「Ansel」でゲームの決定的な瞬間の“ジオラマ”を作る
近年ゲーム画面のクオリティーが高まるにつれ、ゲームのスクリーンショットを“いかに美しく撮るか”に挑戦するゲーマーが増えてきた。画質設定を最高まで上げ、時には『NVIDIA Inspector』などの独自ツールで画質を盛りに盛って撮影する……いわば究極の美を切り取る“ゲーム内写真家”のようなもの。こうしたユーザーのためにNVIDIAが準備を進めている機能が「Ansel」だ。
Anselはゲーム中に特定のショートカットキー(開発版では[Shift+F3]キー)を押すことで専用のUIがゲーム画面上に出現する。Anselではディスプレーの物理解像度以上(最大で縦横32倍、ドット数は1024倍)の解像度で撮影可能なほか、ゲーム側のカメラ位置をAnsel側で乗っ取り、好きな場所から撮影できるのだ。せっかくスクリーンショットを撮っても、手前に邪魔なキャラが入り込んでしまったり、角度がイマイチ……ということがあるが、Anselを使えば、決定的な瞬間を自分の好きな場所から撮影できるのというわけだ。
さらにAnselは360度ショットや、360度ステレオショットも撮影可能。つまり、ある瞬間においてゲームの世界では何が起きていたかを自分の好きな視点を中心において見回すことができるのだ。360度ステレオ画像はHTC『Vive』などのVRヘッドマウントディスプレーはもちろん、Google『Cardboard』といったスマホVRに画像をコピーすることでも鑑賞できる。ゲーム世界のジオラマに入ったような体験ができる360度ステレオショットは圧巻の一言。ボス討伐の瞬間をぜひAnselで残しておきたくなるだろう。
この機能を活用すれば「やっほー!ゲームキャラのパ○チラ撮り放題じゃん!」と考える人もいるだろう。だが、Anselではカメラワークはゲーム側で制限することもできる。性的表現云々のほかにも普通は見えない所が見えるとネタバレになる場合、“通常見えない部分にはポリゴンがない”場合はカメラを完全フリーにするとマズいゲームもあるだろう。Anselのカメラワークは、そうしたゲーム側の制約も尊重できるのだ。
そして、ゲーム側の制御を奪う関係上、Anselはゲーム側での対応が欠かせない。Ansel対応は非常に楽(短ければプログラムに40行程度のコードを追加するだけ)という側面はあるが、ゲームを一度ポーズする必要がある以上、MMOや格闘ゲームのようなサーバーとのシンクロや他人とのインタラクトが必須のゲームでは実装できない場合も出てくる(もしくは、ソロプレイ時のみAnsel可能にするとか)。しかし、非常に面白い機能なのでぜひとも対応ゲームが増えてほしいものだ。
FastSyncがGTX1080専用である一方で、AnselはGTX680以降のGPUでも動作するという点も魅力的だ。しかし、Anselで物理解像度を超えるスクリーンショットを撮る場合は、“DSR”のように超高解像度画像を一気にレンダリングして出力するのではなく、画面を最大32×32枚の写真に分割して撮影し、それをつなぎ合わせて出力する。
この時、色やライティングのトーンが均一になるように、CUDAコアを使って補正をかける。解像度を最大にすると、ファイルが生成されきるまで数分かかる(ストレージ性能にも依存する)うえに、CUDA処理の段階でも相当量のVRAMを使うことが予想される。VRAMの少ないGTX960などで最大解像度撮影を行なえば、かなり待たされてしまいそうだ。この点でも、VRAMが8GBと余裕があるGTX1080が断然有利、と言えるだろう。