このページの本文へ

ブロックチェーンアプリ開発を容易にし、金融など業界団体、SIerなどと関係強化

“Azure BaaS”構想など、MSがブロックチェーンへの取り組み説明

2016年04月28日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 日本マイクロソフト(日本MS)は4月25日、ブロックチェーン関連の取り組みに関する説明会を開催した。Microsoft Azureクラウド上で多様なブロックチェーンのバックエンドサービスを提供するほか、SIベンダーなどパートナーとのエコシステム構築にも取り組む。

Azure上でさまざまなブロックチェーンサービスを提供し、アプリケーション開発を容易にする“Azure BaaS(Blockchain as a Service)”ビジョン(画面中の各ロゴは代表的なブロックチェーンソフトウェアの例)

日本マイクロソフト エンタープライズ&パートナーグループ 金融サービス営業本部 本部長の綱田和功氏

日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 クラウド&サーバー製品マーケティング部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの大谷健氏

「1クリックでブロックチェーンのバックエンドサービスを提供」Azure BaaS

 同社 金融サービス営業本部 本部長の稲田氏は、マイクロソフトがグローバルで取り組むブロックチェーンの取り組みは、大きく「Azure BaaSの展開」「業界団体との連携」「パートナーエコシステムの構築」の3つだと説明した。

 “Azure BaaS(Blockchain as a Service)”は、Azure上でブロックチェーン技術を利用したアプリケーションの開発を容易にしていくためのビジョン。具体的には、「Ethereum」「Ripple」「IPFS」などさまざまなブロックチェーンサービスをAzure上に用意し、開発者がアプリケーションを開発する際に、バックエンドサービスとしてすぐにブロックチェーンを利用できる環境を提供するというものだ。

 Azureクラウドのエグゼクティブプロダクトマネージャーを務める大谷氏は、マイクロソフトではAzureを「よりインテリジェントで、開発者が開発スピードを上げていけるようなビルディングブロックが提供される」PaaSとして成長させたいと考えており、Azure BaaSビジョンもその一環であると説明した。

 「3月に開催した『Build』ではEthereum Foundationとの提携を発表し、Ethereumのフレームワークとマイクロソフトの『Visual Studio』とを連携させた。さらに今後は、Azure Marketplaceにブロックチェーンの特別なエリア(ページ)を設けて、ここにさまざまなブロックチェーンサービスを掲載し、開発者がクリック1つで展開できるようにする」(大谷氏)

Azure Marketplaceで多様なブロックチェーンサービスを提供していく

 さらに大谷氏は、特にフィンテック/金融業の顧客を意識したメッセージとして、Azureのデータセンターは世界22地域に拡大しており国内だけでも冗長構成(東日本/西日本)が取れること、FISC安全対策基準やクラウドセキュリティ(CS)ゴールドマークをはじめとした国際的/国内の情報セキュリティ認証に準拠していることを強調した。

ブロックチェーンエコシステムではスタートアップ、SIer支援が重要

 業界団体との連携強化については今月、R3コンソーシアムがAzureを“推奨クラウド”とすることも発表されている。R3コンソーシアムは、ゴールドマンサックスやシティ、バンクオブアメリカ、モルガンスタンレーなど40以上の金融機関が参画し、銀行間取引へのブロックチェーン適用など、次世代の金融テクノロジー開発と標準化に取り組む団体だ。

 また国内においては、同日発表された業界団体「ブロックチェーン推進協会」に日本マイクロソフトとして参画したほか、みずほフィナンシャルグループなどが実施する国内におけるブロックチェーン実証実験にも参加している。

 3つめの取り組みである「ブロックチェーンエコシステムの構築」について、大谷氏は、マイクロソフトの考えるエコシステムの構成を示しながら、国内では特にフィンテックスタートアップの支援やSIベンダー/コンサルタントへの協力強化が重要だと語った。

 「フィンテックベンチャーが開発したサービスを、そのまま金融業に届けられるわけではない。なぜなら、日本の金融業はITをほとんどSIerにアウトソースしているからだ。したがって、その間を取り持つのはSIerやコンサルタントになる。日本のフィンテック、ブロックチェーンエコシステムは、SIer抜きには成立しないのではないか、という仮説を持っている」(大谷氏)

マイクロソフトの考えるブロックチェーンエコシステム

 そのために、マイクロソフトではスタートアップ支援プログラム「Microsoft BizSpark」の提供や、前述のブロックチェーン推進協会への参加などを行っていると、大谷氏は説明した。さらに、今夏をめどとして、大規模なブロックチェーン関連イベント「Smart Contract Conference」を開催する計画も明らかにした。「世界最大級、最低でも日本最大級の、世界でも類を見ないブロックチェーンイベントにしていきたい」(大谷氏)。

■関連サイト

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード