースを手がける中日映像出版と協業して、昨年からバーチャル式場下見システムを開発し、すでに式場やイベントにて利用していただいております。

2日間にわたって数百人もの人に体験していただきました

 そして先週20、21日、東京ビックサイトにて開催された業界向けの展示会「ブライダル産業フェア2017」にも出展してきました。昨年もこのフェアでバーチャル式場下見システムを参考展示したのですが、そのときOculus RiftやGear VRを展示していたのはわれわれだけでした。今年はVRヘッドマウントディスプレーでデモしていたブースが4つに増加!時代の流行が如実に反映されていて嬉しい限りです。

 このバーチャル式場下見システムを何に使うかといえば、営業の補助ツールです。イベントや式場にこられたお客さんに、実際の結婚式を撮った360度映像をGear VRで見てもらうことで、会場や演出の雰囲気を直感してもらうというのが目的です。

 VRヘッドマウントディスプレーを使うメリットは、まず空間を超えられる点にあります。展示会やイベントに出展した際、「チャペルがきれいなのでぜひ見に来てください」というのではなく、その場ですぐに見てもらえる。繰り返しになりますが、テレビとは違って枠線がなく、好きな方向を自由に見られるので、あたかも自分がその場に行ったような感覚になれます。

 下見が実質不可能な海外ウェディングもVRのニーズが高い分野で、すでにリクルートが「ゼクシィ海外ウェディング」で活用していますね(PANORAの記事)。デパートやモールなどにあるブライダルカウンターでも、実際に下見したいところの「あたり」をつけてもらうために、360度映像+VRヘッドマウントディスプレーが役立ちます。

 実際に下見に来てくれた方々に対しては、時間を超えられるというのも大きなメリットです。会場の下見というと土日に訪れる方も多いわけですが、宴会場が限られる式場では、埋まっていて中が自由に見てもらえないケースもあります。また、がらんとした宴会場を見ても、ここで自分たちがどんな風に祝われるのか具体的なイメージを持ってもらえない。そこで過去の挙式の映像に「入ってもらう」ことで、雰囲気を知ってもらえるわけです。

 お金のかかる演出でも、なんどもその場に行って見てもらえます。例えば、参加者全員で風船を上げるバルーンリリースなどは、下見に来た方全員に、エキストラをそろえて毎回見せるというのは不可能でしょう。実際の式の現場に入って周りを見回し、演出とともに参列者の笑顔を見てもらうことで、「こんなにみんな喜んでくれるんだ」と重要性を実感してもらうことができます。

本番の式を撮影するからこそ、エキストラでは得られない心からの感動が伝わってきます

 本来ならリアルで見てもらえればベストなのですが、時間や空間、コストの制約で実現できないところをVRで補おう……というのがバーチャル式場下見システムのコンセプトになります。ブライダル産業フェアの会場では、まだVRヘッドマウントディスプレーをかぶったことがない方々も非常に多く、「なにこれスゴい」と驚きの声を次々といただけました。なぜか朝日新聞にも取り上げていただきありがたい限りです。

下見だけでなく生配信や記録も

 話は少し戻りますが、業務向けのVRというと、昨今、立ち上がったわけではなく、以前より脈々と続いてきた経緯があります。くしくも22〜24日、ブライダル産業フェアと同じ東京ビックサイトにて第24回(!)の「3D&バーチャルリアリティ展」が実施されておりました。今年はエンタメよりの出展も増えておりましたが、例えば、製造業向けに試作を3DCGでつくってVRで見え方をチェックしたり、高精度なハンディー3Dスキャナーで製品を3Dデータ化して研究に使ったりと、開発の現場で役立つものが目立っていました。

 それらと今の業務向けVRで何が違うかといえば、やはりここ数年で端末の価格が数百万〜数千万レベルから、数万〜十万に大幅に下がった点でしょう。さらにCG方面では「Unity」や「Unreal Engine」といったゲームエンジンが普及し、実写方面では360度を動画で撮れるカメラシステムが比較的安価に入手できるようになったことで、作る側の間口も広がっています。

 機材と制作ツールの背景があって、今のタイミングでさまざまな業界において「VRをからめると、こんなに便利になるんじゃないか?」という提案がボコボコと生まれてきているわけです。

ブライダル産業フェアでは、エイチームのグループ会社であるA.T.bridesが予約サイト「すぐ婚navi」の一環として「すぐ婚VR」を出展。業界初、360度動画による結婚式場や披露宴会場の内見を可能とし、挙式当日をシミュレーションできる

 ブライダル業界でも、バーチャル下見の用途では、今年1月、楽天ウェディングがOculus Riftを装着して式場をゲームパッドで視点を移動しながら360度写真をみられるサービスを発表していました(ニュースリリース)。ブライダル産業フェアには、エイチームのグループ会社であるA.T.bridesが予約サイト「すぐ婚navi」の一環として「すぐ婚VR」を出展していました(PANORAの記事)。

 会場の生中継もニーズが高い分野です。昨年、ダッグリングズが主催で、カメラを装着したPepperとPC向けVRヘッドマウントディスプレーの「FOVE」を利用して、祖母に結婚式にバーチャル出席してもらうという「HUG Project」が行なわれました。今週にも、ディー・エヌ・エーの子会社であるSHOWROOMが「SHOWROOM VR」として結婚式の生中継を予定しています(PANORAの記事)。

 ほかにもお客さんに渡す記録や、建て直し中の式場のバーチャル下見など、VRがピタッとはまる用途がいくつもあって、これからさらに発見と普及が進んでいくものと思われます。

 一方で、業務向けVRにおける現状の問題は、VRヘッドマウントディスプレーの概念を持っている人が少なく、かぶってみないと本当にその価値が伝わらない(=決裁権を持ってる人が理解できない)という点です。保守的な企業では、ここ数年出てきたばかりで実績がない技術に対してなかなか企画が通らない(=それってどれだけ売上が上がったの?)側面もあります。

 とはいえ筆者は割と楽観視していて、今年10月、日本人になじみ深い企業であるソニー(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)のPlayStation VRがリリースされることでVRという言葉がメディアを賑わせて世間の関心が大きく高まり、実物を手にした人たちの口コミでVRのよさが伝播するスピードがさらに早まると予測しております。

 現在、iPadなどのタブレットが小売店や飲食店で当たり前に使われているように、将来的にはVRヘッドマウントディスプレーも一定の地位を占めるでしょう。ぜひ弊社でも360度撮影のお仕事をお待ちしておりますので、一緒にVRコンテンツをつくっていきましょう〜(アツい営業トーク)。


著者近影。ソニー・インタラクティブエンタテインメントのプレスカンファレンスで最前列を確保したVRおじさん。なんとキラキラした瞳で小島監督を見つめる様子が、ライブ中継で全世界に配信されていました! 「鳥肌立ちっぱなしだった!!! 小島監督が持っていった感はすごいw」と感動してました!

広田 稔(VRおじさん)

 フリーライター、VRエヴァンジェリスト。パーソナルVRのほか、アップル、niconico、初音ミクなどが専門分野。VRにハマりすぎて360度カメラを使ったVRジャーナリズムを志し、2013年に日本にVRを広めるために専門ウェブメディア「PANORA」を設立。「VRまつり」や「Tokyo VR Meetup」(Tokyo VR Startupsとの共催)などのVR系イベントも手がけている。


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