ITベンダー中心の34社でBCCC発足、金融だけでなく幅広い領域へのブロックチェーン適用狙う
「ブロックチェーン推進協会」設立を促した“危機感”とは
2016年04月26日 07時00分更新
「技術開発や実証実験は世界に遅れていないが……」日本の問題とは
「ブロックチェーンは、元々は『BitCoin』を支える技術として登場した。しかしその後、フィンテックの枠組み、業界の枠組みを超えて進化してきている。今後、さまざまな業界の情報システムの進化に大きな貢献をすると、発起メンバーは考えている」
こう語った理事長のインフォテリア 平野氏は、BCCC設立に至った背景には、ブロックチェーンを取り巻く日本国内の状況に対する“問題意識”と“危機感”があったことを説明する。
「実は、国内におけるブロックチェーンの技術開発や実証実験は、世界に比べても後れを取ってはいない。問題は、その実績や技術情報が共有されていないこと。その結果、『まだよくわからない』と不安がられており、適用領域はほんの一部にとどまっている。この問題を解決していかなければ、(実ビジネスへの)適用のフェーズで日本はどんどん後れを取っていくのではないか、という危機感を持っている」(平野氏)
副理事長を務めるテックビューロの朝山氏も、平野氏と同様の現状認識を示し、危機感をあらわにした。
「多くの企業では、ブロックチェーン技術に対して『まだ実用化していない』というイメージを持ち、様子見をしている。しかし、実際には日本の実証実験のレベルは高く、(実証実験では)銀行の勘定業務に使える実用性も証明してきている。だが、なにぶんブロックチェーンに関する情報が少なく、技術者どうしの議論でも、1年前、2年前に済んだ議論が繰り返される、“振り出しに戻る”ケースが散見される」(朝山氏)
そこでBCCCでは、積極的な情報共有を行い、これまでのように議論を“振り出しに戻す”ことなく、常に前へと推し進めていく姿勢であると、朝山氏は強調した。「この新しい技術を実用化すべく、世界へと情報発信を行うとともに、世界の情報を共有する場として活用しようという思いで、BCCCを発足した」(朝山氏)。
過去の失敗例を踏まえ「ガラパゴス的な動きをしない、させない」
国内状況に関してもう1つ危惧することとして、理事長の平野氏はブロックチェーン技術の「ガラパゴス化」を挙げた。BCCCでは優れた国産技術の海外発信には積極的に取り組む一方で、国産技術だけに“閉じた”あり方は強く否定している。
「『日本は独自の技術進化を遂げている』といった報道もあるが、ブロックチェーンに国境はない。BCCCでは、ガラパゴス的な動きをしない、させない」「過去には、国内だけで(先進技術の)大プロジェクトを組んで失敗した例が幾つもある。技術への期待が大きければ大きいほど、そうしたことが起きてしまう。国産だからどうの、独自仕様だからどうのと(こだわる)、そういうことはしない。国際的にきちんと連携していきましょうということ」(平野氏)
そのほかにも平野氏は、BCCCでは特定のブロックチェーンソフトウェアやプラットフォームに偏らず中立的な立場を取り、国内におけるブロックチェーンの「健全な発展」を促していく方針であることを強調した。
なお、フィンテックに関連して「政府への政策提言は行っていくか」という質問については、「BCCCの活動はブロックチェーンの『技術』を中心としたものであり、たとえば他のフィンテック系団体を支援するようなことはあっても、政策提言やロビー活動などを活動の中心にすることはない」(平野氏)と答えた。
また、今週27日にはブロックチェーンを冠した別の国内業界団体(日本ブロックチェーン協会)も設立予定だが、こちらは仮想通貨事業者中心の団体であり、BCCC加盟社にも同団体のメンバーがいることから「BCCCと競合するような団体ではない」(平野氏)との見方を示している。